その104「脇坂副署長の長い一日」はこちら。
「孤狼の血」の続篇。映画が壮絶だったので誤解されがちだけれども、原作はわりに薄味な、というか冷静な筆致だった。最後の年表にはやられたけど。
今回は少し違う。国光というやくざが登場し、これがなかなか泣かせる男で、前作の騒ぎのために田舎の駐在に左遷させられた日岡も彼に激しく影響される。
前作は「仁義なき戦い」そのものの広島抗争。今回は山口組のトップと若頭が同時に殺された山一抗争が舞台。
あの事件そのものがよくわからないので(業界の話なのであの筋の人たちはさぞや面白く読んだだろう)、やくざの組織と名前を登場人物一覧でチェックしつつ……そんなことはしなくても実はいいのでした。
複雑な背景がありながら、国光と日岡の関係を追っていけばよかったのだ。仁義なき戦いどころか、仁義や任侠ばりばりの世界が描かれる。
柚月裕子の狙いは次第にこちらの方向にあるんだと思う。こってりした、人間ドラマの方に。でも酒田の人間であるわたしにとっては、薄刃を使うような佐方検事シリーズに期待したいってのが正直なところ。
その106「東京輪舞」につづく。
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