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見もの・読みもの日記

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アイスショー"Stars on Ice 2022"東京公演千秋楽

2022-04-12 12:11:24 | 行ったもの2(講演・公演)

SOI(スターズ・オン・アイス)Japan Tour 2022 東京公演(2022年4月10日 13:00~、代々木第一体育館)

 フィギュアスケートの観戦記事は、昨年のNHK杯以来であるが、その後の全日本選手権、北京五輪、世界選手権は、もちろんテレビやネットで観戦していた。この間の出来事について言いたいことはいろいろあるが、全て胸の奥に封じて、久しぶりのアイスショーを楽しんできたことを報告する。

 出演者は、宇野昌磨、鍵山優真、友野一希、島田高志郎、田中刑事、ネイサン・チェン、ヴィンセント・ジョウ、チャ・ジュンファン、樋口新葉、河辺愛菜、三原舞依、宮原知子、紀平梨花、アリサ・リウ、ペアのクニエリム/フレイジャー、アイスダンスのチョック/ベイツ、ホワイエク/ベイカー、小松原美里/小松原尊、村元哉中/髙橋大輔(かなだい)。

 東京公演最終日は、三浦璃来/木原龍一(りくりゅう)組がエントリーしていないのが残念だったが、それでもペア+アイスダンスが5組! かなだい人気の余波かもしれないが嬉しい。カップル競技にはシングルとは違った魅力があるので、もっと日本のアイスショーで海外の超一流選手の演技が見られるようになってほしい。今回、私はホワベイの燕尾服プロ「Black and Gold」が特に眼福だった。

 そのほか、このショーを見に来てよかった、としみじみ思ったのは、ヴィンセント・ジョウ「Lonely」、チャ・ジュンファン「Boy with a star」(韓国語の曲)、宮原知子ちゃん「スターバト・マーテル」。しっとり系の曲と滑らかスケーティングが私の好みなのだ。ヴィンスは、イーグルでゆっくり円を描くだけの動作が、なぜこんなに心を打つのか。白シャツ衣装のチャ・ジュンファンは、輝くような王子様オーラ。知子ちゃんは、裾丈長めの白いワンピースで、中世カトリック教会の荘重な聖歌で滑る様子が神々しかった。

 宇野昌磨くんが久々の「グレスピ(Great Spirit)」だったのも嬉しかった。ネイサンの「ロケットマン」は、ショーナンバーらしく、バク宙も入れてくれるサービスぶり。ええ~私は「The ICE」で変な仮装で出てきたネイサンの印象が抜けないのに、どうした、この隙のないカッコよさは。

 前半の最後に、この公演の前に引退・プロ転向を発表していた宮原知子ちゃんのトークショーの時間が設けられており、共演者が日替わりでインタビューアーをつとめたらしいが、この日は高橋大輔さんが登場。冒頭で「トークは上手くないんですけど」と言っていたけど、昨年のNHK杯で、りくりゅうや宇野昌磨くんへのインタビューがとても面白かったのを会場で見ていたので、いやいや何を謙遜しているか、と思った。あまり話上手でない知子ちゃんの緊張をほぐして、うまく話を引き出していた。この二人、同じ干支で12歳差と聞いて驚いたのと、高橋さんが盛んにカップル競技に誘うのが微笑ましかった。知子ちゃんの演技後には、宇野昌磨くんと鍵山優真くんから花束贈呈もあり。

 なお、公演最終日の前日にアリサ・リウが引退を発表。公演後に田中刑事くんも引退を発表した。オリンピック・イヤーって、こういう節目の年になるのだな、と感慨深い。

 今回、出費を抑えて一番安いB席(南側2階)にしたので、スケーターの姿が小さく、群舞だと見分けもつきにくかった。しかしリンク全体が視界に収まるので、動きの魅力がテレビよりずっと分かりやすい。また、照明の効果で、スピンや決めポーズのスケーターの影が大きく逆さにリンクに映るのが、ディズニー映画か何かのようで、うっとりした。

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若者は恋路を急ぐ/文楽・染模様妹背門松

2022-01-11 20:36:15 | 行ったもの2(講演・公演)

国立文楽劇場 令和4年初春文楽公演(2022年1月8日、17:30~)

 年の初めは大阪の文楽公演から。そう決めたのはいつだったか、ブログ内で調べたら、2013年が最初のようだ。2020年は三が日を台北で過ごしたあと、2週目の三連休を使って見に行った。新型コロナが騒がれ出す直前だった。2021年は、さすがに東京に引き籠らざるを得なかった。そして今年、1年お休みしただけなのだが、懐かしくて感無量だった。

1階ロビーのお供え(鏡餅)。橙の下の串柿は、大阪では定番だそうだが、東京では見たことがない。

にらみ鯛。

舞台の飾りつけ。

揮毫は住吉大社の髙井道弘宮司による。金色の霞たなびく大凧で、例年にも増してめでたい。

・第3部『染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)・生玉の段/質店の段/蔵前の段』

 今年の初春公演、私は、お染久松いいなあ、と思って第3部にした。しかし、このとき私の頭に浮かんでいたのは『新版歌祭文』だったので、幕が開くと、あれ?思っていたのと違う?と戸惑ってしまった。大阪の大店油屋の娘・お染は、丁稚の久松と恋仲にあり、お染のお腹には久松の子が宿っている。秘密の恋が、すでに人々の噂になっていると知った二人は、もはや死ぬしかないと覚悟し、井戸へ身を投げるが、久松が目を覚ますと夢であった。舞台の中央に「夢」という文字が浮かぶ趣向。

