見もの・読みもの日記

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中原に歴史を追う/誕生!中国文明(東京国立博物館)

2010-07-20 22:01:39 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館 特別展『誕生!中国文明』(2010年7月6日~9月5日)

 始まってまもない同展、あまり盛り上がってないなーと思いながら行ってきた。何が目玉なのか、よく分からないのである。基本的に言うと、伝統中国の中心地域、いわゆる中原(ちゅうげん)、いまの行政区分では「河南省(かなんしょう)」の協力のもとに行なわれる展覧会のようだ。が、ということが、速やかに理解できる日本人は少ないだろう。たぶん「河南省」をどう説明するか?という企画会議の席で、中国最初の王朝である夏(か)、その次の王朝、商(しょう)=殷(いん)ゆかりの地なので「誕生!中国文明」でいいんじゃない?という話になったのではないか、と想像する。

 第1部「王朝の誕生」は、「夏」王朝から始まる。70年代後半、私が高校で習った世界史は「殷」が始まりで、教えてくれた先生は「私が学生のときは、周が最初の王朝で、殷は伝説だったのよ」とおっしゃっていたなあ、と感慨にふける。青銅器、玉器などの古代遺物が中心だが、西周時代(紀元前11~12世紀)の『灰釉豆』は、珠光青磁みたいな灰緑色の釉薬がかかったやきもので「原始青磁とも呼ばれる」に納得(1998年出土)。

 本展では、最新の出土品も多数公開されており、1997年出土の『九鼎八簋』は、巨大で精巧な青銅器のセット。横長の巨大な展示ケースに並んでいるが、出土したときの写真では、幅を取らないように積み重ねて(入れ子状態で)格納されていた様子が分かる。2002年出土の編鐘(全14件)も整然と美しく、若い中国人のお母さんが抱きかかえた赤ちゃんに「中国真励害!(ほんとにすごいね~)」と話しかけながら通り過ぎていったのが印象的だった。でも、無愛想な青銅器の美しさを最大限に引き出した照明&配置の美しさに関しては、日本の博物館の仕事ぶりも「励害!(すごい)」と称えたい。

 第2部「技の誕生」も、冒頭は紀元前の明器(副葬品)の楼閣模型などで、ゆったり古代的な雰囲気に浸って見ていたら、突然、白磁(磁州窯)の枕があらわれる。汝窯ふうの天青色の『青磁套盒』、鈞窯ふうの『澱青釉碗』など。あれっ?とキャプションを見直すと、いずれも北宋11~12世紀とある。いつの間にか、一気に1400~1500年をワープだ。確かに、河南省の魅力は、古代文明だけではないのだけど、この年代感覚、分かるのかなー。

 第3部「美の誕生」は、再び紀元前の青銅器世界に遡行。春秋時代(前6~5世紀)の『神獣』は、いろいろくっつき合っていて、諸星大二郎的な妖しさが満ち満ちている。「怪物の世紀」の香気フンプン。これに比べると、漢代(前1~後3世紀)は、すっかり「人間の世紀」に変貌を遂げた後という感じだ。中国文明って、ほんと成長が早いなあ。ここは、仏像あり、塑像あり、磁器あり、三彩ありでバラエティに富む。一番びっくりしたのは、”彩色”画像磚6点。凸状の文様に、木版画の版木のように色を載せる。クレパスみたいな単純な配色が、地蔵盆のお地蔵さんみたい。青龍が青くない(黄色い!)のも気になる。「彩色をよく留めた貴重な資料」ということは、南北朝時代(5~6世紀)の色なのか!? そもそも画像磚って、無彩色だと思っていた…。

 私は、河南省には何回くらい行っているだろう。中国の中心部なので、東西南北の各省を目的地とした旅でも、河南省を通過することが多いのだ。懐かしいのは10年くらい前に行ったきりの開封市。北宋の都だ。繁塔、ツアーの空き時間に自力で行ったんじゃなかったかな~。公園(奈良の平城宮跡)みたいに整備された殷墟にも行き、その中の遺跡、婦好墓も見た。登封市の法王寺は、少林寺の近くだったな…と思って検索をかけたら、「遣唐使『円仁』の名刻んだ石板、中国で発見」というニュースがヒットしてびっくりした。10日ほど前か。全然、気づいていなかった。

※asahi.com:遣唐使「円仁」の名刻んだ石板、中国で発見(2010/7/10)

※展覧会公式サイト「誕生!中国文明」(音が出ます)
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