「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「スピーカーはアンプに助けられ、アンプはスピーカーに助けられ」

2015年03月10日 | オーディオ談義

先日のこと、同じ「AXIOM80」仲間のKさん(福岡)から、「新しいアンプを導入しましたので聴きに来ませんか」というお誘いがあった。冬は天候不順で雪が降ったりするとクルマでの長距離運転がアウトなので、ずっと家に閉じこもっていたのだが、ようやく春の息吹がそこはかとなく感じられるようになって「よし、行ってみよう」という気になった。

それに真空管アンプづくりの手練れ「Gさん」(福岡)もお見えになるというから、情報交換には願ってもない話。

8日(日)は朝から透き通った青空のもと、見事な快晴でまさにドライブ日和。

「もう歳なんだから、あまり飛ばさないようにね!」という家内の声を背に受けて「そのくらい言われんでも分っとるわい」と内心呟きながら出発したのが8時50分ごろだった。

いつものペースで高速をすべるように縫ってKさん宅へ到着したのは丁度10時20分頃で所要時間は1時間30分。

「いやあ、お久しぶりです」。既にKさんはお目当ての真空管アンプ「50」シングルを鳴らされていた。

「12A → 71A → 45 → 50 → 2A3」と、RCAとウェスタンの暗闘を背景に脈々とつながる古典系出力管の系譜をこよなく愛されているKさんだが、この50アンプの導入でようやくすべて完成の暁となった。 

「音がいい」とされる直熱三極管の両雄として並び称される「WE300B」(アメリカ)と「PX25」(イギリス)には絶対に手を出そうとされないのがKさんのポリシーである。「AXIOM80を鳴らすには、71A~2A3で十分です。」

当日はうっかりしてカメラを忘れたので画像で紹介出来ないのが残念だが、すこぶる大きなアンプである。そもそも「50」自体がPX25(ナス管)並みの大きさだから、この重厚長大さは仕方がないところだろう。

そして、音も見かけどおりだった。惚れ惚れするような屈託のない音が朗々と部屋中に鳴り響く。低音域がやや薄い傾向があるAXIOM80からこれだけ分厚い響きを引き出せればもう満足の一言で、いやあ、恐れ入りました。

「スピーカーはアンプに助けられ、アンプはスピーカーに助けられ」とはN沢さん(福岡)の名言だが、これ以上“しっくり”くる言葉がないほどの名コンビぶり。

いやあ、自分もこういうアンプが欲しいなあ・・。

厚かましくも昼食をご馳走になって午後からは予定どおり、Gさんが合流された。何やら重たそうなアンプを両腕に抱えてのご到来である。

「オヤッ、それは何ですか?」

「つい最近完成した古典管のシングルアンプです。厚さ2ミリの銅板シャーシで作りましたので磁界の不安とは無縁です。ドライバー管、出力管ともに1920年代の同じ古典管を使ってます。

入力トランス、ドライバートランスを組み合わせたトランス結合型です。整流管は“5R4GY”系統と80系統のどちらかを選択できるようにしています。WE300Bも50もピン配列が同じなので6割程度の力なら鳴らせます。

ハム音ノイズには自信があります。どんなに高能率のスピーカーを持ってきても大丈夫です。AXIOM80でどういう音が出るか興味があったので持ってきました。上手く鳴ってくれればオークションにでも出そうかと思ってます。」


こういうチャンスに恵まれるからオーディオ訪問は止められない(笑)。興味津々で聴かせてもらったが、「50」アンプに優るとも劣らないような鳴りっぷりである。

低音域の分厚さでは一歩譲るものの、全体的な音抜けの良さ、スピード感はこちらの方が上かもしれない。音の立ち上がりと立下りがいいので余分な音がまとわりつかない。したがって美しいハーモニーが自然に出来上がる。

一同感嘆の声をあげながらいろんなジャンルをひとしきり試聴して、次に整流管の「球転がし」に移った。切り替えスイッチなしでいろんなタイプの球を差し替えられるのだから遊び心”満点である。

Kさん所有の「WE274B」「シルヴァニア274B」「レイセオンVT244=5U4G」「カミンガム380」「レイセオン80」「アクチュラスのブルーの80」「WE422A」などと有名どころがズラリ(笑)。

緻密なアンプほど真空管の性質を克明に再現するので「球転がし」ほど面白いものはない。真空管愛好家にとっては願ってもない試聴会である。

「やっぱりWE274Bがベストですね。実に自然な佇まいになります。次がカミンガムの380というところでしょうか」と衆議一決。

それにしてもこのアンプ、たまらないほどの魅力的な音を出す。まるで麻薬のような吸引力を持っている。思わず
「このアンプ、ちょっとお借りして試聴させてもらえませんか?」と、口をついて出た。

「いいですよ。」と、Gさんからご快諾を得た。

予定の帰宅時間を早めに切り上げて(Kさん、ゴメン!)、お礼の言葉もそぞろにこのアンプをクルマに積んで飛ぶようにして高速をぶっ飛ばした。帰心矢の如し~(笑)。

おまけに、ものはついでとKさんからシルヴァニアの274Bまで強奪する始末。

まだ日が明るいうちに無事到着してさっそくAXIOM80との結線を終えて試聴に入った。早朝に鉄砲玉のように出かけた亭主がまなじり”を決して帰宅するなり夕食もそっちのけで持ち帰ってきたアンプに没頭するのだから家内もさぞやあきれ返ったことだろう。

「念のために言っておくけどこれは借りてきたアンプだからな。購入したんじゃないからな。」と、念押ししたのは言うまでもない。いつもこの手を使うのだが(笑)。

          


「やっぱり見事な音だ。これなら低音の補強は要らない。」というのが第一印象である。それにきれいに回路を左右対称に作ってあるせいか、セパレーション(音の左右分離)が抜群でまるでモノアンプが2台あるような印象を受けた。少なくとも我が家においてはこれまで「AXIOM80」を鳴らした中ではベストの音と言ってよかろう。

ただしプリアンプ類の選択に迷った。「トランス式アッテネーター」「E80CC・プリアンプ1号機」「E80CC・プリアンプ2号機」といろいろ差し換えてみたが、それぞれに良さがあって甲乙つけ難し。このアンプはややゲインが低いせいか、プリアンプの目盛が通常9時の位置で使っているのに目盛をグンとあげて3時頃になってしまう。

そこで、ふと思い付いたのがDAコンバーターとの直結である。ワディアの「27ixVer3.0」は0~100までのボリュームが付いているが、80前後で使ってやるのが一番安定している。「シンプル・イズ・ベスト」なので試しに繋いでみたところ大概のCDが「70~100」の間で聴けるようでこれは理想的な範囲である。

音自体も悪くはないようだが、早計は禁物。もっと時間をかけて判断してみることにしよう。

また、我が家の整流管の聴き比べでは、やはり借りてきた「シルヴァニアの274B」がベストだった。

「274B」の型番は1本も持ってないのでどうにかして手に入れたいところだが、Kさんからは「整流管だけはオークションで手を出さない方が無難ですよ。中古品のそれこそ寿命が間近の球でもそこそこ音は出ますからウッカリ変なものをつかまされますよ。」と忠告を受けている。したがって、信頼のおける専門店か知人から購入するのがベストのようで、最後はKさんに泣き付いてみよう。

今年の1月早々にJBL375用のホルンを「北国のおじさん」からいただいて、ここ2カ月ばかり専らJBLシステム中心のオーディオ三昧だったが、ようやく「AXIOM80」が名コンビを得て愁眉を開いたようである。

後はKさんと条件面についてじっくり話し合うことにしよう(笑)。


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