これまたわたしの大好きな映画。有能で(ということはつまり金を稼げる)目的のためには手段を選ばないスポーツ・エージェントが、会社のやり方に疑問を抱き、新たな道とパートナーを見つける……おおお大甘なストーリーでしょ。まるでフランク・キャプラが描くおとぎ話のよう。しかも主演がトム・クルーズとレニー・ゼルウィガーときたもんだ。
しかしそれが「あの頃ペニーレインと」のキャメロン・クロウの手にかかると話は変わってくる。まるでジミー・スチュワートのように理想論をぶちあげるトムを、会社はあっさりと首にする。自分についてきてくれると思っていたクライアントは、寄らば大樹の陰とばかりに会社の後輩に次々に引き抜かれる。
夢見るトムについてきてくれたのは、経理のシングルマザー(レニー)と、メンタルに難があるためにブレイクできないでいるランニングバック(キューバ・グッディング・Jr)だけだった。
シングルマザーの方は、夫を亡くしたさみしさから恋愛に消極的になっているが(男に夢を求めるなと説教するお姉さんがおかしい)、トムの求愛に応え、ふたりは結婚する。しかし、夫の心が自分に向いているのかと悩む彼女は、ついに別れを告げる……
救いがない展開。トムどん底。でも現実はそんなものかもしれないな、と観客がニヒりはじめたところで(トム主演のこの手の映画で、そのまんまということはないだろうと予想できるとはいえ)、レニーの子どもの可愛さが爆発し、トムは自分の人生をとりもどす。前半の苦さがあったおかげで、あきれるほどのハッピーエンドにも納得できる。
離婚した女性たちの会が行われるそばで、妻の心を奪い返すトム。ここで、まわりから拍手なんかあるとしらけるんだけどそんなこともない。普通に生きる彼は、普通の幸せを手に入れて日々の生活を送ることが暗示されて終幕。きっと彼らはいまも幸せでいるだろうと確信して観客は外へ出ることができる。手練れの作品とはこれだ。
でも、監督のクロウは、数年前に愛妻のナンシー・ウィルソン(ハートのギタリスト)と別れちゃったとか。負けるなキャメロン。いつかいいこともあるさ。
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会社を辞めて飛び出していくトムクルーズに、書類箱となぜか金魚鉢を抱えて一緒に出ていくレニーゼルフィガーが印象的でした。
この女優さん、この後『シカゴ』で見て、あまりの変わりようにびっくりしたのですが。
この映画がロードショウされたころに、ちょうど野茂がメジャーリーグに行って、代理人の存在がクローズアップされたことも思い出しました(だから、原題と違う「エージェント」という邦題が付いたのかと)。
このタイトルについてはねぇ、英文出身としては
まずいだろうと思いました。本気なら
「ジ・エージェント」だろや、とか。
小姑みたいな自分がいやになる(^o^)