 このあと二人は、かりそめの夢が正夢であったように追いつめられていく。久松は、郷里から出てきた父親に、在所の娘と祝言をあげるよう諭される。お染は母親から、親の決めた相手に嫁ぐよう説得される。説得を聞き入れたかのように振る舞う二人。その夜、お染は、土蔵に閉じ込められた久松のもとに忍んでいき、土蔵の内と外で、決意を確かめ合う。仏間からは、お染の父親が唱える「白骨の御文」の声。早朝、仏間で自害したお染と、土蔵の中で首を縊った久松が発見される。

 初春公演にこんな悲惨な話を持ってきてよいのかとびっくりした。お染と久松を取り巻く大人たちは、決して横暴ではない。長い人生経験を踏まえて、若い二人の幸福を心から願っているのだ。しかし若者は恋に燃え上がり破滅に突き進む。ロミジュリか。蓮如上人の「白骨の御文」の引用が効果的で胸に沁みる。「朝には紅顔ありて夕には白骨となれる身なり/野外に送りて夜半の煙となし果てぬれば、ただ白骨のみぞ残れり」という。

 本作は、同じお染久松ものの『新版歌祭文』に比べると上演回数が少ないが、3~4年に1回は上演されている。私は、平成29年の初春文楽公演(大阪)でも本作を見ており、生玉の段の夢オチで、これは見たことがある、と思い出した。しかし、二人が助かるかどうかの記憶が定かでなく、最後までハラハラしてしまった。ネットで探したら、どうも前回の上演は、二人が逃げおおせて、ひとまず助かる結末を採用していたようだ。今回のプログラム冊子には、わざわざ「原作通りの上演です」という解説がついている。

 質店の段の千歳太夫さん、武張った時代物より、こういうしっとりした世話物のほうが聞きやすくてよい。蔵前の段は織太夫さんが病気休演でがっかりしたが、代演の藤太夫さんもよかった。低く落ち着いた声の「白骨の御文」が耳に残る。

・『戻駕色相扇(もどりかごいろにあいかた)・廓噺の段』

 駕籠かきの二人の江戸自慢、大阪自慢に、駕籠の客である京都・島原の禿が加わっての景事。初春公演の最後らしく、にぎやかに厄払いというところか。

※おまけ:翌日、四天王寺に参拝し、近隣をうろうろしていたら、初代竹本義太夫(1651-1714)の墓のある超願寺に行き当たった。現在の墓石は、義太夫の三百回忌を記念し、2013年に建立されたもので、覆い屋に収まっている。

 しかし調べると、竹本義太夫の墓は四天王寺西門墓地にもあり、東京・両国の回向院にもあるのだな。おもしろい。

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2021フィギュアスケートNHK杯 in 東京

2021-11-15 21:56:32 | 行ったもの2(講演・公演)

2021NHK杯国際フィギュアスケート競技大会(11月12-14日、国立代々木競技場第一体育館)

 最初の売り出しで1日目と3日目(エキシビション)をゲットし、2日目は、トレードを申し込んで粘ってみたが、駄目だった。今年はコロナ対策で入場者を定員のおおむね50%に制限したとという。確かに観客席の最上段や隅の区画はまるごと空いていたが、良席はぎっしり埋まっていた。

 しかし残念だったのは、直前に出場を取りやめる有力選手が相次いだこと。11/4に羽生結弦選手、11/5に紀平梨花選手、11/8のロシアのトゥルソワ、アイスダンスのホワイエク/ベイカー組の欠場が発表になった。その上、初日は、演技直前の6分間練習でウサチョワが転倒、細い体を抱きかかえられて退場し、競技を棄権するのを目の当たりに見てしまった。どうか選手のみなさん、ステイヘルシーで。

 初日の金曜は有休を取ったので、ペアの冒頭から全演技を見ることができた。3位になった三浦璃来/木原龍一組(りくりゅう)の「ハレルヤ」には感動して涙が出てしまった。最終的にSPもFSも順位は変わらなかったが、1位のミーシナ/ガリアモフ、2位のタラソワ/モロゾフ、4位のケイングリブル/レドゥク、みんな美しかった。日本のテレビでは、ペアが放映される機会が少ないので、やっぱり現地に来てよかったと思う。

 アイスダンスは、7位の小松原/コレト組、6位の村元/高橋組(かなだい)ともによく頑張った。個人的には正統派の小松原組のほうが好き。村元組のSP「ソーラン節」はヤンキー風味が強すぎるが、技術的にはずいぶん仕上がっていた。しかし第2グループ5組が登場すると、まだまだ世界上位とは格の違いがあることを思い知らされる。優勝したシニツィナ/カツァラポフ(シニカツ)、2位のチョック/ベーツ(チョクベイ)、3位のフィア―/ギブソン、そして4位のスペインのウルタド/ハリャービンも、みんな美しくて個性的で、ハイレベルなテクニックを堪能した。

 女子シングル、坂本花織ちゃんは期待どおり。欠場の紀平梨花選手に代わってINした河辺愛菜ちゃんの堂々とした演技にびっくりした。男子シングル、宇野昌磨くんはもちろんよかったのだが、その前に、三浦佳生くん、樋渡知樹くんの活躍が嬉しく、山本草太くんの渾身の「Yesterday」には感動した。あと名前は知っていても、生で見るのは初めてだったのが、ヴィンセント・ジョウ(いいなあ)、ナム・ニュエン、カムデン・プルキネン。実は名前も知らなかったのだが、このNHK杯3日間で完全にファンに落ちたのが、韓国のチャ・ジュンファンくん。ロックもクラッシックも行けるが、FS「トゥーランドット(誰も寝てはならぬ)」の王子様ぶりが好き。とにかく男子は楽しくて、忙しかった。

 2日目は、家事と呑み会の合間にテレビとネットで観戦。NHKは、アイスダンス以降の全演技を地上波中継してくれた上に、終わった演技はすぐに特設サイトで動画配信してくれた。感謝、感謝。毎月の受信料が無駄になっていないことを実感した。

