前々回の「その2」からの続きです。
たった1枚のビニールシートをSPボックスの開口部(底板)に敷くことによって激変した「AXIOM80」(オリジナル:以下「80」)を、うまく鳴らせそうなアンプを次から次に登場させようというシリ~ズだが、その前にこのSPユニットの歴史に触れておこう。
10年ほど前に非常に熱心な「80」の愛好者で知られるSさん(福岡市)からいただいた資料がこれ。
「私がAXIOM80購入時に調べたユニットの見分け方の情報があったので、ご参考までに添付しておきます。確かに、カンチレバーもコーン紙もオリジナル版は復刻版よりも軽く造られています。反面、復刻盤は耐久性を重視したのかも知れません。それと、第Ⅰ期のものはマグネットの材料と磁束も異なるようです。ただしその分、時代が経っているのでかえって復刻版より磁束が落ちているかも?ですが。」
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第Ⅰ期 |
第Ⅱ期 |
第Ⅲ期 |
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オリジナル |
初 期 |
後 期 |
復 刻 |
製造年
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1950年代末 ~1960年代前半 |
1960年代 後半 |
1970年代 前半 |
1984年 ~1985年 |
製造工場 工場名 場所 |
WEMBLEY ミドルセックス州 |
WEMBLEY ミドルセックス州 |
HAVANT ハンプシャー州 |
HAVANT ハンプシャー州 |
マグネット 形状 材質 総磁束 磁束密度 |
Rエッジ チコナル 62,000maxwell 17,000gauss |
45°角エッジ アルニコ 58,000maxwell 16,000gauss |
45°角エッジ アルニコ 不明 不明 |
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カンチレバー 材質 厚さ |
ベークライト 薄 |
ベークライト 薄 |
強化繊維PT 厚 |
強化繊維PT 厚 |
高域用サブコーン 材質 色 |
ベークライト 茶or 黒 |
ベークライト 黒 |
パルプ 黒 |
パルプ 黒 |
フレーム 材質 製造法 塗装 |
亜鉛合金 ダイキャスト 無塗装 |
亜鉛合金 ダイキャスト 無塗装 |
鉄 鋳造 グレー塗装 |
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コーン紙 形状 厚さ コルゲーション |
折返しエッジ 薄 表・裏 |
折返しエッジ 薄 表・裏 |
切放しエッジ 厚 表 |
切放しエッジ 厚 表 |
さらに追加して、ご自身が所有されている(最初期の)「80」の写真を添付していただいた。機能に徹した“姿かたち”と見た目の美しさが渾然一体となって実に素晴らしい。
というわけです。
結局「オリジナル」と「復刻版」の見分け方は「マグネット部分が丸エッジかor角エッジか」に尽きるようですよ。
で、いよいよ「三番手のアンプ」の登場です。我が家で一番お金のかかっていないアンプです(笑)。
来歴を述べると、当初は知人に「チャンデバ」用として組み立ててもらったのだが途中から方針変更。
なぜかといえば、オークションで「TRIAD」(トライアッド)製のごく小型のプッシュプル用出力トランスを運よく落札。たしかペアでたったの7000円くらいだったと記憶している。
で、何とかこのトランスを活用したいとの目論見で「K」さん(大分市)にパワーアンプ用として改造していただいたもの。
音質にもそれほど期待しておらず、ただ「部品を遊ばせておくのがもったいない」という程度の軽い気持ちが発端だった。
当初は、前段管が「6SL7」出力管が「6SN7」だったが、響きの素っ気なさに不満を覚えて、ソケットの変換アダプターを使って前者を「12AT7」へ、後者を「6FQ7」(RCA:クリアートップ)へ、そして整流管を「GZ32」(ムラード:英国)へと交換したところ、期待以上の音質に唖然とした。
安物のアンプ、しかもこんなミニチュア管からこういう音が出ていいのか(笑)。
音にスピード感があるし、響きも十分だしまったく言うことなしで、とても信じられない!
そもそもは前段管(電圧増幅管)として使用されるのが一般的だが、この「6FQ7」と「出力トランス」のプッシュプル接続が絶妙な効果を発揮したのに違いない。
「80」はアンプに対して常に厳しい姿勢を取ると思ってきたが、逆に埋もれたアンプを発掘し、育てる面もあるんですねえ・・。
感無量ですぞ!(笑)
以下、続く。
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