〇日比谷図書文化館 特別展『紀伊国屋三谷家コレクション 浮世絵をうる・つくる・みる』(2021年7月17日~9月19日)
現在、週2出勤+週3在宅の生活を継続中である。7-8月の在宅勤務日は、暑さに耐えきれなくて、公共図書館に逃げ込むことが多かった。パソコンとインターネットさえあれば、大概のことはできる仕事なので。
私は3月まで図書館関係の仕事をしていたのだが、私事で図書館を利用することはほとんどなかった。この日比谷図書文化館を利用したのも、何十年ぶりかだと思う(むかしの日比谷図書館の記憶しかない)。1階の展示室で特別展(有料:一般300円)が開催されていたので、そのうち見ようと思っていたら、9月になってしまった。
本展では、千代田区指定文化財である紀伊国屋三谷家(みたにけ)コレクションの浮世絵150点余り(展示替え有)を展示する。紀伊国屋三谷家は、万治3(1660)年の創業以来、神田塗師町で金物問屋を営み、江戸時代後期の8代目当主・長三郎(1819-1886)の時代に、浮世絵師たちのパトロンとなってその制作に関与した。私は全然知らなかったが、政財界では、同名の10代目・三谷長三郎が有名で、神田区の学校教育のために財を投じて多大な貢献をしたことを顕彰して、神田明神近くに胸像が立っているらしい。
展示では、冒頭に江戸の絵草紙屋(屋号は日比屋)が復元されていて楽しい。同様の復元は、江戸東京博物館や佐倉の歴博にもあるが、いつどこで見てもテンションが上がる。
店頭に並んでいる浮世絵は、デジタル画像を印刷したものだと思うが、紙の質感がそれっぽいので、本物?と疑ってしまう。全て三谷家コレクションの複製らしく、あとで現物の展示で同じ作品を見つけた。
展示作品は、三代歌川豊国、歌川国芳が目立って多かった。あとは歌川広重(五十三次名所図会)と月岡芳年など。どれも摺りと保存状態が抜群によく、むかしどこかで見た記憶のある作品も、別物のように「映え」る。
あと、数は少ないが、版下絵がいくつか出ており、絵師の描画力を直接味わうことができるのも貴重。これは国芳の『忠孝復讐図会』。巧いなあ。彫師への指示メモがついているのも面白い。
題名の囲み枠に添えられた、西洋風の天使も気になる!
無料でなく、観覧料300円という設定もよいと思う。見に来ていたお客さんはそれなりに熱心だったし、この価格なら前後期行っても負担にならない。地域の文化財を活かした展示を、またお願いしたいと思う。なお、三谷家コレクションは、正確には「三谷家美術資料」という名称で「神田地域の商家の文化活動を伝える貴重な資料群」として指定されており、浮世絵以外の絵画資料や工芸資料も含むようである。
※参考:千代田区立日比谷図書文化館(文化財事務室)収蔵資料データベース:三谷家美術資料
ついでに常設展示『江戸・東京の成立と展開』(無料)も覗いてきた。最近、先史時代に関心が向いているので、縄文時代の東京の地形図を興味深く眺めた。
※参考:縄文時代の江戸