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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】リルケ「豹」

2015年12月04日 | 詩歌
            パリ植物園にて

 通り過ぎる格子のために、
 疲れた豹の眼には もう何も見えない
 彼には無数の格子があるようで
 その背後に世界はないかと思われる

 このうえなく小さい輪をえがいてまわる
 豹のしなやかな 剛(かた)い足なみの 忍びゆく歩みは
 そこに痺れて大きな意志が立っている
 一つの中心を取り巻く力の舞踏のようだ

 ただ 時おり瞳(ひとみ)の帳(とばり)が音もなく
 あがると--そのとき影像は入って
 四肢のはりつめた静けさを通り
 心の中で消えてゆく

 Der Panther

 Sein Blick ist vom Vorübergehn der Stäbe
 so müd geworden, daß er nichts mehr hält.
 Ihm ist, als ob es tausend Stäbe gäbe
 und hinter tausend Stäben keine Welt.

 Der weiche Gang geschmeidig starker Schritte,
 der sich im allerkleinsten Kreise dreht,
 ist wie ein Tanz von Kraft um eine Mitte,
 in der betäubt ein großer Wille steht.

 Nur manchmal schiebt der Vorhang der Pupille
 sich lautlos auf -. Dann geht ein Bild hinein,
 geht durch der Glieder angespannte Stille -
 und hört im Herzen auf zu sein.

□ライナー・マリア・リルケ(富士川英郎・訳)「豹」(『リルケ詩集』(新潮文庫、1963))
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 【参考】
【詩歌】リルケ「秋の日」
【詩歌】リルケ「秋」
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【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている

2015年12月04日 | ●佐藤優
 (1)11月13日夜(日本時間14日未明)、パリで同時多発テロが発生した。これまでに132人の死亡が明らかになった。負傷者の中には重体の者もいるから、死者は今後増加すると見られる。
 今回の事件の基本構造は、今年1月7~9日、パリで発生した同時多発テロ事件と同じだ。

 (2)イスラム教原理主義過激派は、アッラー(神)は一つなので、それに対応して地上においてもたった一つのシャリーア(イスラム法)によって統治され、全世界を単一のカリフ帝国(イスラム帝国)が支配すべきだと考える。この目的を達成するためには暴力やテロに訴えることも躊躇しない・・・・というのが「イスラム国」(IS)の特徴だ。
 1月の事件でも11月13日の事件でも、フランスがテロとの戦いから手を引くことを「イスラム国」は要求している。
 ただし、今回は「イスラム国」の手口が変化している。1月のときのようなフランス社会に不満を持っている移民ではなく、本格的な戦闘訓練を受けたプロが加わっている。恐らく、シリアかイラクの「イスラム国」支配地域で本格的な戦闘を経験した後、ヨーロッパに戻り、「イスラム国」からのテロ指令を待っていた秘密攻撃要員(インテリジェンスの業界用語でいう「スリーパー“眠っている人”」)が中核になっている。

 (3)10月末から、「イスラム国」を攻撃する国家や武装集団に対する3つの出来事があった。いずれも相互に関連していると見られる。
  (a)10月31日、シナイ半島でロシア民間航空機が墜落(乗客乗員224人が死亡)。
  (b)11月12日、「イスラム国」と敵対するヒズボラ(イスラム教シーア派組織)が拠点とするベイルート(レバノンの首都)で連続爆発事件(43人死亡)。
  (c)11月13日、パリで連続テロ事件。

 (4)<フランスのオランド大統領は14日、パリの大統領府で閣僚らを緊急招集して国防会議を主宰後、国民向けにテレビ演説し、同時多発テロについてイスラム過激派組織「イスラム国」が実行したと断定し、報復の意思を示した。
 オランド氏は「国外で用意周到に準備され、フランス国内の共犯者とともに実行された戦争行為であり、極めて野蛮な行為だ」と非難した。
 その上で「恥知らずな攻撃を受けたフランスは『イスラム国』の蛮行と無慈悲な戦いを決行する。テロの脅威に同様にさらされている同盟国とともに、国内であれ国外であれ、あらゆる手段を駆使して戦う」と報復に言及した。
 また「3日間を国民服喪の日とする」と述べ、犠牲者らに哀悼の意を表明した>【2015年11月14日付け「共同通信」】
 オランド大統領が述べる「あらゆる手段」のうち、まず採られたのがロシアとの軍事協力だ。17日、プーチン・露大統領はロシア軍にフランス軍との協力を指示した。
 同日、ロシア空軍はラッカを空爆し、海軍はシリア北部アレッポとイドリブに向け、地中海上の巡洋艦から巡航ミサイルを発射した。
 フランスはロシアとの連携を強めて、シリアとイラクの「イスラム国」支配地域に対する空爆を強化することになる。これに対して、「イスラム国」が更なるテロをフランスで引き起こす可能性も高まる。

□佐藤優「「スリーパー」はテロの指令を待っている ~佐藤優の人間観察 第137回~」(「週刊現代」2015年12月12日号)
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 【参考:中東】
【堤未果】最も儲けるのは大国の産軍複合体 ~対テロ戦争の拡大~
【中東】フランスの「政権転覆」工作が生んだ難民とテロ ~シリア~
【中東】米国の「政権転覆」工作が生んだ難民 ~シリア~
【中東】「イスラム国」打倒か「アサド政権打倒」か ~フランスのジレンマ~
【欧州】難民流入急増で揺れる欧州の世論と基本理念
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【中東】軍事的な解決策しか発想できない米国 ~また同じ失敗~
【中東】日本人が目で見た「イスラム国」の実態
【堤未果】「イスラム国」掃討と膨れあがる米の軍事費 ~いつか来た道~
【安保】「人質救出作戦」は「バカ派」の妄想 ~米軍ですら失敗~
【佐藤優】「イスラム国」は今後どうなるか ~イスラム国との「新・戦争論」(2)~
【佐藤優】「イスラム国」は今後どうなるか ~イスラム国との「新・戦争論」(1)~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【中東】安倍政権の「大失態」 ~「イスラム国」日本人人質事件~
【中東】【本】『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』
【中東】に敵をつくった安倍政権 ~二つの愚策~
【中東】なぜ「イスラム国」がはびこったのか
【中東】崩壊の抑止というシンポ ~「イスラム国」どこから来たか~
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
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【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
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【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
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