語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【中東】なぜ「イスラム国」がはびこったのか

2015年02月07日 | 社会
 (1)なぜ「イスラム国」がはびこったのか。
 「イスラム国」は、現在こそラッカ(シリア北部)に拠点を置くが、バグダディ指導者はイラク出身だ。側近二人も、もともとは旧フセイン政権の軍人だ。
 「イスラム国」構成員は、インタビューにおいて「われわれの存在は米軍の刑務所なしにはあり得なかった」と語っている。バグダディ自身、米軍管理下にあったアッカ収容所(イラク南部バスラ)に拘束され、そこで過激思想を持つようになった、とされる。
 イラクを占領した米兵は、テロ掃討作戦の名目で、地域の男性、ときには女性や未成年まで、テロに関与した証拠もなく拘束した。収容所では全裸にして殴る蹴るの暴行、電気ショックや性的虐待などが繰り返された。米軍への怒りゆえ「過激派の養成所」のようになった。

 (2)フセイン政権崩壊後に米国の後ろ盾で発足したイラク政府の罪も大きい。
  (a)旧政権の軍人や役人らを公職から追放。
    →これらの層が後に「イスラム国」に合流している。
  (b)イスラム教シーア派至上主義者が主導する政府によって、スンニー派を迫害。
    →これこそ、兵力2万~3万人程度の「イスラム国」がイラクでも勢力を拡大した原因だ。

 (3)2005年以降、イラク治安部隊やシーア派民兵は、スンニー派というだけで人々を数万人規模で拘束した。
 中には、電気ドリルで体中にアナを開け、そこに酸を流し込むなどのすさまじい拷問の末、殺害された者も多い。
 首を切断するなどの残虐行為は、「イスラム国」の「専売特許」ではなく、シーア派民兵もさんざんやってきた。
 昨年末、「アムネスティ・インターナショナル」がその実態を報告、責任追及を求めたが、国際社会の反応は非常に鈍い。
 1月にも、ディヤラ州(イラク中部)の村をイラク政府シンパの民兵が襲い、72人を殺害している。
 
 (4)イラク西部では、2013年末、非暴力の抗議活動を政府が武力で弾圧。
 以来、現在に至るまでテロ掃討の名目で、ファルージャやラマディなどの都市へ空爆や砲撃を実施し、数十万人が避難民となっている。
 これらの地域の住民にとっては、イラク政府こそ最大の敵だ。本音では「イスラム国」を忌み嫌いながらも、「敵の敵は味方」と手を組まざるを得ない状況にある。

□志葉玲(フリージャーナリスト)「シーア派による迫害が背景」(神戸新聞 2015年2月3日)
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 【参考】
【中東】崩壊の抑止というシンポ ~「イスラム国」どこから来たか~
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
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【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
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