「そこ、空いてますか?」
上越新幹線Maxとき304号東京行き。
声をかけてきたのは30代後半体育系イケメン。
ラッキー♪
好みのタイプだわ。
「どうぞ」
私は座席に置いていたバッグを膝上に移動した。
「どうも」
低く響く声も好みだわ。
ラフな格好をしているけれど・・・。
「あの~」私は思い切って話しかけた。
「はい」(う~ん、いい声♪)
「イキナリこんな事聞いてゴメンナサイ」
「なんですか?」
「どうして朝からここへ?」
「・・・・・」
男は一時黙って私を覗き込んだ。
そして爽やかな笑顔で言った。
「貴女と同じですね」
「そうなんだぁ~。じゃ、途中まで御一緒できますね」
「どうやら、もっと多くの仲間が集まるようですよ」
なるほど・・・
この車両だけ特に込みだしたようだ。
「でも、この座席が特等席です」
「私達、とてもラッキーですね」
とき304号は上毛高原駅に着いた。
そして数人の人達が乗った。
その中の一人が車両に入った瞬間!
声無き声がアチコチで上がった。
いかにも能天気そうな男だ。
もちろん、何も気づいていない。
小柄な能天気男は席に座った。
コンビニオニギリを一つ出した。
デイパックからお茶水筒を出した。
少しづつ、口に入れる。
「あぁ・・・溶けるようだわ」
「暖かい・・・」
能天気男は最初に座った男女の席に重なった。
そして、ゆっくりオニギリを食べている。
集まった存在達が消えていくのもわからないまま。
能天気男は知らない。
何の能力も無い。
だが、能天気故に「空き」があった。
額の真ん中と頭頂部に「空き」があった。
そこから光と響く声が流れていた。
ガーティガーティパラガーティ
パラサンガーティボディスヴァーハ
(本館は 「氣の空間・氣功療法院」