 3日目、今年のエキシビジョンは、奇をてらった演出で驚かす選手が少なく、高い技術をしっかり見せてくれた。ただ、楽曲は、お客さんがよく知っていて楽しめるものを選んでいるように思う。河辺愛菜ちゃん、韓流ドラマ「愛の不時着」のテーマだったし(笑)。

 開演前と休憩時間のインタビューコーナーも面白かった。高橋大輔選手は、りくりゅうや宇野昌磨くんへのインタビューアー役も兼任。シングルからペアに転向した木原龍一選手が、身体を作り替えるための筋トレのつらさを告白して「二十歳過ぎて転向するのは」と嘆くのを聞いて、「僕は三十過ぎですけど」とつぶやくので噴き出してしまった。でも笑いごとでなく、高橋選手の肉体改造はすごい。やっぱり一流アスリートなんだと思う。そして、りくりゅうペアはどこまでも可愛い。宇野昌磨くんは、平昌五輪の頃とは別人のように受け答えがしっかりしていて、親戚の子が大きくなったみたいに嬉しかった。

 休憩時間には、荒川静香さんと高橋成美さんが、坂本花織選手、河辺愛菜選手にインタビュー。そのあと、ヴィンセント・ジョウ選手が登場。実は、小さい頃からどーもくんが大好き(ファンの間では有名)だそうで、リアルどーもくんと対面。感想を聞かれて真顔で「Beautiful!」と言っていた。ヴィンス、いい子だなあ。

NHK杯男子2位のジョウ、どーもくんと対面「僕だけが話せるなんて光栄」(スポニチ2021/11/14)

 2022年は札幌だそうだ。自分の生活環境がどうなっているか、出場選手がどうなるか(誰が現役を続けているのか)分からないけれど、できればまた観戦したいな。

 ところで、国立代々木競技場第一体育館は、丹下健三が1960年の東京五輪のために設計した。

 私は半世紀以上、東京に住んでいるが、中に入ったのは初めて。天井がカッコいい。しかしトイレが少なすぎるのが不満。

 羽生くんと梨花ちゃん。叶わなかった夢の痕跡を記念に。

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久しぶりの大阪/文楽・芦屋道満大内鑑、ひらがな盛衰記

2021-11-03 17:21:49 | 行ったもの2(講演・公演)

国立文楽劇場 令和3年錦秋文楽公演(2021年11月1日、11:00~、14:00~)

 月曜に有休を取り、土日月の2泊3日で関西方面で遊んできた。最終日の月曜は文楽公演へ。今年は恒例の新春公演に行けなかったので、大阪で文楽を見るのは1年ぶりである。平日の公演を見るのは、いつ以来か分からないが、常連らしいお客さんのくつろいだ雰囲気が物珍しかった。

・第1部『芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)・保名物狂の段/葛の葉子別れの段/蘭菊の乱れ』

 たぶん30年以上前、文楽に興味を持ち始めた頃に、吉田文雀さんの葛の葉で見た演目である。吉田和生さんでも一度見ていて、彼の芸風に合った役だなと思った記憶がある。さっき調べたら、2011年2月、文雀さんが休演して、急遽、和生さんが代役をつとめた公演を見たようだ。今回の公演のプログラムに、和生さんのインタビューが掲載されており、師匠(文雀さん)が好きで長く遣い続けていた役であること、今回の公演では、師匠が六十年ほど前に大江巳之助さんに作ってもらった白狐の縫いぐるみを遣うこと、師匠から葛の葉を遣う上で教えられたこと(動物と植物は違う)など、興味深い話がたくさん詰まっていた。

 「どんな役でもそうですが、何度も演じていますと、だんだん手数が減っていきます。いろんなことをやらなくても、人形を持って出るだけでお客さまに伝わるようになりますね」という談話も興味深い。実際、和生さんの葛の葉が、布団に眠る我が子をじっと見つめているだけで、胸に迫るものがある。桐竹勘十郎さんの、神通力で跳び回るキツネ(本朝二十四孝や玉藻前曦袂)とは、また違った魅力があるのだ。この狂言、出自とか種族を超えても家族は成り立つと教えてくれるので、ある意味、とても現代的なテーマにも思える。

 「蘭菊の乱れ」は初見のような気がしていたが、2011年にも見ていた。葛の葉はキツネの口のようなマスクを着け、赤い房が耳のように見える黒塗り笠をかぶって登場する。万寿菊(光琳菊みたい)の裾模様の入った柿色の着物。ちょっと珍しい衣装ではないだろうか。

・第2部『ひらかな盛衰記(ひらがなせいすいき)・大津宿屋の段/笹引の段/松右衛門内の段/逆櫓の段』

 たぶん何度か見ている演目だと思う。摂津国福島の船頭・権四郎は、未亡人の娘およしと孫の槌松を連れて西国巡礼の途中、大津の宿屋で訳ありの一行(木曾義仲の御台所・山吹御前と駒若君ほか)と隣り部屋になる。その晩、鎌倉方の襲撃を受け、権四郎らは子どもを取り違えて、駒若君を連れて逃げ出し、山吹御前が連れ出した槌松は、鎌倉方の武士に討たれてしまう。

