アバウトなつぶやき

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プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画

2018年08月16日 | かんしょう
お盆といえば大人にとっても夏休みです!
毎年この時期、一日は仕事や家事を休んでふらりと出かけています。今年は大阪の国立国際美術館で開催中のプーシキン美術館展を観に行ってきました。

車を使って遠出をする私にとって大阪はなかなかハードルが高い場所。おまけにプーシキン美術館の所蔵に特別な関心があるわけでもなかったので、当初は見送ろうと思っていた展覧会です。
しかし、ニコニコ生放送で東京会場を使った解説をしていたのを見てしまい、どうにもウズウズしていました。
近鉄特急を使えば快適に行けるのはわかっていましたが、今後に繋げるためには安価な方法を検証しておきたかったのと、場所がミナミでなくキタなのも考慮してJRを使って行ってみる事にしました。柘植から乗ると駐車場に困らないんだよね。

さて、10時頃には会場に到着しましたがやはり人気のある展覧会です。大阪なのとお盆なのも関係してか、なかなかの盛況ぶり。東京に比べればかなり空いてるのでしょうが、絵を目にするのに時間がかかる時点で私にとっては人多めです。





 プーシキン美術館展は何年かに一度のペースで巡回展が開催されているイメージです。所蔵品が多いので、当然といえば当然かも知れません。
 今回、目当ての絵画があったわけではありませんが行けば必ず良い作品に出会える展覧会であることは分かっていましたので、楽しみではあったのです。

 注目の絵画はモネの〈草上の昼食〉ですね。制作過程やそのエピソード、習作、マネの〈草上の昼食〉との比較なども交えて紹介するといった丁寧な解説が入っています。
 日本人に人気の睡蓮シリーズより以前、若かりし頃のモネを知るのにとても良い位置づけの絵画です。とても描き込まれた意欲作であることが伝わるし、当時の風俗も良く分かる、見応えのある絵です。
 風景画が一つのジャンルとして確立していく過程や当時のフランスの様子がよく分かる絵画の多いこと、「廃墟のヴェルネ」や「絵画の詩人ロベール」など通り名のある画家については特徴的な絵が出展されていること、モネの他にも画家の創作意欲の高まっている時期に描かれたと思われる良い作品があることなど、展覧会のまとまりや構成がとても良かったと思いました。
 特に今回は「この画家の他の作品に比べてとても良い!」と感じた作品がいくつもありました。私が個人的に気に入ったのはヴラマンク〈オーヴェールの風景〉、セザンヌ〈サント=ヴィクトワール山の平野、ヴァルクロからの眺め〉、ゴーガン(マタモエ、孔雀のいる風景〉です。
 ヴラマンクについては画面が明るい清々しさのある絵だったので、彼が自然を好んで描いているのがよく伝わりました。少し前に「なんで自然を愛してるって言いながらこんな暗い色調で描くんだ」なんて思ったので、彼の作風のままに明るさを残している作品として、その疑問を払拭してくれたのです。
 また、セザンヌの作品にも似た印象を持ちました。
 作風が違うというのではないけれど、のびのびとした自然の様子と豊かな色彩が私好みで、他の彼の作品よりずっと好きだと思いました。
 そして今回、私が一番印象的だったのはゴーギャン(ゴーガン)です。
 ゴーギャンは個性が強いので、今までその画面構成の方にばかり目を奪われていましたが、この作品の色彩の美しさには衝撃を受けました。
 印刷物と実際の絵画では色が全く違うというのはよくあることだし、観た日の気分というのもあるのでしょうが、とにかくこの絵を観て「ゴーギャンを愛するが多い理由が今日、初めて理解できた!」と思ったのです。
 もちろん、マタモエ=死=文明化された自己の死、というテーマも訴える力が強いです。しかし私にはそれ以上に孔雀の羽の緑や藍を帯びた深い色合いだとか明るい大地のオレンジだとか熱い空気を感じる色の対比だとかが直接的に私を魅了しました。正直、初めてゴーギャンの絵を好きと思ったかも知れません。

 企画展に満足した後はもちろんコレクション展も観てきたのですが、これもまた見応えがあって面白かったです。私が気になってる現代作家さんの作品が1点ずつぽつりぽつりと何人も展示してあり「粒ぞろいですなぁ」と心の中で呟いてきました。
 国立国際美術館には初めて行ったのですが、コレクション展にはテーマ別になってはいるけれど順路は特に記されておらず自由な移動が出来る空間になっていました。あれ、気持ちいいな 

 国立国際美術館を出た後は、来週から月末まで休みに入る大阪市立東洋陶磁美術館にも寄りました。
 展示方法にとても工夫がされているとのことで感心させて頂いたのですが、「国宝展で感動した、油滴天目をもう一度この目に!」と意気込んでいったらなんか見え方が違って「……?」となってしまいました。
 自然光に近い光で観ることが一番良いという説明も分かるのです。でも国立博物館で観た天目茶碗はライトの光を受けていたからか青みを帯びて煌めいていたのですよ。そして私はその姿に見惚れたのですよ。
 どうすりゃいいんだ、この気持ちは。
 心のどこかで「自然光よりも人工の光で見た方が綺麗なものって世の中にはあるじゃん?ダイヤモンドみたいな宝石とかさー、この茶碗がそうじゃないって決めつけちゃって良いの?」と思ってます、すみません。
 まあ、青磁や白磁に私の好きなものがたくさんあって目の保養になったのは間違いないので良しとするかぁ。