その103「紅のアンデッド」はこちら。
この装幀で、アイドルが一日署長としてやってくる日のドタバタが描かれるとくれば、かなりコミカルな味わいなのかと誰だって思う。
ところが、このアイドルは自ら進んで一日署長に手を挙げたと知れるあたりから色調はいっきにシリアスに。消えた警官、不審な動きをする長男、帰らない妻、中学校への侵入事件、県警の派閥争い……次から次へと事件が起こり、副署長みずからが動かなければならない設定づくりはさすが真保裕一。そしてこれらが一気につながるあたりのドライブ感も。
しかしこの警察小説(フロスト警部ものに明らかに影響を受けている)で最も心に残るのは中間管理職のつらさだ。
刑事のときは犯人をひたすら追いかけていればよかったのに、という脇坂副署長の嘆きは説得力がある。こんな毎日がつづいたら確実に過労死するのに、脇坂がギブアップせずに邁進するのはなぜなのか……ここに、真保が本当に言いたいことがあったはず。警察小説でなければ、この感動はない。
その105「凶犬の眼」につづく。
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