 その後、権四郎の娘およしは、新しい夫・松右衛門を迎え、取り違えた槌松(実は駒若君)と睦まじく暮らしていた。そこに山吹御前の腰元お筆が訪ねてきて、一夜の顛末を語り、若君を返してほしいと懇願する。このお筆、「笹引の段」での活躍が目覚ましいが、胆力も行動力もある「できる腰元」である。孫の死に激怒する権四郎だが、松右衛門(実は木曾義仲の家来・樋口兼光)に情理を説かれ、状況を受け入れる。しかし、松右衛門すなわち樋口の正体は、すでに鎌倉方の間者である船頭たちに知られていた。権四郎は、畠山重忠に訴え、元の婿・亡き松右衛門の実子である槌松だけは助けてもらう確約を得ていた。それを知り、従容と縄を受ける樋口。ああ~こういう、口で言うことと内心が裏腹、という芝居は大好物である。偶然から生じた「取替え子」ということで、物語の定型を外しつつ、巧くまとめた筋書きだと思う。

 第1部は「保名物狂の段」で織太夫と小住太夫の掛け合いを聴くことができ、「葛の葉子別れ」は中が咲寿さん、奥が錣太夫さんで堪能。ちなみに近くの席のおばちゃんたちが「しゅっとした…」「ガイジンさんみたいな…」とイケメンの咲寿さんに食いついていた。第2部は「笹引」が咲太夫さん。大勢がわちゃわちゃ掛け合いで喋る場面なのに、とても聴きやすかった。冒頭から声量も十分。お元気で何より。「松右衛門内」の芳穂太夫→呂太夫も安定感あり。「逆櫓」は三味線が華やかで、技巧的な聴かせどころも多く、清志郎さんもノッていた。

 なお、危惧はしていたのだが、お弁当屋さんが開いていないため、館内で昼食を調達できず(できればコンビニ飯でなく劇場のお弁当が食べたかった)。第1部と第2部の合間に外へ出て、急いでサンドイッチを買ってきたが、ロビーが飲食禁止で食べることもできなかった(1階に無料休憩所はある)。つらい。早く通常営業に戻りますように。

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太子信仰とともに/天王寺舞楽(国立劇場)

2021-09-21 22:58:31 | 行ったもの2(講演・公演)

国立劇場 第88回雅楽公演・国立劇場開場55周年記念・聖徳太子千四百年御聖忌『天王寺舞楽』(2021年9月18日、14:00~)

 久しぶりに舞楽を見てきた。調べたら、2017年2月に国立劇場で行われた宮内庁式部職楽部の公演以来、4年半ぶりである。今回は、本年が聖徳太子千四百年御聖忌に当たることから、大阪・四天王寺に伝わる「天王寺舞楽」の上演である。第2部の冒頭で、天王寺楽所雅亮会副理事長の小野真龍氏からお話があったが、天王寺楽所は、太子が側近の秦河勝の子孫を中心に設置したものと伝えられている。第1部では「秦姓の舞」すなわち天王寺舞楽らしい2曲を披露する。

・第1部:秦姓の舞

・蘇莫者(そまくしゃ)

 舞楽を見るには2階席がいいと思っているので、今回も2階の最前列の席を取った。幕が上がると、中央に舞台。左右に楽人の席。下手(左)に羯鼓・太鼓・鉦鼓の3人、上手(右)に管楽器が12人の配置だったが、プログラムによると全て左方の楽人らしい。太鼓は巨大な鼉太鼓ではなく小型の釣太鼓だったので、楽人の動作がよく見えて面白かった。背景には赤と紫の縦縞に有職文の華やかな幔幕。四隅には赤・黄・緑・紫の幡が垂れ、2台の篝火(電灯)が灯されている。

 上手からオレンジ色の袍をまとった貴人が現れ、舞台の脇で横笛を吹き始める。派手な衣装だと思ったが、東宮の着る黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)のつもりなのだろうか。これは聖徳太子の役である。やがて下手の幕の間から、モコモコした衣装、三角頭巾、長い白髪を垂らし、黒いお面に金のどんぐり眼の怪人が現れる。太子の笛に感応して現れた山神だという。あまり背の高くない舞人でもあり、括り袴で、ぴょこぴょこ飛び跳ねる姿が、リアルなポケモンみたいで可愛い。片手に持った鉄アレイみたいなものは桴(ばち)で、モコモコしたカラフルな衣装は蓑を表すようだ。打楽器の軽快なリズムが耳に残った。

・採桑老(さいそうろう)

 舞人は白い衣装に白っぽい頭巾、遠目には顔を覆う面もほぼ白に見えた。死を目前にした老翁で、手には長寿の印の鳩杖を持つ。老翁は若者(懸人)の肩に手を置き、実際に歩行を誘導される老人のように舞台に上がる。小さく膝を抱えてうずくまった老翁を残して若者は去る。パイプオルガンのような笙の音色に促され、ゆっくりと舞い始める老翁。しかし足は床からほとんど上げず、床を滑るように踏み出しては腰を落とす。老人の舞姿を表現しているのだ。終盤には少し動きが早くなり、足を上げる様子も見せるが、最後は再びうずくまって動かなくなり、迎えに来た若者とともに去っていく。

 解説には「死を目前にした老翁が、長寿の妙薬といわれる桑葉を求めて、山野をさまよい歩く姿」だとあったが、全て夢の中のできごとのようにも見えた。あと、ネットで検索すると、この曲には「舞うと舞人が数年以内に死ぬ」という言い伝えがあるそうだ。そのくらいの神秘性を感じさせる楽曲ではあった。

・第2部:聖霊会の舞楽

 冒頭、前述の小野真龍氏が幕前に出て、天王寺舞楽について解説。雅楽は仏教法会、特に浄土教との結びつきが強く、極楽の音楽と言われてきた。四天王寺の聖霊会の舞楽は、亀の池に架かる石舞台で演じられる。通常の舞台(3.5間×3.5間)より広く(6間×4.5間)、池を取り巻く観衆との距離も遠いので、大きく分かりやすい所作が求められるという。天王寺舞楽は『徒然草』に「都に恥ぢず」と評され、鳥羽院が熊野詣の途中で立ち寄って鑑賞したとか、平清盛が厳島神社に移植した(都にも大内楽所があったのに天王寺楽所を選んで!)という歴史も面白かった。

