語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~

2014年05月01日 | 社会
 (1)STAP細胞騒動が続き、小保方晴子氏、共同研究者、理化学研究所のすべてに対して厳しい批判が浴びせられている。
 しかし、その陰で官僚が「利権」を拡大すべく動いていることを報じるものはない。

 (2)「特定国立研究開発法人」という新しい制度を作るための法案の国会提出が先延ばしになっている。
 この制度で認められる「特定国立研究開発法人」に指定されると、次のようなことができ、世界最高水準の研究遂行体制が整備されることになっている。
  (a)国から巨額の予算がもらえるだけでなく、
  (b)国際的に優秀な「スター研究者」を億単位の報酬で招くことができる、etc.

 (3)法案成立前にも拘わらず何故か、3月には、理研が「候補」に選ばれていた。
 しかし、STAP細胞騒動が起きたので、菅義偉・官房長官は、この法案の閣議決定を先延ばしにする方針を示した。騒動の原因を解明し、対策をとった上で法案を国会に提出し、成立後に理研を指定する意向である、うんぬん。

 (4)これは、とってもヘンなことだ。
 理研は、あくまでも特定国立研究開発法人の一候補に過ぎない。
 実は、外にも候補がある。産業技術総合研究所だ(理研同様、国の独立行政法人である)。
 本来は、法案をさっさと成立させ、理研の指定は見送って、産総研だけを指定すればいい。

 (5)では何故、法案提出が先送りにされたのか。
 実は、この法案は、元々「理研のための談合法案」だったからだ。
 理研には、役職員に現役の文科省官僚が出向し、給料を払ってもらっている。文科省にとっては大事な独法だ。
 そこで、理研の所轄官庁である文科省(旧・科学技術庁)の官僚たちが、自らの「理研」の源である「理研」に巨額の予算を流し込んで、好きなように使える仕組みを作ろうとしたのだ。
 産総研(ライバルの経産省が所管)だけが指定されて、そこに今年度の巨額の予算が流れる。そんなことは文科官僚にとって、とうてい許せることではない。

 (6)余談ながら、特定法人への指定をしてもらうためにSTAP細胞の論文を急がせた・・・・という報道は、まったくピントはずれだ。初めから理研を指定する予定の談合政策だから、STAP細胞の論文など必要ではなかった。
 今、文科官僚が考えているシナリオは、小保方氏に全責任を負わせて幕引きし、理研には簡単な原因究明と対策を実施させ、特定国立研究開発法人認定の環境整備をする。理研の指定を確実にしてから、法案を国会に提出する、という段取りだ。
 それによって、ライバルの産総研だけが巨額の予算を獲得してしまうことを回避できる。

 (7)理研の尻を叩き、理研の申し出により野依良治・理事長じきじきに自民党の部会に出席して説明を行わせたのもそのためだ。
 なりふり構わず。
 理研内部の調査で、小保方氏に対する簡単なヒアリングだけで研究不正を認定したのも同じ思惑だ。
 さらに、第三者による改革委員会の議論も研究運営体制などに対象を絞らせ、5月にも提言をまとめさせる。これを受けて対策を講じれば、一件落着という狙いだ。
 最悪でも秋の臨時国会で法案を成立させ、理研を指定して、今年度の多額の研究費を獲得するわけだ。

 (8)文科官僚のかかる談合シナリオを認めてはいけない。
 理研の今年度の指定を見送り、産総研だけで特定国立研究開発法人制度をスタートさせるべきだ。
 理研は、野依理事長をはじめとする幹部が退任して襟を正し、来年度改めて指定申請するのが筋だ。
  
□古賀茂明「理研は利権 ~官々愕々第106回~」(「週刊現代」2014年5月3日号)
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