事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

ワイルダーならどうする? その1

2007-12-04 | 本と雑誌

Photo 『ワイルダーならどうする?』
ビリー・ワイルダーとキャメロン・クロウの対話
キャメロン・クロウ著 宮本高晴訳 キネマ旬報社

 ビリー・ワイルダー……と聞いてどんな印象をお持ちだろう。シニカルなセリフと端正な映像?ハリウッド最高の職人監督?いずれも正しいけれど、それ以前に新人監督キャメロン・クロウ(「ザ・エージェント」「あの頃、ペニーレインと」「バニラ・スカイ」)に彼が授ける映画の魔法の数々は、フランソワ・トリュフォーにヒッチコックが語った(「映画術」)あざといまでのトリッキーな映像づくりよりも、わたしには大きな示唆に富むように思えた。偉大な老教師、が第一の印象だろうか。

 ワイルダーの主なフィルモグラフィは以下のとおり。

「失われた週末」The Lost Weekend(主演レイ・ミランド) ‘45

サンセット大通り」Sunset Boulevard(グロリア・スワンソン) ‘50

「第十七捕虜収容所」Stalag 17(ウィリアム・ホールデン) ‘53

麗しのサブリナ」Sabrina(ハンフリー・ボガート、オードリー・ヘップバーン)’54

「七年目の浮気」The Seven Year Itch(マリリン・モンロー) ‘55

「翼よ!あれが巴里の灯だ」The Spirit of St.Louis(ジェイムズ・スチュワート)’57

「昼下がりの情事」Love in the Afternoon(オードリー・ヘップバーン) ‘57

情婦」Witness for the Prosecution(マレーネ・ディートリッヒ) ‘58

「お熱いのがお好き」Some Like It Hot(トニー・カーティス) ‘59

「アパートの鍵貸します」The Apartment(ジャック・レモン) ‘60

「あなただけ今晩は」Irma la Douce(シャーリー・マクレーン) ‘63

「恋人よ帰れ!わが胸に」The Fortune Cookie(ウォルター・マッソー) ‘66

「お熱い夜をあなたに」Avanti!(ジャック・レモン) ‘72

「フロント・ページ」The Front Page(ジャック・レモン、ウォルター・マッソー)’74

「悲愁」Fedora(ウィリアム・ホールデン、マルト・ケラー) ‘79

Billywildertheatermosaic ……凄すぎるラインナップ。当初は英語がしゃべれず、生涯ドイツ訛りが抜けなかったこの移民の、クールな言語感覚をその原題からも感じてほしい。

そして’81の「バディ・バディ」(日本ではビデオ発売のみ)以来、彼は1本も撮れなかった。2002年3月、享年95歳で亡くなるまで、彼はビリー・ワイルダーという偉大な存在ではあったけれど、現役の映画監督ではなかったのである。

 新聞記者を皮切りに数々の職業を転々としたワイルダーは、ナチスの台頭のためにヨーロッパを離れ(母親はその後強制収容所で亡くなった……彼が「シンドラーのリスト」の映画化権をスピルバーグに取られ、穏やかな口調ながらも悔しがっていたことが読み取れる)、アメリカに渡る。脚本家としてハリウッドでのキャリアをスタートさせたワイルダーは、「ニノチカ」で知られるエルンスト・ルビッチ監督の下で多くのものを得る。

彼のアパートの壁に「ルビッチならどうする?」というフレーズが掛けられていたことは良く知られていて、この対談集のタイトルはそこから来ている。

  狷介な性格で多くの敵をつくり、“客の笑いの時間を考えて役者のセリフの間隔を自在にコントロールした”ほどのコメディの天才であるが故に、彼の発言はひたすらひねくれていて、なおかつひたすら笑える。スペースの許す限り、紹介していCameroncroweこう。

その2はこちら

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