見もの・読みもの日記

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深川古石場で無声映画観賞会

2023-03-01 21:45:01 | 行ったもの2(講演・公演)

江東区古石場文化センター 第775回無声映画観賞会「ふるさと深川で楽しむ小津安二郎の世界」(2023年2月26日)

 日曜の午後、近所の文化センターの催しで、弁士つきの無声映画というものを見てきた。上映作品は2本で、はじめの『子宝騒動』(昭和10/1935年)は喜劇というより、アメリカ風のスラップスティックコメディと呼んだほうがぴったりくる。貧乏子だくさんの福田さんは、産気づいた奥さんのために産婆さんを呼ぼうと奮闘する。無声映画だから可能なナンセンスギャグの連発は、現代の目にも新鮮で面白かった。監督は「喜劇の王様」と呼ばれた斎藤寅次郎だが、無声喜劇のほとんどが散逸しており、現存するのは本作を含む数作品だけだという。

 次の『出来ごころ』(昭和8/1933年)は小津安二郎監督。東京下町の日雇い労働者で男やもめの喜八は息子の富夫と暮らしており、なじみのめし屋のおかみさん、ふらりと現れた若い娘の春江、喜八の隣人の次郎などが登場する。コメディ要素もあるけれど、全体としては、しっとりした人情ドラマの趣き。私は映画の歴史はよく知らないのだが、1930年代前半には、すでに小津安二郎は批評家から高い評価を受けており、本作はキネマ旬報ベストテンの1位にも選ばれているそうだ。

 1930年代といえば、産業化が急速に進み、洋風のライフスタイルが一般化した時代というイメージだったが、映画の中のように、シャツにステテコの長屋暮らしが庶民の多数派だったのかな。工場に仕事に行くときはシャツにズボンだが、ここぞという時は着物に羽織、という描写も面白かった。あと、金策のために喜八が選んだのが「北海道くんだり」まで行って蟹工船に乗ることというのも時代である。

 この無声映画観賞会は、無声映画専門の「マツダ映画社」が、シリーズで各地で開催しているものらしい。同社のページに弁士や伴奏音楽演奏者の紹介も掲載されている。私は人形浄瑠璃とか落語とか朗読とか、ひとりが複数の人格を語り分ける、語りもの文芸が全般的に好きなので、また機会があったら見てみたいと思った。

 鑑賞会のあとは、誘ってくれた友人と「華蔵」で軽く呑み。春らしいおつまみの3点セットが美味しい。

春はもうすぐそこ。


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