事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察~その30「後悔と真実の色」 貫井徳郎著 幻冬舎

2010-05-02 | 日本の警察

51mbpxvlmul その29「機動隊」はこちら

連続殺人については、数多くの変則技が編み出されてきた。ABCで考えれば、

①Aを殺したいが、その動機を隠すためにBとCを殺す

②Bを殺したいが、その動機を隠すためにAとCを殺す

③Cを殺したいが、その動機を隠すためにAとBを殺す

④実は連続殺人ではないが、AとBの死を利用してCを殺す

⑤Aを殺した犯人への復讐のためにBとCを殺したので連続殺人に見える

⑥AとBの死によって精神的に追いつめられたCが自殺したので、不可解な連続殺人が成立する

⑦実は連続自殺事件だった

……えーとあとどんなのがあったっけ。

ここに新手登場。叙述トリックとからめて、物理的にありえない四人の連続殺人が……すいません途中で犯人わかっちゃいました。でも、警察小説としてはひたすら面白い。知らなかったネタも満載だ。

殺人が起ったからといって捜査一課殺人班が現場にいきなり乗り込むことはなく、まず現場資料班(警視庁捜査一課強行班捜査第二係)が赴くとか、機動捜査隊と捜査一課の間には(一課にエリート意識があるからこそ)ぬきがたい反駁があるとか。

 主人公が所属する捜査一課第九係の面々の壊れっぷりも渋い。まともな家庭生活を送っている人間は皆無で、穏やかな人間関係を築こうなどと最初から思っていないあたりがどうにも危うい(ここ、重要です)。ほいでまた、みんな性格悪いんだ。

主人公が警察官になった動機もふるっている。

『結局、自分には語るべきものが何もないのだ。母親を幼いときに殺されたという大崎を前にしていると、よけいにそう感じる。語るべきものがないから、仕事に打ち込まざるを得ない。頼るべき強靱な何かが自分の中にないことを自覚しているからこそ、仕事に熱中することでその不安を紛らわせているのだ』

 名探偵と同僚から尊敬もされると同時に“揶揄”もされる主人公がこんな具合では、ラストのどんでん返しは必然だったかなあ。

慟哭」「修羅の終わり」と、加納朋子のダンナとは思えないぐらい貫井の作品は重いです。こちらの家庭はだいじょうぶなんだろうか。

その31「鑑識・米沢守の事件簿」につづく

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