見もの・読みもの日記

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美人の変遷/勝川春章と肉筆美人画(出光美術館)

2016-03-23 22:42:10 | 行ったもの(美術館・見仏)
出光美術館 生誕290年記念『勝川春章と肉筆美人画-〈みやび〉の女性像』(2016年2月20日~3月27日)

 いろいろなジャンルの絵画を好きになってきたけれど、浮世絵、特に美人画に対しては、今ひとつ熱心になれない。この展覧会もスルーしてもいいと思っていたのだが、版画よりは肉筆のほうが見どころがあるのではないかと思い、行ってみた。

 勝川春章(かつかわしゅんしょう、1726?-1793)は江戸時代中期を代表する浮世絵師だそうだ。本展では、春章の登場に先立って、桃山時代から江戸時代にかけて流行した近世初期風俗画、菱川師宣(?-1694)や宮川長春(1682-1752)の画業が示される。ああ、私はこの時代の肉筆美人画は好きなのだ。寛文年間(1661-72)の前後、無地の背景に女性の立ち姿を描いた、いわゆる「寛文美人図」。黒い着物に白い打掛を羽織った『立姿美人図』や白い着物に黒い打掛の『花持美人図』はその類型に入るのかな(どちらも17世紀中期)。髪は結っているが、襟足に大きく膨らんだ髪が垂れている。

 菱川師宣の『秋草美人図』(17世紀後期)や宮川長春『立姿美人図』(18世紀前期)になると、着物の柄の好みが変わってくる。でも女性のふっくらと健康的な頬、あまり釣りあがらない穏やかな目元は、まだ寛文美人図の伝統を引き継いでいて、私の好みだ。

 上方の絵師、月岡雪鼎や西川祐信を経て、春章の登場。18世紀後半になると、女性は左右に大きく張り出した髷を結うようになるのかな。しかも簪や幅広の櫛を髷の上に載せて、さらに左右への張り出しを強調する。この髪形、実は一種の中国趣味なんじゃないかと思った。目元が釣り上がり、面長が主流になるのもこの頃からか。私はどうもこの浮世絵美人顔は苦手である。だが、肉筆浮世絵の着物の色柄は非常に繊細・優美で、見ていて飽きなかった。

 『芸妓と嫖客図』など、遊里の男女を描いた色っぽい図もあったが「それ以上」の作品はなし。気になって「勝川春章」「春画」を検索したら、たくさん画像がヒットした。版画も肉筆もあるようだった。

 そして、春章が世を去ったあとに登場するのが喜多川歌麿や鳥文斎栄之。栄之の描く女性は、春章と同系統で、さらに面長で長身。歌麿の『更衣美人図』は、足元に着物を脱ぎ捨てたまま、次の黒っぽい着物に着替え中の女性を描いたもので、これについて「圧倒的な存在感をもって迫りくる歌麿の美人は、ある意味では夢想的な勝章の美人画とは対極にあり」「揺り戻しといえるかもしれない」という批評が興味深かった。なお、肉筆浮世絵の表具は、水墨画や禅画とはまた違う趣きがあって面白かったが、図録に収録されていないのは残念である。

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