坪内祐三(’58年~)と福田和也(’60年~)。わたしと同世代のこのふたりの評論家には、意外に共通点が多い。東京の東と西に生まれ、規模は違えどどちらも会社経営者(福田は福田製麺所。坪内の父はなんと元ダイヤモンド社社長である)の子弟であり、“保守”を標榜しながらマニアックな嗜好を隠そうともしない。なにより、その著作でどちらも各方面にケンカを売りまくっている。
福田が「作家の値うち」(飛鳥新社)で現役作家(!)100人の作品を百点満点で評価してひんしゅくをかったのは記憶に新しい。石原慎太郎の著作の点数が高かったのは納得できなかったけど。
坪内のエッセイを雑誌連載時に読んでいたときは、まさか同世代とは思いもよらなかった。古書店通いの日常は隠居老人のそれだし、購入する書籍も明治大正、そして昭和初期のものが多かったから。自作タイトル「古くさいぞ私は」(晶文社)そのまんま。ところが、同じ人間が神田帰りに渋谷のHMVに寄り、スプリングスティーンや佐野元春のCDを買っていたりするのである。
坪内がまだ無名だったころ、何度もその名を聞くことになったのは「噂の眞相」にて。当時の奥さんは写真家の神蔵美子。彼女はしかし編集者の末井昭との不倫に走り、その“セックスばかりやっていた”日常を写真集として発表してしまったのである。加えて、筑摩書房の編集者の(「王様のブランチ」にまだ出ているかな?)松田哲夫と新宿の路上を歩いているとき、ヤクザにからまれて重傷を負った事件もあった。「噂の眞相」にとって、まことにおいしい人物だったのである。坪内に、もう怖いものなどあるまい。
話は横道にそれるけれど、「写真時代」で有名な末井昭にもふれておこう。西原理恵子の著作で、女装趣味+先物取引で何億もの借金をかかえる危ないオヤジとして描かれる、この白夜書房の伝説の編集者のことは、彼の自伝的作品「素敵なダイナマイトスキャンダル」(ちくま文庫)に詳しい。母親が不倫相手とダイナマイトで爆死心中するシーンから始まるこのエッセイ集は、確か就職したばかりのころに読んでショックをうけたおぼえがある。世の中には、変わった人がいるものだと。
あー話が前に進まない。福田と坪内には、もうひとつ大きな共通点があるのだ。以下次号。
買っちゃったよ(笑)