冬が近づき、風を冷く感じる季節になると、読みたくなる本があります。
以前もこの本について、書いたことがあるのですが、読み返すたびに、胸に清冽な風が吹き渡る気持ちに。
動物写真家、探検家の星野 道夫さんがアラスカでの暮らしを綴った「旅をする木」
星野さんは、アラスカの極北のエキスモー村の空撮写真を見て、強烈にその景色に魅かれ、ここに行こう、と自分の人生を決めた人。魂を揺さぶられる"もの"に出逢って、それを実行した人。
私の持っている本には、1枚の写真も載っていないのですが、星野さんの文章を読むだけで、アラスカの海と平原が、目の前に広がってくるようです。
私の大好きな章「赤い絶壁の入り江」の一文をご紹介すると・・・・・
「私たちはやがて入江のもっとも奥にたどり着き、錨をおろしました。船のエンジンを切ると、今度は本当の静寂に包まれ、今まで気づかなかった音が少しずつ聞こえてきました。
ピロロロロ・・・・とハクトウワシの小鳥のようなさえずりです。けれども、あたりの森を見回しても、姿が見えません。
ポチャン・・・と一匹の鮭が、海面から30センチ飛び上がりました。」 by星野 道夫 『旅をする木』
・・・・・ね、目の前にアラスカの静けさと広さが、広がってくるでしょう???
星野道夫さんは、42歳の若さで、ヒグマに襲われて急逝されました。
長年アラスカに住み、自然を愛し、誰よりも野生動物のことを知り尽くした星野さんが、なぜ熊に襲われたのか???と、疑問に思っていたら、テレビ局のオーナーが餌付けしたヒグマだったとか。
真偽のほどはわかりませんが、人間が自然の営みに気まぐれに介入したことの結果であれば、こんな悔しいことは無いですね。
私は、ミニマリストにはとてもなれそうにないどころか、断捨離もできず、あれも欲しい、これも欲しいと物欲いっぱいの人間ではありますが・・・・・・この本を読むと、100年後の地球のために、いまの自分に何が出来るかな???と、冬の夜長に、ふと考えることがあります。