語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【中東】【本】『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』

2015年02月08日 | 社会
 (1)<著者は、対テロファイナンスの専門家で、さまざまな資料を提示してイスラム国が単なる過激派集団ではなく、明確に「近代国家の創立」を目指していることを明らかにします。多頭型の代理戦争の間隙を突き、経済的自立も志向し、さらにさまざまなテクノロジーを駆使して国家を創ろうとしている。池上彰氏は解説で、「彼らの『近代性と現実主義』が成功してきた理由と指摘します。さまつな報道では分からない底流を読み解きます。訳は名手、村井章子さん。>【注】

 (2)本書は、エコノミストによる「イスラム国」の分析だ。これを読むと、
  (a)なぜ「イスラム国」ができたか。あるいは、できつつあるか。
  (b)「イスラム国」が他の武装勢力とどう違うか。
  (c)英米の対策が、いかに見当違いであるか。
といったことがわかる。
 読みやすい文章だし、値だんも手ごろだ。1,350円+税。

 (3)「イスラム国」が日本人にショックを与える残虐、残酷については、実はその敵であるシーア政権(ロシアが支援するシリアや米国の庇護下にあるイラク)の民兵らも同じことをやっている、と本書は指摘する。それが中東なのだ。あまつさえ、米軍も殊に収容所で拷問の限りを尽くし、さればこそ収容所は武装勢力の「養成所」となった(本書の指摘)。
 さらに本書は言及する。現代ヨーロッパでも似たことが行われている。1990年代のコソボでは、民兵が子どもを斬首し、親の前で、その頭をサッカーボールとして蹴って遊んだ。当時はインターネットがまだ普及していなくて、今ほど知られなかっただけに過ぎない残虐ぶりだ。

 【注】宮野源太郎(丸善・ジュンク堂書店営業本部)「さまつな報道では分からないイスラム国成功の理由 ~目利きのお気に入り~」(「週刊ダイヤモンド」2015年2月14日号)

□ロレッタ・ナポリオーニ(村上章子・訳/池上彰・解説)『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』(文藝春秋社、2015)
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 【参考】
【中東】に敵をつくった安倍政権 ~二つの愚策~
【中東】なぜ「イスラム国」がはびこったのか
【中東】崩壊の抑止というシンポ ~「イスラム国」どこから来たか~
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~

   


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