語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】石破茂の、公明党と創価学会の関係への理解

2014年05月30日 | 社会
 (1)安倍政権は、憲法解釈の変更によって、集団自衛権の行使容認に踏み切ろうとしている。5月15日に安倍晋三・首相が記者会見を開き、方針を明確にした。
 この動きに対して、連立与党の公明党の、支持母体である創価学会が異議を唱えた【朝日新聞の照会に対する創価学会広報室の、5月16日付け回答】。
 <私どもの集団的自衛権に関する基本的な考え方は、「保持するが行使できない」という、これまで積み上げられてきた憲法第九条についての政府見解を支持しております。
 したがって、集団的自衛権を限定的にせよ行使するという場合には、その重大性に鑑み、本来の手続きは、一内閣の閣僚だけによる決定ではなく、憲法改正手続きを経るべきであると思っております。
 集団的自衛権の問題に関しては、今後、国民を交えた、慎重の上にも慎重を期した議論によって、歴史の評価に耐えうる賢明な結論を出されることを望みます。>【注1】

 (2)創価学会の回答は、文面だけ見れば、憲法改正手続きを経れば集団自衛権を認める、という立場を創価学会がとっているように見える。
 創価学会はしかし、性急な憲法改正に賛成していない。創価学会は、現時点での集団的自衛権容認に反対の意思を表明した、と見るのが妥当だ。
 石破茂・自民党幹事長も、そのような見方をしている。だから、公明党と創価学会の間にくさびを打ち込もうとしているのだ。
 <自民党の石破茂幹事長は18日、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認問題で創価学会広報室が「本来、憲法改正手続きを経るべきだ」との見解を示したことを受け、公明党をけん制した。「公明党の判断に主体性がなくなり、支持母体の(創価学会の)言うままということもないだろう」と、都内で記者団に述べた。
 同時に「個別的自衛権や警察権で対応できない部分があったとすれば、その時にどう考えるか。まだ議論は始まっていない」として、慎重姿勢を崩さない公明党の軟化を求めた。
 石破氏が公明党と創価学会の関係の在り方に言及したことで、20日から始まる与党協議を控え、公明党側が反発を強める可能性もある。>【注2】

 (3)石破は、創価学会がどれくらい強い決意を持って、集団自衛権問題に関する見解を発表したかを理解していない。
 池田大作・創価学会名誉会長が『人間革命』を沖縄で書き始めたのが1964年12月2日のことだ。その冒頭は、次の言葉で始まっている。
 <戦争ほど、残酷なものはない。
 戦争ほど、悲惨なものはない。
 だが、その戦争はまだ、つづいていた。
 愚かな指導者たちに、ひきいられた国民もまた、まことにあわれである。>

 (4)今年は、(3)の言葉が記されてから50年の特別な年だ。池田名誉会長の平和主義という原則に照らして、創価学会は、集団的自衛権に関して、「慎重の上にも慎重を期した議論によって、歴史の評価に耐えうる賢明な結論を出されることを望みます」という見解を表明したのだ。
 石破の「支持母体の言うままということもないだろう」という発言は、創価学会、公明党の双方の反発を買うだけだ。

 【注1】記事「自公協議に影響必至 創価学会、強い懸念 集団的自衛権」(朝日デジタル 2014年5月17日)
 【注2】記事「「公明は主体性失うな」 創価学会見解に石破氏」(MSN産経ニュース 2014年5月18日)

□佐藤優「公明党と創価学会への理解度 ~佐藤優の人間観察 第68回~」(「週刊現代」2014年6月7日号)
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