前回からの続きです。
自分に限っての話かもしれないが、自分独りでオーディオシステムを試聴する場合と仲間と一緒に試聴するときとでは音質のアラの気付き方が随分違うように思っている。
その理由をつらつら考えてみるのに、前者の場合はつい音楽の方に聴き惚れてしまい音質への関心が薄くなる、その一方、後者の場合は他人と一緒に聴くと音楽に没入することが出来なくて、つい音質中心の聴き方になってしまい、自然と(音質の)アラが目立つというのが原因のようだ。
一般的に自分も含めて他人のシステムを聴くときはアラによく気が付くものの、それに比べて自宅の音はそれほどでもないという事例がよく見受けられるのもそのせいかな(笑)。
したがってシステムのどこかをいじったときは自ずと客観的な評価が出来る機会が増えるわけなのでこういうときのお客さんは大歓迎。
今回もグッドタイミングだった。お見えになったのはおよそ1~2か月間隔で我が家にお見えになるMさん、Oさん、そしてこのたび初めてお見えになったAさん。いずれも大分市内に居住の方々である。
MさんとOさんが前回お見えになったとき以来の我が家のシステムの変更箇所は、プリアンプの真空管を「6DJ8」から「ロング管」へ替えたこと、パワーアンプに古典管のプッシュプルを追加したこと、WE300Bアンプの初段管を「ロング管」へ変えたことなどが挙げられるが実を言うとあまり定かではない。
とにかく、いつもあちこち“いじり回している”ので、最近では自分でも何が何だか分からない状態になりつつある(笑)。
いみじくも今回の試聴にあたって初参加されたAさんがオーディオルームに入られるなり「ワァー」と驚かれて「このシステムの流れはいったいどうなっているんですか?」と首を傾げられるばかり。それはそうでしょうねえ、持ち主でさえもよく分からないのだから・・。
とまあ、これは冗談だがここで一区切りとして自分にも分かりやすいように現在のシステムの全容を整理してみよう。
全体で3系統のシステムになっている。
共通機器 CDトランスポート「dCS ラ・スカラ」 DAコンバーター「ワディア27ixVer3.0」
第一系統 「AXIOM80オリジナル」システム
これが我が家の本命システムだが、プリアンプ1台(出力3系統)に対してパワーアンプ3台(真空管WE300B1951年製、古典管シングル、古典管プッシュプル)をその日の気分で使い分けしている。
第二系統 「AXIOM80復刻版」システム
これはテレビを視聴するときの専用システムでプリアンプ1台(出力2系統)に対してパワーアンプ1台(真空管「VV52Bシングル」を使用している。
第三系統 「JBLとタンノイの変則マルチ3ウェイシステム」
オーケストラなどの重量級の音楽を聴くときはいつもこのシステムに落ち着く。
低音域 → SPユニット・タンノイ「HPD385」 → アッテネーター → 真空管2A3シングルアンプ・1号機
中音域 → JBL375ドライバー → プリアンプ → 真空管2A3シングルアンプ・2号機
高音域 → JBL075ツィーター → プリアンプ → 真空管71Aシングルアンプ
以上のとおりで、両チャンネル併せてSPユニット10個、プリアンプ2台、アッテネーター1台、パワーアンプ7台をそれほど広くもない部屋(6m×7m)に所狭しと並べているのだから初めての方がご覧になってビックリされるのも当然かもしれない。
どうしてこんなブザマなことになったんだろう(笑)。
この日の試聴の順番はまず本命の第一系統のシステムから開始した。
使ったアンプは「古典管シングル」、「WE300Bシングル」、「古典管プッシュプル」の順で試聴してもらった。
結論から言えば総体的に一番好評だったのはWE300Bシングルだった。「古典管シングル」に比べると重心がぐっと下がり、落ち着いた佇まいが大きく評価されたようだ。この辺は古典管をイチオシする自分の評価と違うところが非常に面白い。
正直言うと、WE300Bはやたらに高騰する相場に比べて実力以上に評価されているような気がいつもしているので、その意地っ張り的な先入観が否定的な作用として働いているのかもしれない(笑)。まあ、やはり名管として認識すべきなのだろう。
また、つい最近購入し、評価を大いに期待した「古典管プッシュプル」だったが、冷静に試聴してみると音の透明感は申し分ないがローエンドへの伸びがあと一押しあればという印象を受けた。
結局、お客さんたちの雰囲気によって、敢えて順番付をすればWE300B、古典管プッシュプル、古典管シングルの序列の印象を受けた。この日は「80」仲間たちから一番相性がいいと高評価を受けている「1920年代製の真空管」を使用しなかったことも影響している。実はギリギリの時間まで予約している歯医者に行ってきたせいでエージングの時間がとれなかったのが真相。
なお、この日はいろんCDを試聴してもらったが、次の2枚が大好評だった。
左側は「日本の歌」というタイトルで、ハープとヴァイオリンの協演。ヴァイオリンは有名なウィーンフィルのコンマス(コンサートマスター)のライナー・キュッヘル氏で見事な演奏である。またハープが持つ独特の膨らみ音の再生はシステムのアラを探すのにもってこいの印象を受けた。
右側は例によって「有山麻衣子」さんのソロボーカルで実際にお客さんに聴いていただくと非常に気に入られる方が多いのだが、これは残念なことに廃盤中。
Aさんがこの2枚のCD番号をメモされていたが、実際にシステムを試聴してもらって、そのときにかけたCDを購入したいと所望されるのは、そのシステムが良く鳴っているバロメーターみたいなものだから非常に歓迎すべきことではある。
最終的にこの日は2時間半ほど試聴していただいたが、最後のお帰りの際に洩らされたOさんの言葉「これまで聴かせてもらった中では今日の音がベストですよ。」には非常にうれしい限り。
我が家の音は「五里霧中」の中を着々と前進しているのだ(笑)。