前回からの続きです。
「百聞は一見に如かず」という言葉がある。中国の「漢書」に出てくるほどの由緒ある諺で、周知のとおり「何度も聞くより一度実際に自分の目で見る方が優る」(広辞苑)という意味だが、これをもじって「百見は一聴に如かず」という言葉が今回(13日)の試聴会のときにふと思い浮かんだ。
以下、その理由を説明してみよう。
このブログを始めてから8年余が経過した。ただ継続だけが取り柄のブログだが、おかげさまでアクセス数が順調に伸びて、この1週間で1日当たりの訪問者数が平均「800IP以上」、閲覧数が「2000PV以上」と、開設以来最高の盛況ぶり。目標の「1日当たり訪問者数1000IP」の大台もどうやら視野に入ってきつつある。
おそらく読者の大半の方々は全国津々浦々のオーディオマニアだと思うが、いつも(聴覚を使うことなく)ただ視覚だけを使って内容をご覧になっている。
しかし、他のブログならいざ知らず、オーディオのブログなんだからホントは実際に我が家の音を一度でも試聴していただければ、(音のいい悪いは別にして)もっと内容の真意が伝わりやすいのにといつも切歯扼腕しているのが偽らざるところ。
何といっても「音楽&オーディオ」は現実に“聴いて何ぼ”の世界であり、音楽や音を文章で表現するのは限界があることをいつも痛感している。
別の言い方をすれば「この人、自慢めいたことを交えて臆面もなく、さも自宅の音がいかにも“いい音”のように書き連ねているが、はたしてホントかいな?」と半信半疑の方が多いのではなかろうか(笑)。
そもそも電気回路を通して出す音にはまだ未解明の事柄が多いのでシステムの編成に当たっては多大のノウハウを要する。まず公式どおりにはいかない。したがって、どんなに偉そうなことを言ったり、書いたりしていても「自宅の音がサッパリ」では、いっさいの説得力を失うのはマニアならご存知のとおり。何といってもオーディオは理屈よりも実際に出てくる音が勝負ですからねえ(笑)。
そこで「百見は一聴に如かず」という冒頭の言葉の登場となる。
実は今回の試聴会で格好の実例が生じたのである。
13日(日)の午後に福岡から我が家にお見えになったお客さんたちの第一声は「想像はしていましたがAXIOM80がこれほどの音とは思いませんでした。実際に聴いてみないと分からないものですねえ!」
そうでしょう!!
しかし、正直言ってうれしかった(笑)。メチャ気難しいユニットでうまく鳴らすのに随分手こずったが、これまでの苦労(?)が一気に吹き飛んだ感じ。いろいろな欠点、たとえば音響空間のスケール感の物足りなさなどが指摘されるユニットだが、ことボーカルやヴァイオロン・ソロなどについては独特の雰囲気感を醸し出すことをご理解していただけたようだ。
ま、外交辞令も幾分あるかもしれない。GさんとNさんはこのブログの愛読者とのことなので、これをご覧になって「真意ではない」と思ったら遠慮なく連絡をしてくださいな。すぐに訂正・削除しま~す(笑)。
さて、3名の方々ともにジャズ・ファンだったので最初にかけたのは「エラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロング」。システムの方は「WE300Bアンプ(モノ×2台)+AXIOM80(オリジナル・エンクロージャー)」だった。ふり返ってみると、「ジャズの真髄」ともいうべきこの盤が本日の試聴会の大宗を決めたような気がしている。
ほかのCDについては持参されたものを手当たり次第にかけまくったが、途中から「JBL3ウェイ・マルチ・システム」に切り替えたところ、“どなたか”から「やはりこちらの方がメイン・システムですね。」との声が上がった。
ごもっともな指摘だと思う。大編成のオーケストラやどんなジャンルにも幅広く対応できるという面からするとこちらのシステムの方が上だろう。ま、それだけうまく鳴っているということもある。
このJBLシステムは「AXIOM80」以上に苦労したが、ようやく陽の目を見てどうやら人に聴かせられるような音になったようだ。たかが、コンデンサー“一発(10μF)”を「375」に噛ませただけでこんなに変わるのだからオーディオは怖い。
「これだけの真空管アンプを使っているのにいっさいノイズが出ないのには感心しました」。
そういえば、3系統のシステムでプリ、パワーなど合わせて9台の真空管アンプを使っているが、うち8台は奈良のMさんの手になるもので、日頃聴いているときは(ノイズが出ないのは)当たり前だと思っていたが、こういうご意見を賜ると改めてその“手練れ”ぶりに感謝です!
1952年製(オールド)と1988年製のWE300B真空管、そしてPX25真空管の「ナス管」と「ドーム管」の聴き比べなどをしながら、「“完熟”と“もぎ立て”の違い」などワイワイガヤガヤと“かまびすしく”3時間ほどがあっという間に過ぎた。
「こういう音を聴くとオーディオ熱に再び火が付きそうです」とのありがたい言葉を残して帰途につかれた皆さん。
翌日になってNさんからのご連絡によると、雨のため濃霧となり高速道が不通になって一般道を帰られたとのこと。随分夜遅くなったようだが、何よりご無事でよかった~。
オーディオの最大の楽しみ、それは“仲間との語らい”だと、しみじみ思った試聴会だった。