・行道~一曲(ぎょうどう~いっきょく)

 第2部はほんの少し舞台デザインが変化。天井近くに曼殊沙華を表す巨大な赤い玉飾りが登場した。左右に分かれた楽人たちが演奏しながら入場する。足元は沓でなく、白足袋に草履。最後に、左右の楽頭に褒美の白い布が授けられる(左肩に掛ける)。

・蘇利古(そりこ)

 雑面(ぞうめん)を付けた5人の舞人による。大きな雑面の頭にちんまり乗った垂纓の冠、袍(?)を腰のあたりに巻きつけて着ぶくれした上に袴を括っているので、丸々したバランスがかわいい。聖霊会では、この舞の後に法要の本尊にあたる太子の楊枝御影を収めた厨子の帳を上げることから「太子御目覚めの舞」と言われるそうだ。「楊枝御影」は『聖徳太子 日出づる処の天子』展(大阪市立美術館→サントリー美術館)で公開される。忘れないようにしなくちゃ。

・陪臚(ばいろ)

 「陪臚破陣楽」ともいう。赤系統の装束に鳥兜の4人が、鉾と盾を持って登場。2人ずつペアになって左右から盾を立てかけあい、鉾も床に置いて、剣を抜いて舞い、剣と盾を持って舞い、また鉾を持って舞う。変化が多くて面白い。勇壮だが、動きはそんなに早くなく、大きく手足を動かす所作が多いので、準備体操を見ているみたいでもある。

・長慶子(ちょうげいし)

 舞楽・雅楽の終わりにお決まりの曲で幕。

 「蘇利古」「陪臚」は、あれ?私これ見たことある、と気づいたが、「蘇莫者」はすっかり忘れていて、初見のつもりで見ていた。実は、2012年9月にも国立劇場に『四天王寺の聖霊会 舞楽四箇法要』を見に来て「蘇利古」「蘇莫者」を見ており、そのときもぴょんぴょん跳ねる舞人に戸惑っていた。「陪臚」は、2012年2014年に宮内庁楽部の公演を見ている。まあどれも10年近く前の話なので。

 それより、聖霊会を大阪・四天王寺で見たいという長年の夢はなかなか実現しない。2022年4月22日は、千四百年御聖忌を記念して、特別な大法要になるというお話だったが…行けるだろうか。カレンダーを見ると金曜日である。

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江戸時代の天文資料(大阪市立科学館オンライン講座)お試し視聴

2021-09-04 19:03:36 | 行ったもの2(講演・公演)

大阪市立科学館 連続オンライン講座 第1回『科学館にある江戸時代の天文資料を詳しく紹介』(講師:嘉数次人、2021年9月4日、10:30~)

 大阪市立科学館では、学芸員が、それぞれの専門分野や同館の資料、あるいはタイムリーな話題などについて話す連続オンライン講座(計11回)を開講中である。コロナ禍で一気に増えたオンラインイベント、あまり高額なものは敬遠していたのだが、これは1回300円と格安なので、お試しに視聴してみた。

 はじめに紹介されたのは、渋川春海(1639-1715)の『天文分野之図』。縦は1メートルを超える一枚の摺り物である。科学館所蔵本は掛軸状に表装されており、ふだんは館内に常設展示されているそうだ。講義では、平台上に広げた資料を講師(?)がハンディカメラで撮影しながら解説してくれた。細かい文字まで接写で見ることができたのはありがたいが、微妙にカメラが揺れるので、ちょっと酔いそうになった。

 摺り物の上部には、大きな円形の星図が描かれている。その周囲に方角を示す十二支と日本の国名(令制国)が書かれていることには初めて気づいた。子(北)に越前や若狭、午(南)に紀伊や和泉という記載から分かるように、中心は京都(機内)である。もともと中国では、天を東西南北と中央の五つに分けて(五行思想だ!)地上の地方と対応させ、この星の付近で流れ星があるとこの地方で何があるというような、分野説に基づく天文占(てんもんせん)が行われてきた。春海は、これを日本の国土にあてはめたのである。だから星図のタイトルが『天文分野之図』なのか。

 講師によれば、古代の天文学は「暦学」と「天文占」から成るそうだが、春海が中国の暦を調整して日本に適した『貞享暦』を作り出したことと、日本の天文占に必要な『天文分野之図』を作ったことに、共通する問題意識があることは理解できた。

 天文占は春海のライフワークで、『天文瓊統』では、ヨーロッパや太平洋地域など、世界の地方を分野配当しているそうだ。また『天文成象』所載の星図には、中国由来の星座に加えて、春海が独自に創作した星座61個(星数308個)が掲載されている。この日の講義では、『天文成象』の星図を引用した『天経或問註解』の版本を映しながらの解説があった。織女星の近くに「天蚕」を置くなど、中国星座にちなむものもあるが、「大宰府」など、日本の社会・官僚制度に添ったものもある。私は、むかし国立天文台で『天文成象』(いや『改正天文図説』かもしれない?)を見たことがあって、この「大宰府」の文字を不思議に思ったことを思い出した。

 講義の後半は、優れた望遠鏡を多数製作し、天文知識の普及にも貢献した岩橋善兵衛(1756-1811)の紹介。このひとの名前は知らなかった。大阪市貝塚の商人なのだな。岩橋の『平天儀』は、台紙に4枚の紙の円盤を重ね、ぐるぐる回すことで、一年間の特定の日・特定の場所(経度)で見える星座・月の満ち欠け・潮の満ち干などが分かる仕掛けになっている。また『平天儀図解』には、この円盤の使い方の解説のほか、様々な天文の知識がまとめられている。漢字仮名交じりで振り仮名の多い文章ので、漢文が基本の春海の著作に比べれば、ずっと読みやすそうだ。どのくらいの部数が、どのような階層の人々(裕福な町人とか?)に読まれていたのか、気になった。

