「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

音楽談義~小泉流「クラシック音楽に親しむノウハウ」~

2010年03月22日 | 音楽談義

これまでの体験から推し測ると「クラシック音楽大好き人間」はこの世でホンの一握り。したがって有名人でクラシックが好きという噂を聞くだけで随分と親近感が増す。

元総理の福田康夫〔自民党)さんはベルリオーズの「幻想交響曲」が好みで自宅にはタンノイの高級スピーカーが設置されているという話を漏れ聞く。ヤナーチェクの音楽もお好きというから相当の通である。

しかし、在任中、低支持率と不安定な政局に苦しみ、クラシックをゆっくりと聴く気分にはなれなかっただろうからお気の毒。

クラシックを心から楽しむのであれば鑑賞者の気持ちの中に
「ゆとりと静謐(せいひつ)感」が必要だが、今ごろはきっとクラシックを満喫されていることだろう

それにしてもクラシック好きの総理というのはホントに珍しい。そういえば、元総理の小泉さんもそうだった。

昨年8月の総選挙で「小沢流指南」のもと民主党大勝利の影響で一時、影が薄かったが、秘書が3人も逮捕されてしまい不動産屋と政治屋の兼務がすっかりバレてしまった小沢さんの(イメージ的な)凋落で再び息を吹き返したみたい。

先日のBSハイビジョンで若手の政治家が二人登場して討論をやっていた。民主党の「小川 淳也」氏(38歳:香川県)と自民党の「橘 慶一郎」氏〔49歳:富山県)という次代を担うホープ。

二人とも初々しくて元気ハツラツ、しかも謙虚でたいへんいいイメージを持ったが、両者ともに歴代の総理の中で評価できる人として小泉さんを挙げていたのに注目した。小川さん曰く、自分の言葉で国民と対話できる能力が評価出来ると言ってたが民主党員なのに勇気ある発言。

音楽好きの小泉さんらしく、以前、郵政大臣在任中に民間のFM局を数多く認可したことでも知られる。

さて、小泉さんが総理在任中からクラシック好きとは承知していたもののどの程度かは知る由もなかったが、同氏の著作
「音楽遍歴」(2008.5.22、日本経済新聞社刊)見かけたので「どうせそれほどでもなかろう」と思いながらざっと目を通してみた。

                            

ところが、あにはからんやこれは相当の通、それも自分よりもずっとレベルが高そうでほとほと恐れ入ってしまった。

また、本書は「音楽遍歴」と銘打ってはいるが、むしろ自分の音楽体験をもとにして一般の人がクラシックに親しむためのノウハウを主眼として書かれた趣がある。

いわば「これからクラシックに親しもうという人やもっと深くのめり込みたい人」に向けて書かれた指南書みたいなもので、随所にそういった表現もあり、それもかなり具体的に書かれていて随分参考になること請け合い。

以下、
「小泉流のクラシック音楽に親しむためのノウハウ」
をいくつかポイントをしぼってピックアップしてみた。

人生と切り離せないほどの音楽大好き人間と自負している。12歳のときからヴァイオリンを始め、クラシック音楽とは優に半世紀以上の付き合い。

ヴァイオリン協奏曲から音楽の道に入った。バッハ、ブラームス、パガニーニ、モーツァルト、シベリウス、エルガーなどが好きになった。特にエルガーは全作品が大好き。

クラシックはポピュラー音楽や演歌とは違って最初に聴いて「即いい」というのはそれほどない。何回も聴かないと良さが分からない。たった一小節でも良くなってきた後、何回も聴くと、全部良くなってしまう。ブラームス(ヴァイオリン協奏曲)がそうだった。(※まったく同感)

音楽の聴きかたはBGMから入っている。ご飯を食べているときでも新聞を読んでいるときでも知らない曲を四六時中流している。そして、これいいなと思ったら本格的に腰をすえて聴く。

マーラーとブルックナー、彼らの良さが分かったのは40歳過ぎてから。ある日のことクルマに乗ってFMラジオをかけてもらい「これ何だ」と訊くと「マーラーの何番です」「ブルックナーの何番です」となった。いいと思った曲名はすぐメモをしてレコード店に買いに行く。最初は特定の部分しか良さが分からなかったが、段々聴くうちに全部がいいと思えるようになった。

オーディオ装置には全然こだわらない。生演奏に勝るものはないから。部屋全体の音響効果を考える人もいるけど私は普通でいいと思う。(※この部分にはちょっと承服しかねる!)

大好きなオペラとの出会いはNHKのテレビ放映でジョルダーニ作曲の「アンドレア・シェニエ」だった。メロディーの美しさ、詞の素晴らしさに感動した。またテノール歌手のマリオ・デル・モナコの人間業とは思えない美声にびっくり。こういう歌手は50年、100年に1人だろう。いまだにデル・モナコ級は出ていない。

大人の初心者向けのオペラを紹介する。
  ヴェルディ     「椿姫」「イル・トロヴァトーレ」「アイーダ」
  プッチーニ     「ラ・ボエーム」「トゥーランドット」
  ワーグナー     「ローエングリン」「タンホイザー」
  モーツァルト    「魔笛」
「椿姫」「イル・トロヴァトーレ」「アンドレア・シェニエ」「トゥーランドット」の四作品を観てオペラの良さがわからない、あるいは感動しないという人はもうオペラを観なくていい。

以上、ほんのさわりの部分の抜粋だがプロの音楽家を目指すのならいざ知らず、趣味としてクラシックを楽しむのであればこうした小泉さん流のアプローチはたいへん合理的ではないかと思える。

なお、不世出の名歌手デル・モナコの伝説は知っていたが本書を読んだ後で無性に聴きたくなり早速HMVのネットでDVD「アンドレア・シェニエ」
を購入してしまった。
 


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