事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

追悼 ナンシー関

2007-12-13 | 本と雑誌

Nancy 02年ネタは続く。今回は、あのナンシー関の追悼特集。

消しゴム版画家 ナンシー関さん死去

 エッセイストでユニークな版画家として知られるナンシー関(本名関直美=せき・なおみ)さんが、12日午前0時47分、虚血性心不全のため東京都内の病院で死去した。39歳だった。関係者の話では、11日夜、都内で食事をした後、「仕事が残っている」と一人で乗ったタクシーの中で倒れ、救急車で病院に運ばれたという。
 青森市生まれ。法政大学文学部在学中、市販の消しゴムをカッターナイフで彫ってつくったハンコによる似顔絵が認められ、プロのイラストレーターとしてデビュー。前例のない「消しゴム版画家」として話題を集め、89年には個展「けしごむ歳時記」を開いた。
 辛口のテレビ批評家としても知られ、一言コメント付きの似顔絵版画をあしらった週刊朝日の「小耳にはさもう」のほか、多くの週刊誌や月刊誌で連載を続けていた。
 著書に「耳部長」(朝日新聞社)、「テレビ消灯時間」(文藝春秋)など多数。
2002年6月13日付朝日新聞朝刊

なんてことだ。昨年の山田風太郎に続き、無条件で信頼できる書き手をまた失ってしまった。これで宮台真司と小林信彦まで死んでしまったら、私は何を読んで生きてゆけばいいんだ。フリークスに近い容貌と(ものすごく失礼な形容だが、彼女はそれを卑下も売り物にもしなかった)、扱ったのが時事ネタワイドショー中心のテレビだったから、ひょっとしたら彼女の作品が後世に残らない、というような事態にまさかなるのではないだろうな。

しかしここではっきりと主張しておく。ナンシー関の残した“哲学”こそ、今ではギャグでしか使われないサブカルの世界の、最も良質で、最も現代人に必要とされる部分だったはずだ。

哲学、と不用意に使ったようだが、その冷徹な視線は「辛口」なのではなく、ものごとの本質をつかむとはこんなことなんだ、とわれわれに叩きつけ続けてくれた、まさしく哲学そのものだった。ひたすらにブラウン管をとおして現実を見つめ続け、だからこそむしろ虚飾にたいして敏感に反応し、読者にたいしてそのヴェールをひんむいて見せたあの手管と文体は、唯一無比といっていいぐらいのレベルに達していたというのに……

Nancysekitaizen 彼女がからかい続けたワイドショーが、今日は追悼の特集を組んでいた。ネタにされたことの不快さを半分隠せなかった「やじうまワイド」は正直な方で、マッチョな右翼、草野仁はさんざん笑いものにされていたくせに「ご冥福をお祈り」するかのような顔をしていた。なんだかなあ。

山田風太郎が「人間臨終図巻」で自分の死だけは描けなかったように、私たちは「ナンシー関の死を報ずるワイドショーの、愚劣にして愛すべき稚気を突くナンシー関のコラム」を読むことができない。著書多数、とは言うが、私は彼女の著作をほとんど読んでしまっている。残り少ない新作を待つしかないし、最高に笑えるホームページも、もう更新されることもないのか。失ったものの大きさに、今はただ呆然とするだけだ。

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