 江戸の天文学には、むかしから細々と関心を持ち続けているので、久しぶりに関連の話が聞けて楽しかった。また、ネットで少し検索してみたら、様々な資料や研究論文が、むかしよりずっと手に入りやすくなっていたのも嬉しく思った。

天文分野之図(国立天文台)…画像と解説

星空に親しむ:宇宙探検ガイド第1回/国立天文台 高梨直紘…スライドの17枚目に中国13世紀の淳祐天文図(蘇州天文図)の翻刻画像あり。星図のいちばん外枠に方位(子、丑、寅など)と地名らしきもの(揚州、幽州、豫州など)が見える。そのほかに呉、燕、宋などとあるのも旧国名(地方名)か。星紀、析木、大火というのは何だろう?と思ったら「十二次」と言って、天球を天の赤道帯にそって西から東に十二等分したものだそうだ。

江戸時代の星座/嘉数次人(天文教育2009年7月号)…本日の講師の論文。渋川春海の創作星座に関する解説あり。

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アイスショー"Frends on Ice 2021" 3日目昼の部

2021-08-29 21:50:53 | 行ったもの2(講演・公演)

〇フレンズ・オン・アイス2021(2021年8月29日、12:30~、KOSÉ新横浜スケートセンター)

 荒川静香さんが中心となり、2006年から企画プロデュースしているアイスショーを初めて見てきた。4月の「STARS on ICE」、5月の「Prince Ice World」に続いて、今年3回目の観戦である。ちなみに7月の「Dreams on Ice」はチケット争奪戦に敗北、8月の「THE ICE」とこの公演と、どちらに行くか迷ったが、出演者の年齢層の高いこっちにした。

 出演者は、荒川静香、本田武史、鈴木明子、安藤美姫、織田信成、無良崇人、本郷理華、村上佳菜子、小林宏一、中野耀司、宇野昌磨、田中刑事、坂本花織、樋口新葉、宮原知子。プロ転向組と現役選手が2:1という構成。

 私は、現役選手の、体力と技術で攻めまくる演技を息をつめて見守るのもいいが、それぞれ個性に磨きをかけたプロスケーターの演技を、少しゆったりして気持ちで見るのも好きなのだ。鈴木明子さんの「O(オー)」、織田信成くんの「ゴースト」は、久しぶりで嬉しかった。本田武史さんの「The Perfect Fan」は亡きお母様に捧げるプログラムという紹介があった。本田さんはイーグルを見てるだけで幸せ。本田さん、無良崇人さん、田中刑事さんの「雨に唄えば」も楽しかったけど、三人の誰を見たらいいか、目が忙しかった。

 荒川静香さんは、コラボプロを含め、確か3プロ演じていた。クールでカッコよかったり、神仙姐姐のように神秘的だったり、しっとり情緒的だったり、どんなキャラクターも演じてしまう。そして相変わらず身体の使い方がきれい。現役感バリバリで、しかも日本スケート連盟副会長で、お母さんでもあるって、超人的だと思う。

 現役組は、本格的なシーズンインが間近に迫っていることもあって、それぞれ気合の入った演技を見せてくれた。特に宮原知子さんの「トスカ」。原曲が好きということもあるけど、気持ちが入って少し泣いてしまった。名プログラムだと思う。宇野昌磨くんは高難度のジャンプが続く「オーボエ協奏曲」をノーミスで! 4月に見た「ボレロ」はまだ挑戦を始めたばかりの印象だったけど、だいぶこなれているのだろうな。フィナーレや群舞の表情を見ていても、昌磨くん、大人になったなあと感慨深かった。

 さあシーズンイン。選手のみなさんが、無事に、安全に演技できますように。そして来年こそ、アイスショーに海外のスケーターたちが帰ってきてくれますように。

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アイスショー"Prince Ice World 2021" 横浜公演初日

2021-05-03 23:26:37 | 行ったもの2(講演・公演)

プリンスアイスワールド2021-2022 Brand New StoryⅡ~Moving On !~ 横浜公演(2021年5月1日、11:30~)

 連休中にこの公演があると知って、チケットを購入したのは3月の末頃だった。せっかくの5連休、海外旅行は無理としても国内移動はできると思っていたので、旅行計画の邪魔にならないよう、5日間10公演から初日の昼の部を選んだ。そうしたら、結局、今年の5連休唯一の予定になってしまった。

 会場はKOSÉ新横浜スケートセンター。朝、出遅れてしまったので、余裕をもって東京から新横浜まで新幹線で移動することにした。そうしたら宮城県沖で発生した地震の影響で、いきなり新幹線が止まってしまった。ヤバい!と焦ったが、幸い15分程度の遅れで復旧。新幹線を使った意味はなくなったが、なんとか間に合った。

  出演者(ゲスト)は、荒川静香、本田武史、本田望結、宇野昌磨、鍵山優真、本田真凜、樋口新葉、田中刑事、友野一希、三浦佳生。円熟のプロスケーターと伸び盛りの若手が混じっている。他のアイスショーでは見られない、華麗な団体演技でショーを引っ張るプリンスアイスワールドチームも同じらしかった。

 私は、2010年と2012年にPIW東京公演を見ており、荒川静香さん、本田武史さん、プリンスアイスワールドチームの小林宏一さんは、そのときのメンバーでもある。荒川さんの変わらなさ、相変わらず女神のような美しさと高い身体能力を維持していることに驚嘆する。本田武史さんは、衣装のせいか、やっぱり腰回りが立派になったなあと思ったのだが、曲(リバーダンス!)が始まったら、滑らかなスケーティングに目が釘付けになった。ステップも!ジャンプも!

