見もの・読みもの日記

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2019岡山ミニ旅行:大原美術館

2019-06-23 23:41:31 | 行ったもの(美術館・見仏)

大原美術館(倉敷市)

 よく晴れた土曜日、朝から大原美術館を参観した。イオニア式の円柱が並ぶ堂々とした本館に入ると、はじめに出会うのが『和服を着たベルギーの少女』。紫地に赤や黒の細かい模様を散らした華やかな振袖、細面の少女の、ほんのり上気した白い肌が印象的だ。背後の棚にも日本人形や日本の茶碗らしきものが飾られている。19世紀ヨーロッパのジャポニズム?と思ったら、作者は児島虎次郎(1881-1929)という日本人だった。

 最初の展示室は、ゴーギャン、ロートレック、モディリアーニ、ルノワールなど、日本人になじみの深い泰西名画が中心。そして、どの作品も一度は画集で見たことがある。私は、1970-80年代に「新潮美術文庫」など、廉価でコンパクトな美術全集を手元に集めて西洋絵画に親しんだ。そのとき、やっぱり日本国内の美術館が所蔵している作品は、掲載しやすかったのではないかと思う。あれもこれも、飽きずに眺めた記憶があって懐かしかった。

 『和服を着たベルギーの少女』の裏側に「この1点」という特集コーナーがあって、絵本のような愛らしい赤レンガの西洋建築が描かれていた。背景が何もないので、砂漠にあらわれた蜃気楼のようでもある。小野元衛(1919-1947)の『市役所』という作品だった。作品の裏面に人の顔のようなスケッチがあり、解説によれば、柳宗悦が画家に贈った木喰観音であるそうだ。全く知らない画家だったが、調べたら、いくつかの作品をネット上で見ることできた。建造物を描いた作品に独特の個性があってとてもよい。2012年に神奈川県立近代美術館鎌倉別館で回顧展が開かれていた。

 開館(1930年)当時の洋館である本館の背後には、景観の邪魔にならないよう、さりげなく新展示棟が付随しており、エル・グレコの『受胎告知』はこちらでゆっくり鑑賞できる。やっぱり一番人気なのかな。さきほどの児島虎次郎の特設コーナーも楽しかった。丁寧な解説を読んで、大原美術館にとっては特別な画家であることを知った。展示作品は、ほぼ全て女性像で、働く日本女性を描いた『里の水車』、美と生命の賛歌のような三枚組の『朝顔』、南欧の夜の舞台を思わせるエキゾチックな『祭りの夜』、白一色のチマチョゴリの『朝鮮の女たち』(意志の強そうな眉)、どれもよかった。ステキだ!

 なお、かつて倉敷アイビースクエア内にあった児島虎次郎記念館は閉館してしまったが、2020年に新美術館をリノベーションオープンの予定だそうである。児島が蒐集したアジア関係の美術品もあわせて展示されるそうだ。リノベ予定地の中国銀行旧倉敷本町出張所というのは、バナーの写真を見たら、昨日、気になってステンドグラスの写真を撮った建物だった。

 続いて工芸館・東洋館へ。白壁土蔵造りの建物(ときどき二階建て)を数珠繋ぎに渡り歩くような展示施設で、天井の太い梁、床に敷きつめたやきものタイル(塼)なども見どころである。「民藝」の濱田庄司、バーナード・リーチ、富本憲吉、河井寛次郎、棟方志功、芹沢介の充実したコレクションが展示されている。え、大原美術館にこんなコレクションがあるなんて、全く知らなかった。棟方志功の作品は必ずしも好きじゃないのだが、ここで見た『門舞神板画柵』10図は気に入った。

 東洋館には、響堂山、龍門、雲崗、天龍山などの石窟に由来する石仏(の頭部)など。北魏の一光三尊形式の大きな石仏が見事だった。面長、細みの体で、中尊の衣が左へなびくような造形だった。あと全身白玉の仏像が複数あり、甲骨文資料や遼三彩など、バラエティに富んだ展示だった。

 最後に分館は日本の近代絵画が主。この作品、ここにあったのかと驚く。特に熊谷守一の『陽の死んだ日』には不意打ちをくらった。それから関根正二『信仰の悲しみ』、小出楢重『Nの家族』。古賀春江の『深海の情景』は、古賀春江らしくてよかった。なぜか江戸時代の画家・長沢芦雪の『群龍図』があったことも書きとめておく。


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