見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

東大で貴重書を見る/史料展覧会(史料編纂所)ほか

2010-11-16 23:38:29 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京大学史料編纂所 第35回 史料展覧会(2010年11月12~13日)

 『大日本史料』等の編纂刊行で知られる同研究所が、秋の週末に行う史料展覧会。前回、参観したのは…と自分のブログを検索したら2005年、これが第34回である。ということは、4年間、私が行き逃していたのではなくて、開催されていなかったのか。貰ったパンフレットを開いたら「史料編纂所は、書庫を含む別館の耐震補強工事を経験し、その間、史料原本も、九州国立博物館にお預かりいただきました。史料原本の復帰を機に、五年ぶりに史料展覧会を開催する運びとなりました」とある。それは良かった。

 展示史料は30数点ほど。小規模だが、古代から近代まで、どの時代に興味がある歴史マニアでも納得のいく内容となっている。最も古い9世紀の『近江国愛智庄立券文』に始まり、中世は足利尊氏の書状、戦国時代は豊臣三奉行の連署状、幕末維新はペリーの自筆書簡、等々。『愚昧記』(自筆本)の紙背から発見された『広田社歌合』(道因法師が勧請)の写真パネルで、文学好きの関心も引きつけ、江戸の博物図譜や”ご存知”安政大地震の図で、いろどりを添えることも忘れない。

 『倭寇図巻』は、以前、どこで見たのだったか。2001年に東博で行われた史料編纂所100周年記念展(時を超えて語るもの)かなあ。倭寇を描いた唯一の絵画史料として知られてきたが、最近、中国国家博物館にも『抗倭図巻』という同種の図巻があることが発見された。今回の展覧会では、2つの絵巻の原寸大写真パネルを上下に並べて展示し、比較参照を楽しめるようになっていた。

 ネットで検索すると、浙江工商大学日本文化研究所長の王勇氏が、2003年に史料編纂所の『倭寇図巻』を閲覧し、今後、2つの絵巻の異動と関連を明らかにしたいと述べているので(→記事)、『抗倭図巻』の存在は、研究者の間では以前から知られていたのだろう。ただ、今年(2010年)6月、史料編纂所は『倭寇図巻』を赤外線で撮影し、白く塗りつぶされた船の旗の部分に「弘治四年」(1558年)の文字を発見。さらに10月、国家博物館所蔵の『抗倭図巻』も赤外線で撮影し、船の旗に「日本弘治三年」の文字を発見したことで(→毎日新聞 2010/10/25記事)俄然、注目を集めているようだ。私はむしろ、『倭寇図巻』の日本の海賊(?)たちが、色とりどりの肌襦袢を着ているのに対し、『抗倭図巻』では褌ひとつの丸裸なのが気になる。

 実は、一番おもしろかったのは、冒頭に「参考展示」されていた『歴史課日記』『修史局日記』等の近代史料。こういう史料をじっくり読んでみたいものだ。江戸城って明治6年(1873)に火災を出して、多くの文書を失っているのか。あまり認識していなかった。→かんがくかんかく(漢学感覚)(個人ブログ)に詳しい。長松幹による『秘閣中焼失図書目録』(この書物はどこにあるんだろう?)の抜粋を見ると、うわぁぁ、もったいない。

 同展のあと、総合図書館の貴重書展『原資料の保存と電子化による情報発信』(2010年10月29日~11月14日)にも立ち寄る。江戸期の版本が中心だった。
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