第七巻「逆浪果つるところ」はこちら。
長大な物語、ついに終結。挿絵は逢坂剛のお父さん、中一弥。2015年に104才で亡くなっているので、前作で使われた絵をアレンジして表紙などに使用されている。究極の親孝行だろう。
さて、このお話は蝦夷地探索などで知られた近藤重蔵の生涯を描いたもの。読みながら誰でも思う。なぜこれほどの偉業を達成した人があまり歴史に残っていないのかと。
同じ蝦夷と関連がありながら、最上徳内が生地である山形県村山市で毎年『徳内まつり』が行われているのとはえらい違い(重蔵も、亡くなった滋賀県では敬愛されているようだが)。同じようにアイヌの生活の改善を図り、同じようにロシアの脅威に立ち向かったにもかかわらず。
性格に問題があったことは確実。ひたすら優秀で、まわりが馬鹿に見えて仕方がない。だから自分の待遇にどうしても不満が募る。苛烈な仕打ちは息子にも向かったようで、彼はある事件で女性を含む7人も斬り殺してしまい、流刑に。そして重蔵もそのために近江に預けられ、そこで死ぬことになった。
最上徳内には、司馬遼太郎が高田屋嘉兵衛を描いた「菜の花の沖」という作品があったことも歴史的な重みに影響したかも。だから逆に言えば、逢坂剛は歴史に埋もれている重蔵というものを、自らの筆でよみがえらせたかったに違いない。
悲惨な末期ではあるけれど、悪女りよとの絡みで泣かせてくれる。十六年もの間、つきあってきてよかったなあ。
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