見もの・読みもの日記

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知られざる琉球絵画と染織・漆器/琉球(サントリー美術館)

2018-08-01 22:35:26 | 行ったもの(美術館・見仏)
サントリー美術館 『琉球 美の宝庫』(2018年7月18日~9月2日)

 多くの島々からなる沖縄は、かつて琉球と呼ばれる海上王国だった。本展は、鮮やかな紅型に代表される染織や、中国・日本から刺激を受けて描かれた琉球絵画、螺鈿・沈金・箔絵などの技法を使ったきらびやかな漆芸作品を中心に琉球王国の美を紹介する。

 はじめに琉球の染織。沖縄らしい、色鮮やかな紅型(びんがた)の着物が多数並ぶ。そうだ、以前もこのサントリー美術館で紅型の展覧会を見たことがあった、と思い出す。2012年の『紅型 BINGATA』展のことだ。それ以外にも、私は主に日本民藝館の展示で、定期的に紅型の着物を見ていると思うのだが、「民藝」テイストのコレクション(これはこれで好き)と違って、本展には、洗練された「モード」を感じる紅型が集められているように思った。『黄色地垣根に牡丹鳳凰模様衣裳』(大和文華館)は、裾と腰の位置に水平に入る白黒の竹垣模様がおしゃれ。『白地流水蛇籠に桜葵菖蒲小鳥模様衣裳』(沖縄県立博物館・美術館)の色絵の繊細なこと。図録を見ると、後期にすごく大胆な染め分け模様の着物が出るようで、これも見たい。かわいい絣やシックな縞も好きだ。

 次に琉球の絵画。開催趣旨に「近年の東京でまとまって公開されることがなかった琉球絵画は見所のひとつ」とうたわれているが、確かにこんなに多数の琉球絵画を見るのは初めてのことだ。琉球絵画(近世琉球期)は和漢の諸作品から刺激を受けながら独自の発展を遂げており、特に中国・福州画壇と強いつながりがあるという。伝・城間清豊の『李白観瀑図』は、よくある題材を描いて違和感のない水墨画だった。座間味庸昌の『雪中雉子之図』は呂紀ふうの花鳥画を模写したもの。そうした、絵画史に位置づけやすい作品とは別に、朗世寧を思わせる馬の図、顔だけが妙に緻密で写実的な正面向きの肖像画(同時代の中国絵画にたまにある)、浮世絵の一種ともいうべき琉球美人図や仲睦まじい男女の図、さらに那覇の港と首里の風景をパノラマ的に描いた屏風が複数あり、比較するのも楽しかった。

 階段下のホールでは琉球国王尚家ゆかりの美術品を特集。おや、『玉冠(付簪)』がある! 本物は8/22以降の最終節のみ展示だが、他の期間は復元品が展示されているのだ。本物も18-19世紀の品で、写真で見るとあまり古色がついていないので、復元品とそんなに差がないように思う。冠の頭部には、12筋の金の帯(金の小板を張り付けたようだが、よく見ると金糸を縫い付けたもの)が通っていることを数えて確認。金の筋に沿って、金、銀、珊瑚、瑪瑙、水晶などの珠が並んでいる。法則性があるような、ないような、美しい散らばり方。

 ほかにも尚家伝来の衣裳や漆器など。『漆巴紋牡丹沈金馬上盃』は、蓋つきのどんぶりみたいな大盃で。え、馬上盃?と思ってよく見たら、盃の脚(持ち手)が、四足の台の穴に納まっていた。野球のボールを串に突き刺したような、巨大な『聞得大君御殿雲龍黄金簪(きこえおおぎみウドゥンうんりゅうおうごんかんざし)』! 見た目と異なり、頭(カブ)より柄(ソー)のほうが重いそうだ。聞得大君といえば、2011年のNHKドラマ『テンペスト』にハマったことを思い出す。なつかしい~。ノロの祭祀に用いる『神扇』も、色の剥がれ具合と汚れ具合が、実際に使われた記憶を感じさせた。

 続いて琉球の漆芸。朱漆の沈金や密陀絵は、南国風というか異国風で目を引くが、やっぱり黒漆の螺鈿がよい。照明を絞っているので、適当に姿勢を変えて、視点を動かして見ると、思わぬところがキラリと光る。青やピンクの貝殻が贅沢に使われていて、華やか。漆器は「浦添市美術館所蔵」のものが多かった。興味を持って、ホームページを覗いてみたら「日本初の漆芸専門美術館・沖縄初の公立美術館」なのだそうだ。行ってみたい!

 最後に、染織家であり沖縄文化研究者である鎌倉芳太郎(1898-1983)が残した調査のーとや沖縄の古写真が展示されていた。戦前の首里城正殿! 私は現在の復元首里城しか知らないが、壁は質素な板木(何も塗られていない)のように見える。正面の唐破風の上には龍の首。円覚寺の釈迦三尊像と須弥壇後壁の金剛会図(青海波?の上に諸仏と諸天が集う)も興味深く眺めた。沖縄、また行ってみたいなあ。今年の冬あたり考えよう。
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