見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

週末秘仏の旅(3):特別陳列・お水取り(奈良博)

2009-03-10 23:56:07 | 行ったもの(美術館・見仏)
奈良国立博物館 特別陳列『お水取り』

 一夜明けて、3月8日(日)は、朝いちばんの興福寺の国宝館に寄り(後述)、続いて奈良国立博物館へ。秋の正倉院展の混雑がウソのように静かな館内である。本館の「仏教美術の名品」を流し見て、地下のミュージアムショップを覗く。と、東大寺修二会の関連文献本が多数。写真の多いものを片っ端から開いて、3月7日「小観音出御」に関する記事を探していく。

 すると、あった! 昨夜、私が見た光景と全く同じ、2人の練行衆(僧侶)が、内陣の後ろ正面の戸に背を向け、両腕を上げて格子をしっかり掴んだ姿。説明には「ツレ五体」(連れ五体)とある。あれは「五体投地」の変形版だったのか…。7日後夜の勤行(8日未明)だけに行われる、独特の作法であるそうだ。珍しい光景を間近に見ることができた喜びをしみじみと噛みしめる。(→毎日.JP 奈良:2009年3月9日

 それから、新館で上記の特別陳列を見学。「絶対秘仏」と言われる二月堂の大観音・小観音って、実は鎌倉時代のスケッチが残っているのだなあ。買って帰った図録を読んでいたら、久安4年(1148)の修二会最中に「練行衆が小観音の厨子を打ち敷くという事件」が起きたと書いてあった。一体、何が原因だったのだろう…。あと、常設展で何度か見ている大観音の光背の断片(寛文7年=1667年の火災で被災)は、明治になって、建築史家の関野貞が発見したものだということも初めて知った。

 バスケットボールとテニスボールほども差がある大小の法螺貝を見て、昨日の演奏、高音と低音の特徴的な掛け合いが耳によみがえってくるように感じた。同様に鈴の音にも高音と低音があったが、大導師鈴は全面に紙貼りを施してある(音が籠るんだろうな)のを見て、なるほど、と思った。念珠も、激しく擦り合わせて音を立てる、重要な楽器だった。油差しとか柄香炉とか、あ~昨日もこんなの持っていたなあ、と思う。紙衣(かみこ)や差懸(沓)は、実際に近年使用されたもので、汚れ具合がリアルである。

 パネル展示のコーナーで、再び「連れ五体」の写真を見つけ、ボランティアの解説おばさんに「小観音出御・後入」について聞いてみた。小観音のお厨子は、夕刻の「出御」の際、内陣の西正面から礼堂に運び出され、南隅に安置される。深夜の「後入」では、礼堂の南隅から内陣に再び入って大観音の前に移される。だから「後入では、ちょっとの距離を動くだけなんですよ」とおばさんは言っていたが、あとで図録の解説を読んでみると、そうではなくて、「後入」の際は、いったん外陣を右回りにまわり、南側から再び内陣に入るらしい。

 ということは、もう少し待っていれば、目の前を小観音のお厨子が担がれて通り過ぎていくのが見られたのだな。ちょっと残念だが、またの楽しみとしておこう。でも、いまいち、お厨子の動きが完全には理解できない。やっぱり修二会って、何度も行ってみないと分からないものだ。

 ミュージアムショップで『特別陳列・お水取り』の図録と『東大寺修二会・お水取りの声明』(主要な唱句の本文と解説を収録)を購入。非常に役に立って嬉しい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする