先週末、上野の森美術館の『五大浮世絵師展』を目指して上野に行ったら、開館前からものすごい行列だったので、予定を変更して東博に足を向けた。
■東京国立博物館・東洋館8室(中国の絵画) 橋本コレクション受贈記念『明代文人文化の華やぎ』(2025年6月3日~7月13日)
橋本コレクションは、橋本末吉氏(1902-1991)の蒐集した中国書画コレクションである。東博は、2023年にも同コレクションから明代絵画の優品15件の寄贈を受け、翌年『明時代の宮廷画家と浙派』(2024年7月17日~8月18日)の展示をおこなっているが、2024年、再び明代絵画38件の寄贈を受けたことを記念し、寄贈作品を中心に、明代の文人文化の魅力を紹介する。
小品あり大作あり、どれも楽しいのだが、これは見上げるような巨幅。いつものピクチャーレールの上に別誂えのレールを垂らして吊ってあった。さすが東博の中国絵画展示室の展示ケースはデカい。謝時臣『崋山仙掌図軸』という作品で、陝西省の崋山には、黄河の巨大な精霊が山を押しのけた時の跡が残るという伝説を描く。
李士達『騎驢尋梅図』。ロバに乗っているのは詩人の孟浩然。中国の扇面図は、金箋のほのかな明るさを使うのが巧い。よく見ると淡彩を用いているのだな。
■東洋館8室(中国の書跡) 『市河米庵コレクション』(2025年5月13日~7月6日)。
併設の書跡は市河米庵コレクション。米庵(1779-1858)は、唐様に優れ、五千余人の門人を擁し、財力を背景に(本業は何なんだ?)長崎経由で舶載された金石書画の収集に努めた。その大半は没後に散逸するも、明治以降に子孫が再収集し、帝室博物館に一部が寄贈されて今日に至るというのは面白いなあ。日本橋生まれで、柴野栗山(今年の大河ドラマに登場予定)に師事したらしい。
目を引いたのは『楷書紺紙金字妙沙経』で明神宗(万暦帝)が書写したと伝わる。確かに巻末に「当今皇帝 謹厳誠心書写金字」とある。米庵は、本作の書法が森厳として顔真卿・柳公権の法を備えると述べているそうだ。顔真卿の名前が挙がるのは分かる。私の好きな書風。
■本館8室(書画の展開-安土桃山~江戸)(2025年5月27日~7月6日)
なんだか江戸絵画らしからぬ風変りな画巻があると思ったら、谷文晁の『公余探勝図巻』だった。松平定信の相模・伊豆巡検に随行して描いたものとされる。この二人、単なる雇い主と雇われ画家の関係だったのか、もう少し知りたい。
■本館3室(仏教の美術-平安~室町)(2025年5月27日~7月6日)
山形・慈光明院蔵『聖徳太子像』が眼福だったので書き留めておきたい。2021年の聖徳太子1400年御遠忌にあわせた展覧会では『聖徳太子童形像・二童子像』のタイトルで出ていて、あやしく美しく、印象的だった作品である。