見もの・読みもの日記

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東海岸見聞録(2):初日/ボストン美術館

2006-11-21 11:53:14 | ■USA東海岸見聞録2006
 ボストンでのお仕事初日。朝から薄暮のような曇り空の下、ハーバード大学のキャンパスに向かう。上司とともに、東アジア専門のHarvard-Yenching Libraryと図書館のOffice for Information Systemsを訪ね、担当者と会談。きちんと仕事はしてきたと思うのだが、ここでは詳しい話は省略し、アフタービジネスに飛ぼう。

 この出張、先方の好意もあって、短い期間にたくさんのイベントが詰まっていたのだが、この日は、午後の遅い時間に、わずかなフリータイムを忍び込ませてもらっていた。

 かくて、初日の用務を終えて、ハーバード大学を辞したあと、上司と2人でボストン美術館に赴く。ボストン美術館といえば、東洋美術ファンの私には、憧れの美術館だ。西方の聖地と呼んでもいいくらい。日本絵画なら『平治物語絵巻』『吉備大臣入唐絵巻』、中国絵画なら徽宗皇帝の『五色鸚鵡図』など、たちまち名品の数々が思い浮かぶ。もっとも、実際には、ボストン美術館のコレクションは、東洋美術に留まらず、ドイツ・ルネサンス、印象派、アメリカン・モダニズムから、エジプト美術、ネイティブ・アメリカン関係まで幅広い。というか、我々が「文明の粋」だと思っている東洋美術コレクションも、アメリカ人から見ると、エジプトやアフリカの原始芸術と横並びなのかも知れない(笑)。

 閉館まで1時間しかなかったので、とりあえず、向かって左翼の1、2階を占めるアジアギャラリーを主に見ていく。近世の芝居絵・役者絵の展示が、質・量ともに圧巻だった。装束だか調度品だかの文様を、白地に型押し(エンボス)加工で表現したものが、複数あった。私は、さほど近世の木版画に詳しくないが、状態がよくないと残らないし、けっこう珍しい技法なのではなかろうか。

 近代美術では絵葉書コレクションが面白かった。純粋な美術品と言えないところに味わいがある(まあ、日本美術の場合、近世の琳派だって浮世絵だって商業アートなんだが)。仏像コレクションは、日本らしさを演出するためか、障子をしつらえた部屋になんだか雑然と並んでいた。勝手に「東洋美術の聖地」と思い込んでいた私には、全体として、今イチの感がぬぐえなかった。ただ、隣に建設中の新館ができると、面目を一新するのかも知れない。

 アジアギャラリーを抜けてうろうろする間に迷い込んだのは、「ソビエト・テキスタイル」の展示。今はなきソビエト社会主義連邦では、トラクターや工場や飛行機を用いたテキスタイル(織り物)が作られていたのだ。いや~楽しい!! 現実の歴史の悲惨さとは別に、革命思想にかかわるアートデザインって、どうしてこう、童心満載で楽しいのだろう。ポップで新鮮なデザインに、しばらく時間を忘れて見入ってしまった。

 最後に、広いミュージアムショップで、あわただしくお買い物。観光(いや、お仕事)初日なので、まだ財布の紐はそれほど緩まなかったけど。

■ボストン美術館(Museum of Fine Arts, Boston)
http://www.mfa.org/
コメント (1)
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