見もの・読みもの日記

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長崎、寛永年間/黄金旅風(飯嶋和一)

2009-03-13 21:39:26 | 読んだもの(書籍)
○飯嶋和一『黄金旅風』(小学館文庫) 小学館 2008.2

 表紙に描かれた美しいジャンク船を見て、先月の長崎旅行の記憶がよみがえり、買ってしまった。物語の舞台は、寛永5年から10年(1628~1633)の長崎。主人公の平左衛門(二代目末次平蔵)は、かつて長崎のセミナリオで学び、稀代の悪童として、宣教師たちを恐れ、呆れさせた過去を持っていた。

 ふむふむ、末次平蔵という名前は、長崎歴史博物館で見たような。いや、あれは初代平蔵の父である末次興善だったかもしれない。いずれにしても、赤瀬浩『「株式会社」長崎出島』(講談社、2005)によれば、寛永期の長崎は、キリシタンの改宗事業が一段落し、国内外(高麗・中国)から集まった人々によって、新たな貿易都市・長崎が形成され始めた時代だ。この「初期長崎」の面影は、寛文3年(1663)の大火で灰燼に帰してしまう。主人公の悪童仲間の平尾才介は、内町火消組頭として登場するので、ドキドキしながら読んでいたが、物語がまだそこまでいかないうち、才介は若くして炎の中に消えてしまった。

 また、この夏、『イエズス会の世界戦略』(高橋裕史著、講談社、2006) という本も読みかけた。途中で挫折してしまったのだが、イエズス会の日本セミナリオ(神学校)の具体的な様子(日課、服装、食事など)が少し分かっていたので、この小説の情景を思い浮かべるよい手がかりになった。

 悪役となるのは、長崎奉行の竹中重義。実在人物で(知らなかった)キリシタン弾圧・密貿易など、あまり芳しい評判がないが、物語中では、呂宋(ルソン)征伐によってイスパニアを駆逐し、オランダ貿易・唐人貿易の巨利を独占しようとたくらんでいる。長崎の民を戦禍から守るため、この企てをくじくのが平左衛門。しかし、危機感を煽って気をもたせたわりには、最後の解決策は、松平伊豆守(知恵伊豆殿だ~)にチクるだけというのは、ちょっと拍子抜けである。でも、松平伊豆守が解き明かす家光の胸中は、なかなか興味深かった。

 楽しみながら、いろいろ新しい知識も仕入れた。寛永7年(1630)、寛永の禁書令は、キリスト教関係の書籍だけでなく『天文略』『幾何原本』など天文、数学、地理書(もちろん漢籍)などの輸入も禁じたこと。あと、チラリとだけ登場する日本人宣教師、金鍔次兵衛。長崎の歴史って、面白いなあ。

 
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