第39話「今、甦る死」はこちら。今日はWBC優勝記念にイチローを特集しましょう。
現役のメジャーリーガーであるイチローを起用し、2時間半出ずっぱりの犯人役をやらせる……いかにオフシーズンの撮影で、イチローが古畑任三郎ファンだといっても、この企画よく成立したよなー。っていうか、まず企画会議で「犯人はイチローでいきましょう」と提案した人間の無謀さがえらい(笑)。
しかしアスリートが自身に扮して主演するのって、映画界ではよくあることなのだ。映画会社が球団をもってたりしましたから。あの堅物の川上哲治しかり(「川上哲治物語」)、鉄腕稲尾しかり(「鉄腕投手稲尾物語」)。でもまさか殺人まではやらせないだろうって?いやいや、阪神の藤村富美男が「必殺!仕置人」の元締め役で毎週……
それはともかく、CMに出ているイチローを見ると、他のスポーツ選手よりもはるかに見事に演技している。松井あたりのぎこちなさと比べるとよくわかるじゃないですか。「フェアな殺人者」でも、絶対に嘘をつかない殺人者(最後にひとつだけ嘘をつくのが残念)を達者に演じている。こりゃ、天性のものだな。
三谷幸喜がこの回でやりたかったのは、ハリウッドの野球映画の再現だろう。濡れたマッチ、加湿器といういかにもホテルで考えたトリックを用いながら、兄をかばうために恐喝者を殺してしまうイチローが、なぜそこまでかばうのかの理由がハリウッドっぽい。
サインボールの指紋について、もうちょっと気を配ってほしかったうらみはあるけれど、最高の肩を持ち、盗塁が得意な男しかできない犯罪という設定はいい。
セリフも笑わせる。
西園寺:まさかイチロー選手でヒットするとは思いませんでした。
今泉:イチロー選手は盗塁はするけど人の命までは盗ったりしないからね。
西園寺:今泉さん、しゃれたことを言うのはいいですけど、言ったあとに得意そうな顔をするのはやめてください。
フェアな殺人者イチローと、フェアな追跡者である古畑とのラストも気がきいている。
第41話「ラスト・ダンス」につづく。
意味でも屈指の人。
松井秀喜はダメだったし、そういう意味では
やっぱり天才(笑)