事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察 その98 「冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場」集英社インターナショナル

2018-12-18 | 日本の警察

その97「機龍警察 狼眼殺手」はこちら

東京地検は15日、妻を殴ってけがをさせたとして警視庁に傷害容疑で逮捕された作家の冲方丁(本名・藤野峰男)氏(38)を不起訴処分とした。妻に処罰感情がないことなどを考慮したという。警視庁によると、冲方氏は容疑を否認し、東京地検が処分保留で釈放していた。
2015年10月15日付 日本経済新聞

……よく、おぼえています。SF者にはマルドゥックシリーズで、わたしには「天地明察」「光圀伝」などの時代小説でおなじみの冲方丁(うぶかた・とう)がDVで逮捕!しかしよくわからない経緯で不起訴になっている。

この本は、渋谷署の留置場で過ごした9日間を、冲方が作家の眼で、ひたすら冷静に描こうとしたもの。この経験を「笑う」しかないと彼は記述しているが、どうしたって「怒って」いるのはビシバシ伝わってきます。

妻の立場、あるいは子どもへの愛情があるので記述できないことが多くあるのは理解できる。それでも“向こう(妻)の事情”がうっすらとうかがえるあたりはさすがの腕の冴え。

にしても怖い話ではないか。奥さんにどのような動機、どのような協力者がいたか知らないが、警察に「夫に殴られた」「相談」するだけで彼は身柄を拘束され、自由とプライバシーと時間と、そして世間の信頼を一気に失ってしまう。わたしだって逮捕の報道を読んだときは「そうか、そんなヤツだったのかあ」と思っちゃいましたもの。

しかし妻の弁護士が提出した書類の冒頭に、

「わたしは訴えていません」

という意味不明な妻のコメントがあるなど、どうも“事件”は次第にねじれていく。加えて、逮捕されたとはいっても、まだ有罪になっていない人間を“代用監獄”である留置場に処罰的に押し込める日本の司法の欠陥がここまであからさまに……

巻末に「それでもボクはやってない」の周防監督との対談があってこれもすごい。だいじょうぶか日本の警察(検察に隷従)。大丈夫か日本の検察(キムタクはいない)。そしてだいじょうぶか日本の裁判所(逮捕状自動販売機)。

今回のゴーン逮捕において、次々に再逮捕して彼を長期に拘束している状態は、やはり他国からみると蛮人の所業に見えるのだろうな……

その99「MOZU」につづく

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