お読みになった方も多いと思うが、読売新聞(8月16日付朝刊)の一面に次のような記事があった。
「ジョン・メイナード・ケインズ」(英国:1883~1946)といえば「ケインズ学派」を成したほどのマクロ経済学を象徴する巨人だが、当時「美人投票」という説を唱えていた。
「自分が最も優れていると考える企業の株ではなく、他人から最も人気を集めそうな企業の株を推し量り、勝馬に乗るのが有効だとする考え方。当時、英国の新聞紙面上で行われていた美人コンテストにたとえた。」
これには次のように分かりやすい実例があげられている。
小見出しは「買い物 他人の好みで」
「良いブランドだから、他の人も欲しいと思うはず。8月上旬、東京・銀座で都内に住む女性が価格を気にするそぶりを見せずに約2万円のパンツを買った。
何度か着て飽きたらフリーマーケットアプリでの転売を考えているという。自分がほんとうに欲しい服より、後で売ることを見越して中古市場で売れやすい服を買う人が増えている~三菱総合研究所~」
とのこと。
そういえば、クルマを購入するときだってそうですね。たとえば「色」だが、「ホワイトやブラック以外のクルマだと、下取りするときの価格が落ちますよ」と販売員さんからアドバイスを受けたことが何度もある。そういうわけでもないが、我が家の2台のクルマの色はいずれもホワイトだ(笑)。
さて、これを前置きにしてさっそくオーディオの話に移ろう。
我が家のケースだが、オークションで大いに惹かれた機器を購入するときに、万一ハズれた場合でも中古市場で高値がつきそうかどうかをまったく考慮しないと言ったら嘘になりますね。
以前のブログ「オークションの不思議な法則」(2019・6・12)でも述べたとおり、転売したときは不思議にほぼ手取りが4割落ちの価格になるので結局「楽しみ賃が4割だった」との話を覚えておられるだろうか。
つまり、冒頭の話のような例が実際に自分にもあるわけだが、もちろん基本的には「ほんとうに欲しい」が先行し、それに付随して市場価値が高ければ「言うことなし」というわけで、現実としておそらく皆様もそうだと思う。
そこで、ふと思ったのが「はたしてオーディオ機器の実力がきちんとオークション(中古市場)の相場に反映されているのかどうか」、これは実に興味深いテーマだと思いませんか?(笑)
結論から言えば、オークション市場は流石に「生き馬の目を抜く世界」とみえて、ほぼ正確に機器の実力と相場が拮抗しているように思える。
たとえば、つい最近の事例としてタンノイさんの「モニター・シルバー」(口径30センチ)がオークションに出品されていた。
タンノイさんのユニットは周知のとおりマグネットの部分の色によって「ブラック」→「シルヴァー」→「レッド」→ 「ゴールド」 →「HPD」・・と変遷していくが、巷の噂によると音質もこの順番に沿っているとされている。
実際に福岡市のSさん宅でコーナーヨークに入った「シルヴァー」(口径38センチ)を数回聴かせていただいたが、透明感が際立っていて他のタンノイさんとはまったく一線を画すものだった記憶がある。
駆動するアンプは「PP5/400シングル」(モノ×2台)。
横にあるのは「AXIOM80」。
というわけで、ブラックは極めて希少で市場にはまず無いとされており、シルヴァーが実質的に最高のユニットになっているので「お値段次第では手に入れてもいいかな、ハズレてもそれほど損はしないだろう」との皮算用で注意深く入札価格の推移を見守った。
落札期日当日まで3万円前後だったのであわよくばと思っていたら、何と直前からみるみる上がって最後は33万円前後へ(落札日:8月16日)。SPユニットとしては桁外れの高値で、所詮は高嶺の花だった。
やっぱり皆さんはよくご存じですねえ(笑)。
実力というか評判が市場価値ときちんと見合っていることに感心した。
ただし、そういう厳しい世界でも穴場というか「お買い得」もあるように思える。
一言でいえば、それは「機器の図体」に尽きる。
どういうことかといえば、市場価値の観点から我が家のオーディオ機器を見回すと、いずれもドングリの背比べでそれほど自慢できるものはいっさい無いが、唯一ユニークと思えるのがウェストミンスターの大型の箱である。
重さが100kgを越えるうえ、大きさからいって現在の住宅事情にはまったくそぐわないし、中身の方もオリジナルからすっかり改造しているのでオークションでの価値はほとんど無いに等しいと思う。
ところが、実際に使ってみるとこのくらい強力な武器も無い。
どんなにいろんな手立てを講じてみても、結局大きな箱の威力の前には無力感を感じてしまうことが再々である。
少なくとも我が家ではワーグナーの雄大な音楽はこの箱じゃないと聴けない。
したがって、オークションで大きな箱を見つけたらお値段もさほど伸びないことだろうから、事情が許す限り真剣に検討するに価すると思いますよ。
結局、オーディオの”とどのつまり”は「箱」に尽きるような気がしている今日この頃です(笑)。
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