「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

高価なオーディオ機器を購入するときの口説き方

2015年03月20日 | オーディオ談義

オーディオをやり始めてから40年以上ともなると、機器への初期投資も一段落して高価な買い物をしなくて済むようになったのはうれしい限り。何しろカミさんの顔色を窺(うかが)わなくて済むのがいい。

独身の頃ならいざ知らず、既婚の身となると(機器の購入にあたっての)一番の敵は「カミさん」となるのはいずこも同じだろう。

20年ほど前に大型スピーカーのタンノイの「ウェストミンスター」を購入したときは、運び込まれる前日まで家内に言い出せず、とうとう当日になって仕方なく告白したところ、それから1週間ほど口をきいてもらえなかったのを思い出す(笑)。

当時同居していた今は亡き母から「オーディオが好きな娘と結婚すればよかったのに」と、そっと耳打ちされたが、オーディオ好きの女性なんて滅多に居ないし、それに伴侶の選択ともなるといろんな尺度があるのでこれはちょっと無理な話。

母にしてみると“息子可愛さのあまり”の発言だったのだろうが、今思い出してみると「嫁姑」問題が微妙に絡んだややドライな話である(笑)。

「高価なオーディオ機器を購入するときのカミさんへの口説き方」で思い出すのが湯布院町在住の「中谷健太郎」氏(旅館亀の井別荘経営者)が、ヴァイタボックスの「CN191クリプッシュ・コーナーホーン」を購入されたときの新聞記事。

中谷氏といえば周知のとおり今日の湯布院観光の立役者であり、オーディオマニアとしてもつとに知られた方である。

「ゆふいん音楽祭を前に」~想念に身をまかせ世界漂う~と題して朝日新聞にコラムを寄せられていた。

以下、概略。

『わが店の珈琲(コーヒー)ルームに音楽を持ち込んだ。まずはスピーカー「ヴァイタボックス・CN191」、イギリス製の大型コーナー・ホーンだ。~中略~。30年ほど前、「ゆふいん音楽祭が」始まって数年、私が40台後半であったか。
「1日200円で25年間、音楽を楽しもうぜ」とカミさんを口説いて買った玩具だ。アンプはアメリカの「ウェスタン・124型」。350Bという大きな真空管がウリのパワーアンプ。軍隊の通信用に国費で開発されたという伝説があり、「だから凄い」という人と、「だから音楽には向かない」という人がいる。私はどちらでもヨロシ、黙って夜の帳(とばり)に光る真空管を見つめるだけだ。~以下略~』

興味を引かれたのは「1日200円で25年間、音楽を楽しもうぜ」とカミさんを口説かれたという話。

中谷さんほどの方でもオーディオ機器を購入するときはカミさんを口説く必要があったのかという点とそれ以上に、その口説き文句のうまさである。

1日200円で25年間といえば、ざっと計算すると182万5千円である。一度の出費となると大金だが「1日200円」と聞かされると、「何だ、駐車場1時間当たり200円と同じことか」とツイ気が緩む。

CN191コーナーホーンは今でもSPの名器として立派に通用しており、上品で艶のある独特の音質は他のSPには求められない。近年、中国系の富豪が物色しているという噂だが値段は現在でも当時とそれほど変わっていないはずでむしろ上昇気味かもしれない。

                      

それにしてもおよそ30年前の180万円近い出費には誰もがためらいを覚えるはずだが、それを「1日200円・・・」とは、どんなに渋ちんのカミさんだってつい頷かざるを得ないだろう。

日本の代表的な高級機器メーカー「アキュフェーズ社」が看板機種のプリアンプのデザインを(改造のたびに)一貫して変えないのもカミさん対策という噂がある。なぜなら、システムの中でそっと入れ替えてもカミさんに見つかりにくいからという笑うに笑えない身につまされる話を読んだことがある。

冒頭に述べたウェストミンスターを購入した当時、どう言い訳したか定かに憶えていないが、おそらく「ゴルフもやらず、夜な夜な飲み歩くこともないのだから」と、必死にかき口説いたに違いない(笑)。

それかといえば、福岡県在住の高校時代の同窓生O君の場合、奥さんが理解があって名古屋まで一緒にアンプを見に行って購入したという実にうらやましい話もある。

さて、話は戻って「1日200円・・」の話だがこれは、一方では「いいものを買って長く使う」という思想にも相通じるように思う。

現代は概ね「使い捨て」が主流の時代だが、中途半端な機器を繰り返し購入してきた自分の苦い体験から言わせてもらうと、ことオーディオに関しては思い切っていいものを買い、長く使う方が有利だと今となってはハッキリ言える。

どんなに高価なものでも長く使えば使うほど1日あたりのコストは次第に下がっていくわけだし、10年、20年単位で考えると「音質にすぐれた音楽」を長いこと味わえるのでかえって安いものにつく。

問題はテクノロジーの発達で折角の名器が役立たずになる可能性も無きにしも非ずだが、オーディオの世界ではどんなに最新鋭のデジタル機器でもプラス面もあればマイナス面もあるのが常識で往年のトップクラスの機器は時間が経ってもそれなりの存在価値があり決して色褪せることはない。

それに、オーディオ愛好家(=音楽愛好家)が鑑賞している主な対象はクラシックでは名指揮者、名演奏家が活躍した1950年代~1980年代にかけての録音が主流だし、ジャズに至っては1950年代が絶頂期なので、少なくとも録音当時の機器の技術水準以上で聴ければ「良しとすべき」かもしれない。

とまあ、こんなことを書いては見たものの近年はデジタル主流の手軽な音で音楽を聴く層が増えてきているようなので、高価なオーディオ機器なんて場違いの話かもしれない。

音楽愛好家にとって「いい音楽」を「いい音」で聴くことこそ「豊かな人生」を保証するものは他にないのに・・・。


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