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伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
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志摩半島に化石を訪ねて

2010年08月17日 | 伊勢志摩~奥伊勢のフィールド・ワーク

鳥羽市安楽島海岸の化石

貝化石

 かつて、鳥羽市の安楽島海岸から恐竜の骨化石が発見され、その後新種ゆえ「鳥羽竜」と名づけられ、マニアや子供達にちょっとした化石熱を呼び起こし、恐竜へのロマンをかきたてた。現地には案内板とともにレプリカが作られ、海岸の発掘現場へ降りる階段が整備されている。しかし、当時、現物が三重県教育委員会に持ち込まれた為か、鳥羽の町興しや化石イベントなども、一過性のブームに終わってしまった感が否めない。

 安楽島海岸には、中生代ジュラ紀から白亜紀にかけての地層が、古生代の地層とともに付加体コンプレックス(かつて、サンドウィッチ構造と呼んでいた。現在はこのような層相をメランジュと呼んでいる)を成して露出しており、江戸時代から「介化石」(貝化石)の産地として著名な場所であった。現在も、海岸の漂礫や海食崖・海食台を成す地層の中から、いろんな貝化石とともに、シダ植物や石炭、貝殻石灰岩などが採集できる。

 

化石採集は地球の歴史へのアプローチ

シダ植物  筆者は、「鳥羽竜」の化石骨が発見される以前に、「志摩半島に化石を訪ねて」と言うガイド・ブックを書き、志摩マリンランドさんから発行して頂いたことがある。その冊子の中で、安楽島海岸(二地浦)産の三角貝などを紹介させて頂いた。現地にあった石炭試掘跡辺りに、当時は珪化木とされていた、炭化した幹木のようなものが残存しているのは熟知していが、まさに、それが後年発見の恐竜の化石骨の一つだったと言う訳である。

 地元鳥羽では、地球科学への造詣が加速し、学校教育にも取り入れられたと聞く。私たちの住むこの大地の成り立ちを知るには、野外でじかに地層や化石に接する事が大切であり、教科書や書物だけでなく、私たちの居住地を取り巻く自然環境を理解しながら、山や丘、海岸をつくっている地質(岩石や地層)に接し、化石を調べる事により、地球の歴史(地史)を読み取る事が出来れば、素晴らしい学習となるに違いない。

 

化石について

 化石は、大昔(完新世以前の地質時代。少なくとも過去1万年前より古い時代)の生物(古生物)の体や生活の痕跡が地層(堆積岩や堆積物、永久凍土、氷床など)の中に残存しているものを言う。体と言っても、氷漬けのマンモスのような特殊なケース以外は、一般に残っているのは硬い部分(例えば骨、爪、歯、角、貝殻、木の幹など)だけで、このようなものは体化石と言うが、他に体の跡や木の葉の跡などが押印のように付いただけのものもあって、印象化石と呼ぶ。さらに、巣穴や這い跡、足跡、卵、排泄物(糞)、分泌物(樹脂)など、古生物の生活の結果生じた痕跡の残存物もあり、生痕(の化石)として扱う。

 

示準化石と示相化石

 化石には、その化石を含む地層の堆積した地質時代がどれぐらい古いのかという、過去の時代が相対的に判る、三葉虫やアンモナイト、ナウマンゾウのような標準となるものがあって、示準化石と呼んでいる。又、その化石を含む地層が、かつてどのような自然環境(古環境)に堆積したかという、当時の堆積環境を知る手がかりとなるタイプの化石もあり、例えば珊瑚や牡蠣貝のようなものを、示相化石と称する。

 示準化石の決め手は、生存期間が限られ、世界的に広く分布する事であり、示相化石の決め手は、現在生存している近縁種との比較が出来るなど、地質時代を通しての生存期間が長く、しかも限られた環境にだけ生息していた古生物である事と言える。中には示準化石であり、示相化石であるものもある。

 化石の研究は、古生物と現生種とのつながりの類推から、生物進化の様子を知る事ができる。

 

志摩半島の化石の産地

 志摩半島には、古生代から新生代にかけての各時代の地層が分布しており(但し、第三紀層のみ欠如)、各地に化石の産地がある。このうち、現在も採集可能な著名な場所のみ記すと、

  • 鳥羽市安楽島町二地浦~砥谷海岸
    (主に中生代ジュラ紀・後期~白亜紀・前期)
貝化石(二枚貝、巻貝、他)、羊歯植物、その他
    • 鳥羽市松尾町青峰山、登山道の中腹の崖
      (主に中生代ジュラ紀・後期~白亜紀・前期)
    貝化石、アンモナイト、羊歯植物、その他
      • 志摩市磯部町広の谷
        (中生代ジュラ紀・後期。鳥ノ巣石灰岩、及び泥岩中)
      珊瑚、層孔虫、パイプウニ、その他
        • 志摩市磯部町天岩戸付近
          (古生代二畳紀頃の石灰岩中)
        ウミユリ、紡錘虫、その他
          • 志摩市磯部町木場~迫間・付近一帯の地層
            (新生代第四紀・更新世)
          貝化石、有孔虫、亜炭等

              以上である。

               

              画像は上から

              1. 貝化石(鳥羽市安楽島町二地浦 産、写真左右約10㎝)
              2. シダ植物(鳥羽市安楽島町二地浦 産、上下約 8㎝)
              3. アンモナイト(鳥羽市松尾町青峰山 産、径約4㎝)

               

               この他、近隣の伊勢市小俣町大仏山公園内に、新第三紀層の露頭があり、メタセコイアや各種広葉樹など、木の葉の化石、並びに亜炭、コハク(生痕)が産し、採集できないこともない。

              青峰山産 アンモナイト(左右約4㎝)

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