 2010年に初めて見たPIWは、子供向き(ファミリー向き)のゆるいアイスショーだった。それが2012年には、ぐんと芸術性の高いショーになっていて驚いた記憶があるのだが、10年ぶりの今回は、段違いに進化していた。衣装、小道具、照明、ドラマ仕立て、とにかく手を変え品を変えして楽しませてくれる。オープニングでは本物の炎が上がる演出あり。製氷車をリンクに乗り入れてきたり、巨大な旗を振り回したり。エアリアル(長いリボンやリングを使って宙に浮く)も思った以上に本格的だった。

 衣装では、女性の赤いロングフレアパンツが新鮮だった。裾を踏まないよう、スケート靴と一体になっていた。和風プロでは花魁ふうに胸の前で帯を結んだ女性スケーターと、裃姿?で提灯を持った男性スケーターが登場した。まあ和風プロは、YOSAKOIとかに通じる、ちょっとヤンキー風味ではあったな。グループ演技の解説では、男子も女子も揃いの半ズボン衣装で、ゲストの友野くん、三浦くん、鍵山くん、田中くんまで半ズボン姿で登場したのには笑ってしまった。

 途中で団体演技(シンクロナイズドスケーティング)のエレメンツ(ライン、サークル、ホイール、ブロック、インターセクション)の解説を入れてくれたのもありがたかった。後半のグループナンバーは、これらのエレメンツを複雑に組み合わせたものが多くて、スリリングだった。

 前の週のSOI横浜と共通するスケーターは、同じ演目が多かったけれど、田中刑事くんの「ジュ・テ・ヴ」は大人のしっとりプロ。こういう路線もいいね。昌磨くんの「ボレロ」は、なんとかこらえて演じ切った感じ。フィニッシュのあと、なかなか照明が明るくならなかったのは、起き上がってリンク中央に行くのに時間がかかっていたのではないかと思う。客席に一礼するときも足元がフラついていた。疲れるよねえ。でも楽しそうで何より。

 PIWには名物「ふれあいタイム」があるのだが、今季は自粛のため、フォトタイムを設けてくれた。これも嬉しいサービス。また見に行きたい。

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アイスショー"Stars on Ice 2021" 横浜公演千秋楽

2021-04-27 22:24:33 | 行ったもの2(講演・公演)

SOI(スターズ・オン・アイス)Japan Tour 2021 横浜公演(2021年4月25日 13:00~)

 私の手元にある半券には、2020年4月12日(日)の日付が入っている。”STARS on ICE"は老舗のアイスショーのひとつだと思うが、一度も行ったことはなかった。それが、どうしても行きたくて、かなり無理をしてチケットを取ったのは、羽生結弦くんと宇野昌磨くんの共演が発表されたためだ。どちらも好きで、それぞれ、別のアイスショーでは見ていたのだが、久しぶりの共演をなんとしても見たいと思ったのだ。

 チケットを入手したのは、まだ新型コロナが日本で猛威を振るい始める前だったはず。ところが、開催日が近づくにつれて、だんだん雲行きが怪しくなってきて、とうとう中止(延期)が発表されてしまった。そして1年後の2021年2月、4月8~11日に振替公演を行うとの発表があったが、2度目の緊急事態の延長によりまた延期。3月半ば、4月22~25日の再振替公演が決定した。しかし4月25日(日)から3度目の緊急事態宣言が発令され、どうなるかと思ったが、会場が横浜アリーナ(新横浜)だったので、あやうくセーフ。

 羽生くんは4月15~18日の国別対抗戦に出場が決まっていたので、SOI出演はないかなと思っていたが、直前にまさかのIN。これ、振替公演が当初の4月8~11日だったら、出られなかったんじゃないだろうか。禍福はあざなえる縄のごとし。2020年には、パトリック・チャンをはじめ海外スケーターの来日も予定されていたが、振替公演は全て日本人スケーターで行われることになった。これはこれで、気になる若い選手がたくさん見られて面白かった。

 出演者は以下のとおり:羽生結弦、宇野昌磨、鍵山優真、無良崇人、田中刑事、佐藤駿、友野一希、山本草太、三浦佳生、三宅星南、樋口新葉、紀平梨花、坂本花織、三原舞依、横井ゆは菜、山下真瑚、新田谷凜、小松原美里&小松原尊。無良くん以外は全て現役。あと振付の佐藤有香さんも滑ったが、なんだか全日本選手権を見に来たみたいだった。

 この日は、いよいよオープニングというとき、スケーターたちがみんなで気合を入れる大きな掛け声が聞こえて、おお!とテンションが上がったのに、場内に流れたのは、事前情報と違う曲。ざわつく場内…と、音楽が止まって仕切り直し。と思ったら、また違う曲…でさらにざわめきが広がる。もう一回、気合を入れ直す掛け声が聞こえて、拍手でようやくスタート!という貴重な体験をした。まあこういうアクシデントも含めて、生観戦の面白さである。

 前半は、友野一希くんが眼鏡をかけて背広にネクタイ、ビジネスバッグと新聞を小道具に滑る「Bills」が楽しかった。三浦佳生くんの「Rise」は前のめりにガンガン攻めていく感じが好き。山本草太くん「Anthem」は文句なしの美しさ。これでしょ、あなたの本領は!と膝を打つ。前半の最後は、仮装用の髭・鼻・メガネをつけた無良くんが司会で登場し、男子5人(髭つき)によるジャンプ大会。BGMはもちろん髭ダンスの曲。淡々と「まずはアクセル」と言われて全員3Aを成功し、「じゃあ~四回転」と言われてこれも全員成功(草太くんはやり直し成功)するのだから、日本男子すごい。

