見もの・読みもの日記

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鎌倉・宝物風入れ2018(円覚寺、建長寺)のうち、円覚寺

2018-11-04 22:55:41 | 行ったもの(美術館・見仏)
臨済宗・円覚寺派本山 円覚寺(鎌倉市山ノ内)

 久しぶりに鎌倉の宝物風入れ(曝涼)に行ってきた。東京を出るときは曇りだったのに、北鎌倉に着いたときは細かい雨が落ちていた。風入れには不向きな天気だが、確か以前も雨だったことがあるなあと思いながら円覚寺に向かう。山門で入山料300円を払い、風入拝観料500円を払う。受付にカラー写真を表紙にした「風入宝物目録」という立派な冊子が置かれていたので、思わず「それもください」と言ったら、若いお坊さまがにっこりして「これは拝観の方に差し上げています」とおっしゃった。おお、そうなのか。むかしは白黒印刷で文字だけの目録だったのに。

 私は、前回2014年前々回2011年のレポートには、左のような手描きの平面図を添えて、どの部屋で何を見たか、記憶の手がかりとしていたが、もうその心配はなくなった。新しい目録の展示案内図では、どの資料がどの部屋のどの位置にあるか、一目で分かるようになった。そうそう、欲しかったのはこれ!

 

 2014年の記録を参照しながら、変更点などを記録していく。第1会場(方丈)1室は以前と同じ文書類が中心。先週、歴博の展示『日本の中世文書』を見てきたので、「関東御教書」とか「関東下知状」という言葉にいつになく反応してしまう。無学祖元の書状に「国家(コクケ)」という文字があり、後宇多天皇を指す、という解説に感じ入る。高氏(尊氏)開版の『足利版大般若経』及び木箱、鎌倉時代の涅槃図も前回と同じ。

 2室。正面中央には岸駒筆『龍虎図』と『開山仏光国師(無学祖元)像』(ハトがいるやつ)3幅対も同じ。周りには『五百羅漢図』50幅のうち8幅ほど。私の好きな浴室にいく図もあり。なお、4幅は原品とデジタル複製品が並べてあった。工芸品は、ところどころに出ていて、堆朱と堆黒の合子2件が美しかった。

 3室。正面中央には高麗の『被帽地蔵菩薩像』。その両隣を『円覚寺境内絵図』と『尾張国富田庄図』という絵図が占めているのが面白かった。1、2室の展示品は、目のつく位置にプラスチックの番号札と簡単な解説を記した紙が添えられていたのだが、このへんから何もないものがあって、ちょっと戸惑う。実は、展示品の番号は、軸を吊るしている釘(天井近く)の横に必ず付いているので、これを確認して目録を参照すればいいのである。綸旨らしいものがあると思ったら、後醍醐天皇の綸旨だった。尊氏、基氏、持氏など足利家ゆかりの文書多し。

 廊下に出る。狩野栄川院典信などの江戸絵画、『五百羅漢図』の続き(50幅のはずだが全部は出ていないのではないかと思う)、角を曲がると『十王図』、墨画の『十六羅漢図』、それに長大な『洪鐘祭行列絵巻』が広げてある。4室は絹本着色の羅漢図各種。明兆筆『十六羅漢図』は、鎌倉国宝館でよく見たもので、生彩に富み、童子や動物の表情がかわいい。方丈と小書院の間の廊下には五山版など。前回とだいたい一致。

 さて、2014年は大書院(第2会場)の2部屋がお茶席になっていて「抹茶券」を購入しないと入れなかった。今年も入口にお坊さんがいたのだが、何も言われないので、あれ?いいのかな?と思って進んでいくと、一番奥(3室)は普通に展示室になっていた。『夢窓疎石像』『無学祖元像』『無準師範像』に加え、絹本著色の美麗な『虚空菩薩像』、善光寺式の『銅造阿弥陀如来及び両脇侍像』など、円覚寺寺宝の優品が勢ぞろいするプレミアム・ルームである。私は仏光国師(無学祖元)の『遺偈』が何気に好き。手前の1室は文書、墨蹟。足利義満の額草3幅、持氏の額草2幅もあり。

 小書院(第3会場)は絵画の小品、絵図等。かつて境内にあった塔の姿を伝える『華厳塔図』2種が面白かった。これでひとまわりなので、出口に向かうお客さんが多いが、よく見ると反対方向に「第4会場」の案内がある。棟続きの信徒会館の2階が第4会場だ。そしてここに『円覚寺弁天堂洪鐘祭行列図』(天保11/1840年)の板絵4面があった。先日、神奈川県立歴史博物館の『鎌倉ゆかりの芸能と儀礼』展で写真を見たものだ。写真以上に色鮮やかで可愛い。でも不思議なことに、私はこれまで3回風入れに来ているのに、この資料の記憶が全くない。これだけでなく、松平不昧の「慎独」大字幅にも覚えがなかった。近年、宝物に追加されたものなのではないか。

 「風入宝物目録」によれば、第4展示場では、毎年特別展の催行を予定しているとのことで楽しみである。今年は、明治時代に円覚寺管長をつとめた釈宗演(1860-1919)を紹介していて興味深かった。今年2018年が百年遠諱に当たるそうだ。なお、この無料配布の「目録」だが、不要な場合はさりげなく返本できるコーナーが設けられていたのもいい試みだと思う。

 続きの建長寺は別稿で。

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