その15「また交通警察」はこちら。
警察の体質を如実にあらわしたのが、立川署の警官がストーキングの果てに女性を射殺した事件だ。ふりかえってみよう。
2007年8月21日、立川警察署地域課所属の40歳巡査長が国分寺市在住の32歳知人女性宅を勤務中に訪れ、配備された拳銃を3発発砲し射殺した後に同じ拳銃で自殺する無理心中事件が発生した。
この事件では、2006年11月に巡査長がプライベートで飲食店に訪れた際に女性に一目ぼれし、一方的に好意を寄せ職務中に無断に女性宅に訪れるなどといったストーカー行為をし、事件前に巡査長が無断に女性宅に侵入するといった事件も発生している。また、職務中に私用の携帯電話を使ってメールを送っていたことも明らかとなった。ちなみに、事件後に警察庁では基本的に職務中に私用の携帯電話を利用することを禁じた。
事件後、巡査長は退職金として1,200万円支払われることになっており、苦情の電話や石原慎太郎東京都知事から非難された。退職金は結局、受取人である遺族が受取辞退を申し出たために支払われなかった。また、立川警察署署員らが女性の遺族に100万円の見舞金を送った。事件を受け、同年9月20日の国家公安委員会は矢代隆義警視総監を戒告、立川警察署署長を減給10分の1、3ヶ月、警視庁は立川警察署幹部8人に懲戒処分を下した。また、同日に自殺した巡査長を警視庁が殺人容疑で書類送検。立川警察署署長は処分を受け、9月21日に引責辞任となった。
警察庁は近年『監察』を強化していて、各警察の不祥事摘発に血道をあげている。また、内部においても係長ら上司が少なくとも年2回署員に面接し、仕事や私生活上の悩みなどを聞くシステムになっている。
子どもじゃあるまいし、と吐き捨てるのは簡単だが、背景にあるのは警察がなんとしても“威信を保たなければならない”とする姿勢だろう。不祥事が起こるたびに関係者のクビは吹っ飛び、クビにならないまでも昇進の道は閉ざされてしまう。ストレスがこれほどきつい職場はめずらしいはずだ。
この巡査長が女性を射殺する直接のきっかけとなったのは「メールを上司に見せてストーカー行為をやめてもらう」と女性が話したことだっただけでも、警察内部が『小さな不祥事も命取り』なのは理解できる。監察の強化によって不祥事の数は減っても、四十代以上の警官の不祥事が頻発、凶暴化しているのは、『もうやり直せない』という絶望感のせいではないか。しんどいなあ。
その17「校長の告発」につづく。
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