見もの・読みもの日記

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厨子甕と十王図/祈りの造形(日本民藝館)

2020-01-23 23:26:52 | 行ったもの(美術館・見仏)

日本民藝館 特別展『祈りの造形-沖縄の厨子甕を中心に』(2020年1月12日~3月22日)

 世界各地で作られた「祈りの造形」を紹介する特別展。その中心は沖縄の厨子甕(ジーシガーミ)、すなわち骨壺である。屋根をかぶせた家型のものを、何度か同館で見たことがあった。しかし特別展の主会場である2階の大展示室を覗いたときは驚いた。三方の壁沿いと部屋の中央と、色も形も多様な厨子甕が、ざっと数えたところ30件並んでいた。大展示室の外にも大小5件くらいの展示があったと思う。

 すごい!こんなに厨子甕を所蔵していたのか!と驚いたが、あとで読んだ展示図録(今回は珍しく作られている)によれば、2018年12月に長澤正義氏から寄贈を受けた25基(こう数えるのか)の厨子甕が中心になっているという。

 展示品のうち、最も多いのは家のかたちで、御殿(うどぅん)型と呼ぶそうだ。多くは正面に扉または窓を持ち、その両側に僧形の人物(地蔵?)や蓮の花を表す。屋根のかたちは寄棟、入母屋、二階立などさまざま。いろいろな装飾を貼り付け、華やかなものもあれば、簡素で素朴なものもある。素材も多様で、白っぽいサンゴ石灰岩(素朴な彩色が映える)、干したヘチマのような凝灰岩、陶製で褐釉を掛けたものなどがある。少数だが、甕型のものもあった。

 展示室の壁には拓本が多く掛けられていた。正面には、白っぽい厨子甕3基の間に『開通褒斜道刻石(かいつうほうやどうこくせき)』。左右をかわるがわる眺めて悦ぶ。沖縄の橋(たぶん石橋)の拓本も珍しくて面白かった。確か「世持橋欄干」と「観蓮橋勾欄」。お客さんに質問された係員の方が「今はもうない橋だそうです」と答えていた。

 なお展示図録『祈りの造形 日本民藝館所蔵・厨子甕』はとてもよい。色や文様がはっきり分かる解像度である。必ず全点を前後側面から写す、みたいな網羅性・資料性はないのだが、光のあて方、角度など「最も美しく見える構図」が選ばれていると思う。時々、拓本や掛け軸と取り合わせて床の間に置いたり、民藝館の庭で撮った写真もある。眺めていると不思議と心温まる写真集。こんな骨壺なら、ずっとそばに置いていても悲しくない。自分もこんな愛らしい器に収まることができたら幸せだろうと思った。杉野孝典さん撮影。

 併設展も「祈り」と「沖縄」に関するものが多かった。北斉の『水牛山般若経』は「舎利弗汝問云」で始まる、縦九文字・横6行の大きな拓本。展示図録には、素朴な石灰岩の厨子甕と取り合わせた写真が載っている。筆画が全て太くて丸っこくて、動きの少ない文字に癒される。木喰仏、円空仏、多数の絵馬、ペルーの土偶やニューメキシコの聖女像もあった。紙や紐を用いた神酒口・注連縄の特集も興味深く見たが、保管が大変だろうなあと思った。

 2階をひととおり見終わって、1階に下りる途中の踊り場で、ふっと目の端に気になるものが入った気がした。気になって顔を上げると、2階の左側の通路、階段を見下ろす位置の壁に小さな八曲屏風らしきものが掛けてある。なんと!昨年『日本の素朴絵』展で観客を魅了した(と私が思っている)ゆるさの極みの『十王図屏風』ではないか!慌てて2階に戻る。日本民藝館を知っている人なら分かると思うが、展示室3→4を通り抜けると、この狭い通路は見逃してしまうのである。よかった~気がついて。

 今回『十王図』は、いわゆる露出展示で壁に直接掛けてあるので、ぎりぎりまで近寄ってじっくり見ることができる。楽しくてうれしい。これ、見つけたときの喜びを倍増するため、わざと分かりにくいところで展示しているのかしら?と勘ぐってみる。

 1階は沖縄関連が多く、首里城復興に向けた募金箱がさりげなく置かれていた。「屋根獅子(シイサア)」という振り仮名つきの説明板があったが、柄の長い匙のような形をした「ジーファー」が何だか分からなかった。しばらく考えて、かんざしだと気づいた。


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