見もの・読みもの日記

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東海岸見聞録(3):初日続き/ボストン公共図書館

2006-11-22 23:13:26 | ■USA東海岸見聞録2006
 ボストン美術館を出ると、既に日が落ちてあたりは暗く、冷たい雨が本格的に落ちていた。ホテルに戻って傘を取り、ボストン公共図書館を見に出かける(月~木は21:00まで開館)。

 ボストン公共図書館のあるコープリー・スクエアは、高級ホテルやショッピングコンプレックスに囲まれたボストン随一の繁華街のはずである。だが、雨のせいか、外を歩いている人はほとんどいない。高層ビルを隠すように垂れ込めた雲。街灯が少ないので、街全体が闇に沈み込んでいる。大きな石造の図書館も、ぼんやりライトアップはされているものの、闇の中にうずくまる怪物のようだ。アメリカの古都というイメージがあるので、「奈良の夜みたいだよね」などと勝手なことを言い合う。

 次第に強まる雨を避けるように、入口をくぐると、床から天井まで大理石に囲まれた巨大なホールが待っていた。やわらかな照明、赤みがかった大理石には、暗闇の中を歩いてきた訪問者を、思わずほっとさせる暖かみがある。正面の階段の踊り場には2匹のライオンが正対し、威厳と親愛の情を込めて(少しくつろいだ表情にも見える)、訪問者を見下ろしている。踊り場に上がると、四方の壁は美しい絵画で飾られている。ただし、壁画のタッチには、アメリカン・ポスターアート的なロマン主義が感じられて、ここがヨーロッパの僧院でないことを思い出させる。

 簡単に紹介をしておけば、ボストン公共図書館は、1848年に創設されたアメリカ最古の公立図書館である(→Wikipedia)。現在の建物は1895年に建てられたもので「ルネサンス復古調」と呼ばれる様式らしい。1972年に隣に新館が建てられ、旧館とは各階でつながっている(新館は、比較的”普通の”公共図書館である)。

 残念なのは、写真撮影が厳禁されていることだ。9.11テロ以降、アメリカの図書館はどこもそうらしい。そこで、ネットの上で見つけた写真ギャラリーを紹介する。どちらも、九州大学大学院人間環境学研究院の安立清史研究室のページから。

■図書館の夜:幻想図書館(1)
http://www.lit.kyushu-u.ac.jp/~adachi/Library/BPL/Night_Library.html

■特別版アメリカ便り(ボストン公共図書館の写真は下の方)
http://www.geocities.jp/kadachi1957/

 本館2階の大閲覧室に踏み込んだときは、あまりの美しさに感激して、声が出なかった。もちろん声を出してはいけないので、連れの上司と目を見交わして”感激”を伝えるだけ。「図書館の夜」のサイトに写真があるとおり、天井の高い、その分、闇の深い閲覧室の机には、スターバックスみたいな青緑のランプが、点々と灯っているのである。あたかも、深海でひそかに息づく孤独な発光生物のように。上記サイトの写真には、あまり利用者が写っていないが、当日は、けっこう席が埋っていた。パソコンを持ち込んでいる人も多かったように思う。

 それから、広い中庭を発見したときも、どこかなつかしく感じられて嬉しかった。写真のような噴水のライトアップはされていなかったが、暗い回廊のベンチで、雨の音を聞きながら、ひとりくつろいでいる女性がいた。

 より詳しい情報は下記サイトにて。「Guides to the Library」→「History and Description of the Library」→「Art and Architectures」(左欄外)の下を丹念に読んでいくと、館内の壁画が、Edwin Austin Abbey(エドウィン・オースティン・アビー)、Puvis de Chavannes(ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ)、John Singer Sargent(ジョン・シンガー・サージェント)などの画家の作品であることが分かる。

■ボストン公共図書館(The Boston Public Library. Central Library in Corpley Square)
http://www.bpl.org/central/index.htm

 たっぷり時間を費やして古都の図書館を堪能したあとは、Westin Hotelのショッピングアーケードを冷やかし、1階のシーフードレストランで夕食。ボストン名物のクラムチャウダーとロブスターである。シンプルというか芸のないアメリカ料理だったが、素材は美味しかった。

 そして、ホテルの前まで帰ったのだが、「水を買って帰ろう」という話になり、コンビニを探して街をぶらつく。ところが、まだ21:00頃だったと思うが、お店がどこも開いていない。結局、地下鉄2駅分、ボストン公共図書館のそばまで歩いて戻り、ようやく大型店舗のスーパーを見つけた。しかし、アメリカ人の買い物習慣に合わせているので、とてつもなくデカいボトルか、6本・8本などのパック商品しかない。店中を探しまわり(ものめずらしくて楽しかった!)、なんとか見つけた単品ボトルを購入。再び、さっきと同じ駅から地下鉄に乗って、苦笑しながらホテルに戻った。

コメント (1)
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