見もの・読みもの日記

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鎌倉・宝物風入れ2014(円覚寺、建長寺)のうち、円覚寺

2014-11-04 23:19:04 | 行ったもの(美術館・見仏)
 三連休の中日(11/2)からレポート。関東地方は雨になると聞いていたのに、朝起きると青空だったので、久しぶりの鎌倉に行ってみることに決めた。円覚寺、建長寺で行なわれる「宝物風入れ(曝涼)」には、2008年と2011年にも出かけているが、いろいろ変化が感じられた。

臨済宗・円覚寺派本山 円覚寺(鎌倉市山ノ内)

 図は2011年の風入れレポートでも使用したもの。第1展示場(大方丈)、第2展示場(大書院)、第3展示場(小書院)という構成は今年も変わっていない。しかし第1展示場1室に入ってみると、官符とか寄進状とか文書(もんじょ)類の軸がやたらと多い。あれ?以前は文書類は大書院での展示が主で、こっちは絵画が中心じゃなかったかな?と記憶に違和感を感ずる。受付で貰った「風入宝物目録」を確認すると、第1展示場1室は「伝張思恭筆 五百羅漢図 絹本着色33幅」から始まっている。うむむ?と思ったら、以下のような紙が挟まっていた。「お詫び 本年の『宝物風入れ』展は準備の都合で、パンフレット上と実物に若干の変更がございます。○大書院展示の軸物(4~41)が大方丈へ ○書院展大示(ママ)ガラスケースの一部が大方丈廊下へ ○阿弥陀如来及両脇侍立像が小書院床の間へ それぞれ移動しております。何卒御海容を賜りますようお願いとお詫びを申し上げます。平成甲午 霜月 瑞鹿山円覚寺」。なるほど、了解。

 1室。左右には、円覚寺開創にかかわる(と思われる)文書の軸が掛けられ、足元の低い台に高氏(尊氏)開版の『足利版大般若経』が木箱とともに並ぶ。正面中央には鎌倉時代の涅槃図。このポジションは以前と同じだ。象、獅子(身体が青い)、ラクダ、トラ、ヒョウ(雌虎のつもり?)、イノシシ、顔の赤いニホンザル、頭上に長い一角を生やした動物はサイ?など、動物の種類が多くて見飽きない。

 2室。ここも文書が多い。足利義満や後醍醐天皇の名前が見えるのは、1室より少し下った時代の文書を集めているのか。正面の中央には、岸駒筆『虎』『開山(無学祖元)像』『龍』3幅対。開山像には2羽のハトが描き込まれていて、無学祖元が在宋のとき、夢に現れたことがあり、鎌倉に来てハトに縁があることを喜んだそうだ。3幅対の左右に羅漢図が1幅ずつ掛けてあって、説明札がなかったけど、伝張思恭筆『五百羅漢図』の一部らしかった。向かって右の羅漢図には、白い大蛇の口の中に座っている羅漢がいた。

 3室。向かって右の壁から伝張思恭筆『五百羅漢図』の列が始まり、正面中央の『被帽地蔵菩薩像』を挟んで、左側へ続く。11幅。2室にあった2幅を加えても13幅なので、今年は全部出していないみたい。続きに「伝兆殿司筆『五百羅漢図』16幅の内」という1幅(神農みたいなヒトがいる)があって、また文書の軸物がある。室の中央の広い台上には、九条袈裟。

 ほか、2室には開山箪笥とその中身。廊下には古地図、牧谿の水月観音、栄川院典信の釈迦三尊像などがあった。順路に従って廊下を(庭園方向に)回り込むと、兆殿司の『五百羅漢図』が続く。「浴室」に行く図があったり、龍の耳かき、石橋図があったり、楽しい。喫茶の図では、羅漢たちが赤い天目台に載せた黒い天目茶碗でお茶を飲んでいる。侍童が細長い口のついた浄瓶からお湯をそそぎ、その場で茶筅で掻き混ぜている。京都・建仁寺に今も伝わるという茶礼などを思い出しながら、興味深く観察。4室には、伝兆殿司筆『十六羅漢図』16幅(1人1幅、着色)やそれ以外の羅漢図。方丈と小書院の間の廊下にも五山版の書や青磁香炉などの工芸品を入れた展示ケースが置かれている。

 第2展示場(大書院)に入って、あれ?と思う。ここは3室ぶち抜きの文書の山だったはずだが、今年は手前の1室しか使用していない。そのかわり、◎印のところに若い僧侶が座っていて「庭園を見ながらお抹茶とお菓子はいかがですか~」と、ひそやかに呼び込みをしている。どうやら後方の2部屋はお茶席になっているらしい。へえ~新機軸だな。お抹茶はいただかなくてもいいかなあ、と思いかけたが、ちらっと覗くと、華やかな金屏風のようなものが立ててある。お茶席に入ると、特別に見せていただける寺宝があるらしい、と分かって、心が動いた。

 とりあえず第3展示場(小書院)を先に見てしまう。5室は新しめ。6室に応挙の虎図、雲谷等与の烏鷺叭々図、(伝)雪舟の墨画、そして善光寺式の阿弥陀如来及両脇侍立像などがあった。第2会場(大書院)に戻って、足利義満の額草3幅「桂昌」「宿龍」「普現」を眺める。それぞれ、円覚寺の祖師堂、客殿、土地堂の額草だという。何歳頃の字だろう? 巧いとは思わないが、嫌いじゃない。かっちりと生真面目で、少し気弱そうに感じる。

 さて「抹茶券」(1,000円)を購入して、大書院の奥に進み、緋毛氈に落ち着く。正面には庭園。まだ紅葉には少し早い。「まあ素晴らしいわ~」と一緒に入った中年女性が感嘆の声を上げる。私がむしろびっくりしたのは、床の間に飾られた宝物。ええと、夢窓国師像(重文)、開山仏光国師像(=無学祖元像)(重文)、仏鑑禅師像(=無準師範像)だったと思う。このとびきりの3幅、実はこの茶席に入ってこないと見ることができない。

 少し年長のお坊さんが「どうぞ足を崩して楽になさってください。写真もお撮りいただいて結構ですよ」とおっしゃるので、「庭だけですよね?」と確認したら、「いやもう、ここにお入りになったら、そちらの宝物も大丈夫です」と太っ腹なことをおっしゃる。いいんですか? おそるおそる写してきた風景がこんな感じ。全部本物です。



 やがて、若い僧侶(美坊主と言いたいけど自粛)が、墨染の袖を翻しながら、お菓子とお抹茶を同時に左右の手に捧げ持って、運んでくる。天目台に天目茶碗(ちょっと底が丸かった)である。



 この「宝物風入れ」は、若いお坊さんの姿がたくさん見られて、お寺の文化祭っぽいところがとても好き。



 羅漢図で見たとおり、カップ&ソーサー式に天目台を持って、お茶をいただく。宋人か、もしくは鎌倉人か室町人になった気分が味わえて嬉しい。



 長くなってしまったので、建長寺編は、また改めて。

 円覚寺では、国宝舎利殿を拝観したら「参拝記念」のステッカーがいただけた。舎利殿を背景にネコの顔が描かれたイラスト。もしかして、円覚寺のにゃんこ(私は方丈玄関で見た)は有名人なのかな?

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