いかなる盾をも突き通す矛(ほこ)と、いかなる矛をも防ぐことができる盾……並び立つはずがない設定は、もちろん矛盾の語源だが、この作品では、どんな敵からも城を守る石垣をめざす主人公と、銃や大砲で敵を圧倒しようとするライバルの二人を描いてとにかく読ませる。
土木小説、とでもいうべき驚きの題材。関ヶ原直前の築城がどのようなものだったか、大砲の出現がいくさをどのように変えたか、なにしろお勉強になる。
今村は、娯楽小説の書き方を完全に自家薬籠中の物にしていておそれいる。いくさに弱い、閨閥のおかげで生き残っている城主の愛敬など、すばらしい。
560ページもあって寝っ転がって読むには物理的に重すぎるのにやめられない。直木賞納得。
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