事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「嫌われ松子の一生」('06 東宝)中島哲也監督

2008-05-29 | 邦画

「嫌われ松子の一生」がメジャーで映画化されるということ自体、不思議ではないだろうか。この、徹底して救いのない原作は、版元の幻冬舎お得意の「感動の嵐!大ベストセラー!」的な大宣伝で話題にはなっていたものの、それを「下妻物語」という、いわば小品でヒットを飛ばしたに過ぎない中島哲也に撮らせようというのは、こりゃやっぱり大冒険のはず。製作費も大幅に増額したと聞くし。
ラストのグライダーを使ったシーンには驚愕。土屋アンナにひとこともセリフを与えなかったあたりのおしゃれ技も中島ならではだ。

 東宝はしかしたまにこんな冒険をやる。「ALWAYS 三丁目の夕日」にしても、山崎貴という特撮オタクに西岸良平の原作を撮らせようなんざ、狂気の沙汰ではないか。でもこれは東宝という会社が昔から外部プロデューサーの権限が強く、自前の映画製作をいちばん最初にギブアップした経緯が影響していると思う。もちろん物事には善し悪しがあって、安易に素人監督をひっぱってきて失敗した例も多い。特に名は秘すが桑田佳祐とか小田和正とか松本隆とか(笑)。

 逆に大ホームランとなったのがCM界では巨匠として有名だった(だから中島哲也と同じような経緯)大林宣彦。メジャーデビュー作「HOUSE」(’77)の衝撃は地元酒田の映画館でたっぷり味わうことができた。池上季実子のヌードも嬉しかったっす。

……こんなことを書き連ねているのは、「嫌われ~」とほぼ同時期に対照的な映画が封切られたからだ。名を「バルトの楽園(がくえん)」こちらは東映作品。東映は東宝とは逆に、撮影所システムが未だに強く、外部の才能を容れがたい体質と聞く。だからこそ生まれる傑作も数多いわけだが、近年のこの会社はひどい。「デビルマン」騒ぎをひくまでもなく、映画製作だけでは完全に立ち行かない状況になっている。

わたしは断言するけれど、数多くの要因があるとはいえ、その最大のものは現在の社長、元俳優の岡田裕介だ。はっきり言ってこの人は製作者としてのセンスはゼロに近い。あまりのひどさに伝説となった「北京原人」を製作したことだけでも罪深いぞ。それに吉永小百合の近年の作品は岡田のコントロール下にあるようだが、「北の零年」で行定勲を起用したのをのぞけば、監督はほぼ出目昌伸。彼は岡田と何度も何度もコンビを組んで、そして何度も何度も失敗しているのだ。そんな出目を今年の勝負作に起用したことで、おそらく現場の意気は上がらないだろうし、キャンペーンソングは「マツケンのAWA踊り」……ひょっとして傑作になってたらごめん。ブルーノ・ガンツも出ているしね(なんで出たんだ?)。でもわたしは会社の勢いの差がどうしてもにじんでしまう予感がする。いくら創価学会がバックにあろうが、団体動員に頼っているようでは「嫌われ~」に遠く及ぶまい。どこへ行く東映。そしてどこまで好調が続くんだ東宝……。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「コーヒー&シガレッツ」COF... | トップ | 年度末年度始 最終日「初期化」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

邦画」カテゴリの最新記事