はじまりは「トロイ」だった。
とんでもない製作費を使い、演出するのはこけおどしが得意な(けなしているわけではない)ウォルフガング・ペーターゼン。いかにもCGでございと数千隻の帆船を浮かべた画像で売りまくる、いわゆるハリウッド大作になぜブラット・ピットが出演を承諾したかはよくわからない。まあ、いつもの娯楽映画方程式にのっとった大作なのだから、めちゃめちゃ面白くもないだろうが退屈もしないはず、という予想で(だからDVDで観るにはうってつけと思い)借りてみた。
どっこいこれが面白いのだった。トロイで連想するのはシュリーマンだの木馬だのでしかないわたしにとって、神話の変奏曲でしかないはずの「イーリアス」をたっぷし堪能できたのは望外の喜び。アキレス(ブラピ)がトロイ戦争の登場人物なのも初めて知ったし、アガメムノンやオデッセウスなど、名前しか知らない歴史上の人物が次々に出てくるのはまるでNHKの大河ドラマみたいでうれしかった。「~のちの○○××である」ってあれね。世界史をきちんとお勉強した覚えがないわたしにとって、こういう史劇は何よりのプレゼントだ。アキレスと言えば「かかと」だよなあと思ったらちゃんとラストでは期待通りのシーンが。まあ「トロイ」は思いっきり脚色されているのでホメロスの叙事詩はこうだったんだと知ったかぶりはできないらしいのだが。
それにしてもこの映画のブラット・ピットはいい。はっきり言ってこの俳優を美男だと思ったことなど一度もないが、筋肉の上にうっすらと脂をのせた彼の身体には、ホモでもないのにうっとりとさせられる。半神半人であるアキレスが「生きて帰れない」と予言される戦争になぜ参加したかの理由は説得力あり。この戦争の発端が「スパルタの王妃をトロイの王子(オーランド・ブルームが情けなくていい)が寝取ったため」という理不尽さなのも現代に生きるわたしたちにとってはむしろわかりやすい。ギリシャの大軍に蹴散らされ、滅びゆくトロイの残党が、後にローマ帝国をつくることになるエピソードを強引に加えてあるあたり、史劇の面白さ爆発。もうとまらない。世界史を映画でお勉強する「史劇を愉しむ」シリーズ開始。でも、おかげでテストで間違っちゃったじゃないかって言われても責任はとりませーん!
第2章は「日本海大海戦」
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