前に宮部みゆきの「日暮らし」を特集したとき、椎名誠が“誰にすすめても感謝される1冊”としてアーサー・ヘイリーの「ホテル」をあげていることを紹介した。
ある業界を徹底的に取材し、そこに絶妙な人間関係をしこんで読者を楽しませ、ほろりとさせてくれる。アーサー・ヘイリーとはそんな存在だったし(彼の作品はいま、どんなあつかいなんだろう。新潮文庫の「ホテル」とハヤカワ文庫の原作だけでも生き残っていればいいのだけれど)、「大空港」もまた、ハリウッドらしい豪華娯楽作品だ。これを見て楽しめない人はまずいないだろう。
スタッフが泣かせる。監督ジョージ・シートン、音楽アルフレッド・ニューマン、衣装はイーディス・ヘッドと超ベテランをそろえ、キャストもバート・ランカスター、ディーン・マーティン、ジーン・セバーグ、ジャクリーン・ビセット、ヴァン・ヘフリン(「シェーン」のお父さんだったあの人)、そしてパニック映画にはこの作品から不可欠になったジョージ・ケネディとオールスター。
映画史的には、アメリカン・ニューシネマへの対抗として堂々たるグランドホテル型のメロドラマを用意したことになっている。
確かに、「大空港」が公開された1970年は「ファイブ・イージー・ピーセズ」や「真夜中のパーティ」「ソルジャー・ブルー」など、ひねくれた作品が多く、年配の保守的な観客向けにつくられたイメージはある。妊娠中絶に否定的だとか、“たしなみのある不倫”っぷりとか(笑)。でも、その計算もまた気持ちいい職人の仕事だ。
オープニングは雪の空港。重機が盛大に雪を跳ね飛ばすシーンだけでも興奮。あ、これはわたしが除雪マニアだからかな。
着陸した飛行機が誘導路をはずれ、雪にタイヤが埋まってしまったことがこの空港の最も長い夜の始まり。シカゴのリンカーン空港(架空の存在)は、2-9と呼ばれるこの滑走路が使えなくなると、2-2という近隣に騒音と振動を与えるために夜間の使用を反対されている滑走路を使用しなければならない。
空港長(バート・ランカスター)は苦慮する。以下次号。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます