見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

中国書画の精華・再び/東京国立博物館

2005-11-21 22:01:59 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立博物館 特集陳列『中国書画精華』後期

http://www.tnm.jp

 日曜日、東博に出かけたのは、『伊万里、京焼』のほかに目的がもう1つ、東洋館の『中国書画精華』(後期)を見ることだった。前期は主に南宋絵画、後期は少し時代が下って、元~明の絵画となる。

 元代の絵画は、どこか内省的で好きだ。「維摩図」「高士観眺図」には、内面に食い入るような写実を感じる。

 明代になると、現代人の感覚に近すぎて、逆に、どこに焦点を据えて見たらいいのか、分からなくなることが多い。と思っていたのだが、張路の「漁夫図」(護国寺蔵)を見て、なかなかいいじゃないか、と思った。斜めに張り出した岩壁の下を1艘の舟が滑って行く。舳先には網を打つ男、その後ろで櫂を操るのは、若い男か、それとも漁夫の妻か。二人の筋肉の緊張が、素朴に心地よい。

 李士達の「竹裡泉声図」もいいなあ。遠景には、獣の背のような、頂上の平たい山並み。中景は、白雲の間に、さらにひときわ白く輝く梅林。近景は、墨を流したような竹林の下を、豊かな泉水が白く泡立って流れ、白衣の高士と従者の童子たちが集う。質感の異なる白と黒のリズムが絶妙である。東博のホームページの解説によれば「明末の(略)奇想派を予告するような造型感覚」が感じられる由。なるほど。

 あっけに取られたのは「鼠瓜図」。白い瓜を、瓜の中に体を沈めた大きな黒ネズミが食い破っている図。その横に黒い小ネズミが2匹、白が1匹。このように説明すると、なんかグロテスクな場面を想像されてしまうだろうが、実は、童話の挿し絵のように可愛いのだ。カレル・チャペックとか――ロシアか東欧の絵本みたいだと思った。嘘だと思ったら必見。
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