つくづく、見逃さなくてよかった。大好きなティム・バートンの作品なのになぜか食指が動かず、このままスルーしようか……いやいや、やはりあの「ビートルジュース」や「ビッグ・フィッシュ」のような“ひねくれ者の祝祭”的映画になっていたらくやしい。
でもほとんど事前情報もないしなあ。知ってるのはティムが監督だということだけで……んなにぃいいいい、主演が「カジノ・ロワイヤル」のヴェスパーだったエヴァ・グリーンだってぇ!見るに決まってるだろ。妻の不在をいいことに最終回の映画館へ。
おっといきなりテレンス・スタンプ登場。孫に向かってホラ話、という展開はおなじみ「ビッグ・フィッシュ」のもの。だけでなく、この映画にはいろんな作品のエッセンスがこれでもかとつめこんである。
シザーハンズそのもののオブジェが出てきたかと思えば、「(タイム・ループの場所は)ロンドンの地下鉄にもあった」なんてハリー・ポッターをおちょくったネタ、白鯨かタイタニックがイメージされるシーンで胸をわくわくさせてくれもする。
観客の誰しもが気づくのは「X-men」との相似だろう。あちらはミュータントであることのつらさ苦しさが基調音。けれどミス・ペレグリンの館にいる奇妙なこどもたちは、過剰に自分の身の上を嘆いたりはしない。持てる能力を使い切り、悪の勢力を駆逐する展開は素直に楽しい。
特に、鉛の靴をはいていないと宙に浮いてしまう女の子の造形は、性的妄想の産物そのものではないかと思う。
エヴァ・グリーンとジュディ・デンチの起用は、ジェイムズ・ボンドが「女性に庇護される存在としてのヒーロー」だったあたりを狙ったのだろう。「カジノ・ロワイヤル」では悲しい存在だったエヴァに盛大にパイプをくゆらせ、鳥に変身させるあたりも確実に性的妄想。
絶対にこどもに見せてはいけない、ダークでいやらしいお話。ああ妻がいない日でよかった。
最新の画像[もっと見る]
- 「落語速記はいかに文学を変えたか」櫻庭由紀子著 淡交社 1日前
- 日本の警察 その146 警視庁いきもの係 大倉崇裕著 講談社 2日前
- 今月の訃報2024年6月号PART3 佐々木昭一郎 88歳没 4日前
- 今月の訃報2024年6月号PART2 梁石日(ヤン・ソギル) 87歳没 5日前
- 今月の訃報2024年6月号PART1 ドナルド・サザーランド 88歳没 6日前
- 「ミステリ作家の自分でガイド」本格ミステリ作家クラブ編 原書房 1週間前
- 今月の名言2024年6月号PART2 わたしは35才 1週間前
- 光る君へ 第26回「いけにえの姫」 2週間前
- 「還暦不行届」安野モヨコ著 祥伝社 2週間前
- あじさい2024 2週間前
「洋画」カテゴリの最新記事
- 史劇を愉しむ その36章「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」The Iron Lady(...
- 「355」The 355(2022 ユニバーサル)
- ヘアーの不毛 その17「ニンフォマニアック」Nymphomaniac(2014 ブロードメディア)
- 「特攻サンダーボルト作戦」Raid on Entebbe(1977 日本ヘラルド)
- 「わたしを離さないで」Never Let Me Go(2010 FOXサーチライト)
- 「続・激突!カージャック」The Sugarland Express(1974 ユニバーサル)
- 「ガール・オン・ザ・トレイン」 The Girl on the Train(2016 ユニバーサル)
- 「マーベラス」The Protégé(2021 ライオンズゲート)
- 「ザリガニの鳴くところ」Where the Crawdads Sing(2022 SONY)
- 史劇を愉しむ その35章「リトル・ブッダ」Little Buddha(1993 ミラマックス)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます