事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「誰も守ってくれない」(2008 フジテレビ=東宝)

2009-02-02 | 邦画

Nobodytowatchoverme    脚本、監督の君塚良一には、確実に大衆憎悪がある。萩本欽一のブレーンとして、視聴者とは何か、大衆とは何かについて叩きこまれたに違いない彼のたどりついた地点が、ここまでの憎悪だったことに驚かされる。

 少年犯罪の犯人の写真をマスコミに提供する同級生(動画にいたっては5万円ほどの値がつくらしい)、正義漢ぶって「謝罪しろ!」と家族に悪口雑言を吐きつける住民、そして一種の娯楽としてネットに情報をアップし、あろうことかライブ映像欲しさに加害者の妹をホテルに連れ込む“友人”……。しかし彼らを憎むと同時に、単なる社会派映画ではなく、娯楽作品として大衆に提供したい、大衆を喜ばせたいという欲求もまた、君塚の本音なのだろう。

 これはしかし諸刃の剣でもある。感動を呼び起こす仕掛けとして『かつての犯罪被害者(柳葉敏郎、石田ゆり子)のペンションに、加害者の家族(志田未来)をかくまってもらう』佐藤浩市演ずる刑事のメンタリティは、やはりどうしたって無理がある。家族を守るために役所が両親を離婚、婚姻させて苗字を変えるとか、教育委員会が就学免除の手続きをシステマティックに行うという「嘘」は一種の情報としていいとしても(各担当者が厚意としてやっている例はあるのだとか)。

 また、脚本家としては一流でも、君塚の監督としてのスキルはまだまだだ。役者に勢いにまかせて演技させた結果、妙な大芝居の印象が残ってしまう。実録風にまとめようと思えば、演出家は“過剰なまでに抑えた演技”を要求しなければならなかったはずなのだ。

 主演の佐藤浩市はそのあたりをうまくしのいでいておみごと。しかしそれ以上だったのは松田龍平。若いころのぎらつきがなくなり、父親の一番いい頃の軽さがただよってきた。考えてみればジュニア俳優の競演。他の役者たち(柳葉敏郎はちょっとひどい)をはるかに引き離してすばらしい。こんな世襲なら、わたしは大歓迎だ。

裏「踊る大捜査線」として楽しむのはしんどいが、だからといって見逃すには惜しい映画。ぜひ。

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