 後半の最初は、昌磨くん+女性スケーター4人のコラボ。SNSで「ハーレムプロ」と呼ばれていたが、強いお姉さんたちに翻弄される弟の雰囲気で微笑ましかった。どのプログラムも楽しかったが、やはり坂本花織「No Roots」→鍵山優真「宿命」→紀平梨花「Rain」あたりから格の違いを感じた。ラス前は宇野昌磨くんの新プロ「Bolero」。耳慣れたボレロの演奏ではなくて、ちょっと変わったアレンジ。ゆっくり、力強く氷を踏みしめるようなステップは次第に早くなっていく。そして何度も何度もジャンプを飛ぶ。ひたすら跳び続ける鬼プロ。終盤、大きく転倒してしまった昌磨くん、フィニッシュで天を仰いだ姿勢から、ぺたっと背中を氷につけてしまった。苦笑いしていたが楽しそうだった。ランビエール先生もボレロを滑ったことがなかったっけ?と思ったが、2015年のFaOI神戸のフィナーレ曲だった印象が混線しているかもしれない。

 さて羽生くんである。オープニングは「Blinding Lights」(去年流行ったなあ)の群舞を黒衣装でカッコよく決めた。トリは白衣装で「Let's go crazy」、連続ジャンプをちょっとミスりかけるも、ドンマイ!という表情で歓声の中を滑っていく。これがアイスショーの楽しさ。フィナーレ「smile」はサザン桑田さんの曲なのか。男子は白のポロシャツ(かすかにストライプ)に黒のボトムで、これはSOIの定番衣装らしいのだが、羽生くんがこういう素っ気ない衣装姿を見せる機会は少ないので新鮮だった。

 マイクを握った羽生くんのメッセージは「どうかこの特別な日を忘れないで。僕たちも一生懸命頑張っていきます。そして、最後まで健康でいてください」だったかな。本当に楽しい特別な日をありがとう。いつかまた、もっと楽しい日のために健康で生き抜かなくては、と思った。

 会場はかなり「密」だったけれど、私のまわりは、正しくマスクを着用して、声は出さずに手を振ったり、拍手で応援していたので、あまり感染リスクは感じなかった。これなら、コロナ禍でもアイスショーは開催できると思う。とは言え、もちろん心置きなく声を出せる日が早く戻って来てほしい。

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心の闇の美しさ/文楽・菅原伝授手習鑑、冥途の飛脚、他

2021-02-17 22:51:05 | 行ったもの2(講演・公演)

国立劇場 令和3年2月文楽公演

・第2部『曲輪文章(くるわぶんしょう)・吉田屋の段』『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)・寺入りの段/寺子屋の段』(2月6日、13:50~)

 素人にも親しみやすい名作狂言が多い2月文楽公演。緊急事態宣言の発令もあって、本当に公演が行われるのか半信半疑だったが、無事に開催されて何よりである。座席は、最前列など一部を空席にしていたが、1つ置きは止めて、びっしりお客を入れていた。もちろんマスクは必須、ロビーでの飲食は不可、会話はお控えくださいというアナウンスが繰り返されていたが、このくらいの対策なら許容できる。

 『曲輪文章』は伊左衛門が咲太夫、夕霧が織太夫、端役の男が咲寿太夫で、師弟勢ぞろいが豪華だった。咲太夫さん、声の高さ(細さ)が耳について、低音の聴きどころがなかったように思う。曲のせいだろうか。物語は、伊左衛門の魅力が全然分からないのであまり好きではない。

 『菅原』は久しぶりに聴いた。いつ以来だろうと思ったら、2014年4月の住太夫引退公演以来だった。寺入りに続き、寺子屋の段は、前を呂太夫と清介、後を藤太夫と清友。私は小学生のとき、家にあった「少年少女世界の名作文学全集」の日本編でこの物語を読んだ記憶がある。主君の嫡男を救うため、我が子を身代わりに差し出すというストーリーは、子供ながらに衝撃だった。身代わりになる小太郎が、黙って自分の運命を受け入れた(と語られる)こと、松王丸と女房が「見事じゃ」と我が子の覚悟を称賛しながら悲しみにくれるという、人情の複雑さが強く印象に残っている。その後、大学生の頃に小松左京の短編『闇の中の子供』を読んだときも、「寺子屋」という物語の不気味さと、人間の業の深さを感じた。

 そんなあれこれを思い出していたので、義理と人情の板挟みになる松王丸に同情して、ほろりと貰い泣きしながら、こういう不気味な物語をいつまでもエンタメとして消費していいものか、ちょっと居心地の悪い気持ちになった。

・第3部『冥途の飛脚(めいどのひきゃく)・淡路町の段/封印切の段/道行相合かご』(2月11日、17:30~)

 本公演でいちばん見たかったのは第3部。この演目は何度見てもよいのだ。淡路町の奥を安定の織太夫と宗助。封印切を千歳太夫と富助。千歳さんは、あまり声を張らない世話物を語るときが好き。勘十郎の忠兵衛は、ふわふわと落ち着かない感じがよい。しかし、自分が物語を知っているせいかもしれないが、封印切の場面では、切るぞ切るぞという気構えが外に現われ過ぎな感じもする。むかし、先代の玉男さんの舞台を見たときは、人形の忠兵衛も、人形を遣っている玉男さんも無表情なのに、その懐から、いきなり小判がチャリンチャリンとこぼれ落ちたことに息を呑んだのである。

 考えなしで軽はずみな恋人の巻き添えになった梅川こそ、いい面の皮であるが、救われない二人の道行は美しくて大好物だ。近松の狂言は残酷だなあと思いながら堪能した。

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